コミックナタリー Power Push - マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 第5回 森下suu「日々蝶々」
2人でマンガを描く理由
「壁ドンやっぱり必要なんじゃない?」
──この連載の第2回に咲坂伊緒先生が登場されたとき(参照:マーガレットコミックス特集 第2回 咲坂伊緒インタビュー)、「読者をときめかせるために、間をすごく大事に描いてる」っておっしゃってたんです。読者さんをときめかせたいっていう思いはありますか。
マキロ はい。いつも「ときめきってなんだろう」って考えてますし、目が合うだけでドキドキするような、初恋のそういう部分を大事に描きたいと思ってます。でも私は計算派ではないので、特に工夫はしていないというか、できないというか……。「このときにこれを入れよう」とかではなく、そのときそのときの感覚を大事に描いてます。
──壁ドンのような、いわゆる必殺技は出てこないですね。
マキロ 入れなきゃダメなのかなって思ってたこともあったよね。
なちやん 去年Seventeen(集英社)の学園祭イベントに行かせていただいたんですけど、福士(蒼汰)くんとか千葉(雄大)くんとかイケメン俳優さんが出てきて、カメラ目線で壁ドンしたりするんですよ。それを見て会場の女の子たちが「ギャーッ!!」って叫んでて。「壁ドンやっぱり必要なんじゃない? そういう普通のドキドキもあったほうがいいのかな」って話にはなりましたね。
マキロ でも入れられなかったんですけどね。キャラ崩壊しちゃうし(笑)。
人と少しでも被ったら嫌
──おふたりは高校3年間同じクラスだったということですが、学生時代のエピソードが創作に生きた部分もありますか?
マキロ うーん、具体的にはないですけど、やっぱり恋愛話でなちやんが言ったことを覚えてたり、友達に聞いた悩みとかがニュアンスを変えて出てくることはあるかもしれないです。
なちやん 作品の中で高校のときを思い出すっていったら、1巻の遠足のシーンくらいですかね。ネームにロケーションは具体的に描かれてなかったけど、これは私たちが地元の宮崎で行った海かなと。思い出しながらだったので特に資料もなく描けました。
マキロ なんか少女マンガの遠足って山が多いんですよね。遭難することも多い。
なちやん 遭難して雨降って、洞窟で雨宿りする。
──確かに。
マキロ ちょうど同時期にマーガレットでそういう展開になる作品が多いって担当さんに聞いてたこともあって、被らないように海にしました。人と少しでも被ったら嫌だなっていう気持ちは強いかもしれないです。
絵は少年マンガのほうが影響を受けてます
──今回ブックパスのキャンペーンでマーガレット、別冊マーガレットの作品がたくさん読み放題になるんですが、森下先生のお好きな作品について聞かせてください。学生時代に一緒に読んでいた作品などありますか?
なちやん 河原和音先生の「高校デビュー」ですかね。私にとって少女マンガの初恋はヨウなんです!
マキロ 読んでた読んでた! いくえみ(綾)先生はいつもタイトルの付け方がカッコいいなって思います。「バラ色の明日」「私がいてもいなくても」とか。あと「恋愛カタログ」も周りの友達みんな読んでたかな。
なちやん みんな高田くんに夢中で、高田くんが理想の男子の代名詞になってたよね。
マキロ あとアルコさんは読んでました。「終電車」に「スターレスブルー」。たぶんアルコさんがデビューしてすぐの読み切りを別マでリアルタイムで読んでて。モノローグやトーンの使い方とか、圧倒的だった。
なちやん うん、あのときのアルコさんは衝撃だったね。独特のオシャレな絵で、みんな影響受けた。私は羽柴麻央さんの「私日和」にもすごく影響を受けてます。時代が変わっても流行りに左右されてなくて、でもちゃんと今どきっぽくて。あとはやまもり(三香)さんも、「シュガーズ」を初めて読んだときは「同い年でこんな上手い人がおったら載れんわ」って思った思い出が。
──マーガレット、別冊マーガレット本誌は読んでましたか?
マキロ はい。「花より男子」「パフェちっく!」「恋する1/4」とかがやってた頃ですね。あと「まっすぐにいこう。」も、別マ買って姉妹で読んでた記憶があります。
なちやん そうなんだ。私は父がマンガ好きで、家にあったのが少年マンガばっかりだったので、実はちゃんと少女マンガを読んでたのって一時期だけだったんです。私の絵、線が柔らかいって言われるんですけど、それは桂正和先生の影響なんですよ。髪の毛がウニャって動く感じとか。少女マンガはデビューしてからちゃんと読みはじめた感じで、絵は少年マンガのほうが影響を受けてます。
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- マーガレットコミックス特集 あの頃も、これからも!一生少女マンガ宣言 特集一覧・連載作品年表はこちら
- 第1回 河原和音
- 第2回 咲坂伊緒
- 第3回 神尾葉子
- 第4回 中原アヤ
- 第5回 森下suu
- 第6回 あいだ夏波
- 第7回 やまもり三香
- 第8回 水野美波
- 第9回 幸田もも子
- 第10回 宮城理子
- 第11回 佐藤ざくり
- 第12回 椎名軽穂
- 第13回 小村あゆみ
- 第14回 いくえみ綾
- 第15回 ななじ眺
- 第16回 八田鮎子
- 番外編 マーガレット&別冊マーガレット編集長インタビュー
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※各作品の読み放題提供期間はブックパスの特集サイトでご確認ください。
森下suu(モリシタスウ)
原作担当のマキロと、作画担当のなちやんからなる2人組ユニット。2010年、ザ マーガレットに掲載された「あのて このて」でデビュー。2012年に「日々蝶々」をマーガレット(ともに集英社)にてスタートさせ、初連載作でありながら「このマンガがすごい!2014」オンナ編4位にランクインという快挙を成し遂げる。同作は2014年6月に完結。そのほか著書に「まだ天の川にいけない」がある。
2016年1月22日更新