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「いま読みたい作家」の全部入り! 秋田書店発、「よくばり系」季刊誌誕生
そもそもエレガンスイブはちょっとカオスだった
──エレガンスイブ(秋田書店)増刊、もっと!vol.1の発売を記念しまして、連載陣から石黒正数さん、カラスヤサトシさん、水沢悦子さん、そしてお三方の担当編集者である秋田書店の金城小百合さんにお集まりいただきました。よろしくお願いいたします。
金城 よろしくお願いします! 今日お越しいただいた先生方は、もともとエレガンスイブで描いて下さった皆さんで、水沢さんは「花のズボラ飯」、石黒さんとカラスヤさんには「ギャグマンガ家がホラーを描く」というシリーズをお願いしていました。そのご縁があって、もっと! に参加していただいたという顔ぶれです。
カラスヤ そうですね。それが去年の秋頃で、そのあと今年の2月からは僕も「エレガンスパパ」という育児エッセイを連載させてもらってます。エレガンスイブの姉妹誌フォアミセススペシャル(秋田書店)で「結婚しないと思ってた」も連載していたから、もう6年くらい一緒に仕事してますよね。
金城 その流れがあったので、もっと!でもカラスヤさんと石黒さんにはホラーに挑戦してもらうことになりました。
水沢 エレガンスイブというのは奥様向けの雑誌なんですが、 あれ、なんでこの人が載ってるんだろうと思うものはだいたい金城さんの担当で。熟年の奥様方が、自分たちみたいなタイプのマンガも読んでくれることをイメージするだけで、心がポカポカしてきますね。
カラスヤ いろんなマンガがあって、ちょっとカオスな感じですよね。
石黒 僕は今までの自分の読者層とぜんぜん被ってないから、そこが面白いんじゃないかなと思いました。でも、もっと!はイブと比べたら、ずっと若い読者を想定したラインナップですよね。
金城 確かにラインナップや読者層は違うんですけど、せっかくなのでイブやフォアミセスの個性というか、女性誌出身ならではの長所を取り入れていきたいと思ってるんです。それが100ページの新作読み切りという試みで、vol.1で言うと今日マチ子さんの「mina-mo-no-gram」がそれにあたります。同じ編集部で作っているフォアミセス(秋田書店)が毎月100ページのマンガを掲載しているのですが、読者の方から「1カ月間何度も読みました」というハガキをいただいたことが嬉しかったんで、そういう、次の発売日まで繰り返し読まれるマンガを作りたいなって。
女性誌出身、だから「100ページ読み切り」と「ぜ~んぶ新作」
水沢 もっと!は季刊で次が出るまで3ヶ月あるから、それくらいの長編もいいかも。でも100ページって代理原稿を立てるのは現実的には不可能ですよね。描く人は何がなんでも間に合わせないといけないっていうプレッシャーが、ものすごそう。
金城 今日さんは、これまでに描いた長編でも1話は24ページが最長でしたし、100ページで本当に1本のお話なんで、ものすごく大変そうでした。でもやり遂げてくれる人なんですよね。
カラスヤ 100ページ描ける人って、なかなかいないんじゃないかな。
金城 ……次、やってみますか? カラスヤさん。
カラスヤ できるわけない! 取り返しのつかないことになりますよ。わかってるでしょ、絶対完成しませんよ? 半端ない、出版の歴史に残る落とし方をしますよ。
一同 (笑)。
水沢 あと表紙に「ぜ~んぶ新作」とか書いてあったりするのも女性誌特有だなって思いました。少年誌や青年誌だと新作100%なのって当たり前だからわざわざ書いたりしないけど、女性誌って再録とか普通にありますから。
カラスヤ 4コマ誌もたまに再録ありますね。
金城 6月に刊行したもっと!の準備号は、制作の日程上どうしても再録が多かったんですけど、できる限り工夫は凝らそうと思って、カラスヤさんのは絶版になった単行本から選り抜くとか、水城せとなさんはお菓子研究家の福田里香さんによる新規インタビューと組み合わせたりとかしました。
石黒 準備号では、カラスヤさんの貴重な過去の短編が読めてうれしかったです。
カラスヤ いや、あれは探せば割とすぐ見つかるんで、読もうと思ったらぜんぜんすぐ読めますよ。この前、三鷹の古本屋で500円で売ってるのを見たんで(笑)
「ヤコとポコ」は全力で「フルット」を潰しにきてると思った
金城 それから水沢さんには、久住昌之さん原作による「花のズボラ飯」のほかに、単独で描く初のオリジナル新作「ヤコとポコ」も連載していただきます。付録の日めくりカレンダーも181日分描き下ろしですし、ほんと重労働を……ありがとうございます。
水沢 日めくり、最初は365日描き下ろしの予定だったんですよ。引き受けたときは、「ささやかな絵でね! 絵の質を極限まで下げて描いていいならね!」って伝えたんですけど。……結構ちゃんと描いてしまいました。
金城 結局、付録としての厚さとか予算の関係で半年分になったんです。
水沢 「ヤコとポコ」に関しては……「ズボラ飯」も掲載されるし、元々は2ページくらいのエッセイマンガでちょろっと参加させてもらう予定だったんです。でも打ち合わせしていくうちに、 悦子のエッセイって言ってもあんまり……なんかこう、 描きづらいことも多いし、じゃあもう女性マンガ家のキャラを作っちゃったほうが早いじゃんという感じで 、女性マンガ家とネコ型ロボットのお話になりました。 全然予定してなかった連載なのに意外と気持ちが盛り上がっちゃって、今回2本立てだったりします。
石黒 あのー僕、「ヤコとポコ」読ませていただいて、すごいかわいいし面白かったんですけど、思ったのがこれ、完全に「木曜日のフルット」を潰しにきてますよね。全力で。同じ秋田書店なのに!
