コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第5回 森下suu「日々蝶々」

2人でマンガを描く理由

すいれんの瞳の中身は毎コマ違う

少女マンガとは思えない迫力で描かれる空手シーン。

──そうだったんですね。実は「日々蝶々」を読んでいてひとつ気になってたのが、空手のシーンの迫力が少女マンガらしからぬ迫力だなと。

なちやん 私の唯一遊べるところなので(笑)。好きにやっていいよってページを任せてくれるので、「よし!」って燃えて描いてました。バトルシーンが好きなんです。

──画面から並々ならぬ思い入れを感じました。実際に試合に足を運んだんですか?

なちやん YouTubeで試合を見たりとかして、頭の中で戦わせたのを絵にするっていう……岸本(斉史)先生方式です。全然できてませんけど! 男子のほうが描いてて楽しいですね。すいれんは、高嶺の花という設定なので、とにかく美人に描かなきゃっていうプレッシャーがあって難しい。

──すいれんはほとんど喋らないキャラクターですが、表情の変化を付けるのが大変だったりはしませんでしたか。

すいれんの瞳には随所にこだわりが見られる。

なちやん うーん、そうでもなかったかも。割といつもネームを読んだ時点で顔は浮かんでるんです。そのときどきの表情は、瞳の中で表現してます。

──瞳の中?

なちやん 私、瞳の中身が毎コマ違うんですよ。同じように描けないだけなんですけど。ウルウル感とかショックを受けた感じとか、特にすいれんは全部瞳で表現してます。

──なちやんさんの絵について、マキロさんからこうしてほしいとかリクエストを出すことはありますか。

なちやん 2、3巻くらいまではもうちょっと顔の赤らみを少なくとか、怒ってる様子をもう少し怒りを抑えて、とか、ニュアンスの修正をお願いされることもあったけど、ここ最近はもうないです。

マキロ 長くやってきたからね。だんだんすいれんに表情も出てきたし。前半は表情があんまりなかったから、顔の赤らみが多いとか、違う表情に見えかねないかなと思ったりしてたんだけど。

協業じゃなきゃマンガ家になれてないと思う

ギャグ目が特徴的な、すいれんの友達・あやちゃん。

──デフォルメはなちやんさんの裁量なんでしょうか。あやちゃんの、ガチャピンみたいなギャグ絵の目がよく出てくるのですごく気になってたんですが……。

なちやん あれ、マキロのネームのまま描いて生まれたんですよ。

──へえ!

なちやん ハートちゃんとかのゆるキャラもそうですね、だいたいマキロの絵をそのまま模写してます。たまにモブとか、クラスメイトの伊東くんもそのままです。あやちゃんの目に関しては、どのくらいの割合で普通の目に戻せばいいか最終的にわからなくなりました(笑)。ネームには細かく指定が描いてないので、私が適当に考えてますね。

──マキロさん、「ここのあやちゃんは普通の目のつもりで描いたのに、原稿ではギャグ目になってた」って思ったことは?

マキロ ありますあります。

なちやん (笑)。

マキロ でもいいかなーって(笑)。

なちやん そうかなって思ってた。「ここは普通の顔に戻したほうがいいかな? まあいいか、いっちゃえ」っていうノリはありますね(笑)。マキロのネームってけっこう不可解なところがあって、でもそれが面白い。いつも4回くらいじっくり読み込んで、わからないことは聞きますけど、最近はわからないこともなくなってきました。

マキロ 私もなちやんの下絵もらうのが楽しみです。ほぼただの丸で描いた表情とか、「あーこうなったんだ!」って。相手が出してくるものがわからないのは、共同作業の醍醐味だと思います。

なちやん 私たち、協業すごく向いてるよね。協業じゃないとマンガ家になれてないと思う。

「日々蝶々」カット。

マキロ なちやんは、「描きたいのを描けばいい」って言ってくれるからうれしいです。喧嘩も全然しないよね。

──直近では「日々蝶々」の番外編が控えてますけど、その後の新連載の内容は決まってるんでしょうか。

マキロ 地元を舞台にしたいなと思ったりはしてるんですが、まだ具体的には固まってなくて……。甘い感じで少女マンガらしく、っていうテーマ自体は変わらないと思います。もうちょっとキャラがいっぱい出てくる感じにはなるかな。

なちやん 私は……次はもうちょっとキャラが喋ってくれたらうれしいな、と思ってます!(笑)

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  • アルコ「終電車」
  • 羽柴麻央「私日和」
  • やまもり三香「シュガーズ」
  • 河原和音「高校デビュー」
  • 紡木たく「ホットロード」
  • 神尾葉子「花より男子」
  • ななじ眺「パフェちっく!」
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  • 永田正実「恋愛カタログ」
  • いくえみ綾「バラ色の明日」
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ブックパス マーガレットコミックス特集

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第10回 宮城理子
第11回 佐藤ざくり
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第15回 ななじ眺
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番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー

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森下suu(モリシタスウ)
森下suu

原作担当のマキロと、作画担当のなちやんからなる2人組ユニット。2010年、ザ マーガレットに掲載された「あのて このて」でデビュー。2012年に「日々蝶々」をマーガレット(ともに集英社)にてスタートさせ、初連載作でありながら「このマンガがすごい!2014」オンナ編4位にランクインという快挙を成し遂げる。同作は2014年6月に完結。そのほか著書に「まだ天の川にいけない」がある。


2016年1月22日更新