一同 (爆笑)。
水沢 いや、そんなつもりないですよ! 仲良くやっていきたいと思ってますよ!うわーそうか……2本足で立つネコ……被ってるといえば被ってるのか……。厳密にはポコはロボットなんですけどね。
金城 そうそう、ロボットなんですよ。
石黒 じゃあ、フルットとは違いますね。フルットより表情豊かだけど。
水沢 いやいやいやいや! もういちばん可愛いのはフルットですよ、 ほんっと可愛いですよねフルット! ポコなんてもう、アレですから。ポンコツですし。なんだったら次回で犬に改造してもいいしね!
カラスヤ 僕はいったいどうしたら……両方ともかわいいから!
- タワーレコード限定シングル「もはや平和ではない EP」 / 2012年12月12日発売 / 525円 / DECKREC/UK PROJECT / DCRC-0078
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ラインナップ
久住昌之/水沢悦子「花のズボラ飯」、水沢悦子「ヤコとポコ」、磯谷友紀「恋と病熱」、伊東七つ生「エラー305/ワンダー115」、渡辺ペコ「さよならサンガツ」、石黒正数「パンホラー」、天堂きりん「ゆびさきエレジー」、幹本ヤエ「十十虫は夢を見る」、雁須磨子「こくごの時間」、青木俊直「海風レイル」、きづきあきら+サトウナンキ「暁の明星」、サメマチオ「サンタが来なくなった日」、宇野ジニア「空の海 砂の島」、カラスヤサトシ「おとろし」「カラスヤポータルZ」、花津ハナヨ「てっぺんまででいいですか?」、広田奈都美「もっと! 魔法のおかわりレシピ」、オカヤイヅミ「Blood Orange Juice」、いぬゐのこ「ひみつのハナコさん」、三島衛里子「私立ブルジョワ学院 女子高等部・外部生物語」、今日マチ子+藤田貴大「mina-mo-no-gram」、衿沢世衣子「新月を左に旋回」、おかざき真里×三島衛里子 対談「原点・ルーツ/創作の礎となるもの」
水沢悦子(みずさわえつこ)
「花のズボラ飯」の作画担当。オリジナル新作「ヤコとポコ」はエレガンスイブの増刊誌、もっと!(秋田書店)で連載中。詳しいプロフィールは非公開。
石黒正数(いしぐろまさかず)
1977年福井県生まれ。2000年、アフタヌーン秋の四季大賞にて「ヒーロー」が四季賞を受賞し、同作がアフタヌーンシーズン増刊(講談社)に掲載されデビュー。何気ない日常の風景からドラマを紡ぐ、ストーリーテリングの手腕で好評を得ている。代表作に「それでも町は廻っている」「木曜日のフルット」「ネムルバカ」「外天楼」など。
カラスヤサトシ
1973年大阪生まれ。1995年、本名の片岡聰(かたおかさとし)で投稿した「海辺の人々」が第6回COMICアレ!マンガ賞優秀賞を受賞、COMICアレ!(マガジンハウス)に掲載されデビューを果たす。1997年、短編集「石喰う男」の刊行をきっかけに会社を辞めマンガ家に専念するが、活動の中心となっていた同誌が休刊となり、発表の場を失った。2003年、ペンネームをカラスヤサトシに改め月刊アフタヌーン(講談社)の読者ページにて連載を始めた「愛読者ボイス選手権 特別版」でコアな人気を獲得。誌上で行われた単行本化署名運動の成果が実を結び、2006年「カラスヤサトシ」の刊行に至った。2008年よりまんがライフオリジナル(竹書房)にて「野生のじかん」を開始。以降、多数のマンガ誌で連載を抱える。代表作に、自身の結婚の過程を描いた「結婚しないと思ってた オタクがDQNな恋をした!」など。エレガンスイブ(秋田書店)にて「エレガンスパパ」を連載中。