「ミイラの飼い方」|かおり監督インタビュー 小さな生き物も人間も、音楽もぜーんぶかわいすぎ!

「ミイラの飼い方」は男子高校生の柏木空と、冒険家である彼の父親がエジプトから送ってきた手のひらサイズのミイラ・ミーくんとの共同生活を描くコメディ。空木かけるによる原作がcomicoにて連載中で、テレビアニメが1月より放送されている。

コミックナタリーではアニメがクライマックスに差し掛かったこのタイミングで、かおり監督にインタビューを実施。ミーくんをアニメーションで表現する上でのこだわりや、 “真顔ダンス”として話題になったエンディングについてなど、徹底的に追求した本作の“かわいい”について語ってもらった。

取材・文 / はるのおと

STORY

男子高校生・柏木空は、旅先のエジプトにいる自称冒険家の父から突如、手のひらサイズのミイラを送りつけられる。小さいうえに、臆病で、泣き虫。でも何とも言えないかわいさを持つミイラにミーくんと名付け、空はひとつ屋根の下でともに暮らし始める。

CHARACTOR
柏木空、ミーくん
柏木空
柏木空(CV:田村睦心)
ミーくんと一緒に暮らすことになった高校生。普通の人とは感覚が少しずれている。
ミーくん
中身、年齢、性別、すべて不明のミイラ。全長12cm。
ミーくん
神谷他月
神谷他月(CV:河本啓佑)
空の親友。ドSな一面もあるが情に厚い。空の影響からか、不思議な生き物のことに詳しい。
コニー
食いしん坊で、自由奔放な小鬼。他月の家に居候する。
コニー
神谷他月、コニー
茂木朝、いさお
茂木朝
茂木朝(CV:茜屋日海夏)
空と他月のクラスメイトで、クラスの人気者。明るく元気な性格で、とても力持ち。
いさお
どこからか迷い込んだ謎のドラゴン。茂木にトカゲと間違えられてしまう。
いさお
立秋大地
立秋大地(CV:山下誠一郎)
空たちの同級生。悪夢に悩まされていて不眠症気味のため、目つきがとても悪い。
ムクムク
体がモフモフ、手足もふわふわなバク。とにかく素早い。
ムクムク
立秋大地、ムクムク
かおり監督インタビュー

ミーくんのイメージは、よちよち歩きの赤ちゃん

──原作で発信されていた「#ミイラのミーくんかわいすぎ」というハッシュタグをアニメ公式Twitterでも引き続き活用するほど、まさしく劇中は“かわいい”要素が満載です。

「かわいすぎ」って、自分で言ってしまいました(笑)。

──(笑)。今日はミイラのミーくんをはじめ、本作の“かわいい”ポイントをいろんな角度から掘り下げていければと思います。さっそくですが、ミイラという少し不気味な響きとは裏腹に、ミーくんは見た目も中身もとても愛らしいキャラクターです。どのように作り上げていったのでしょう。

ミーくん

よちよち歩きの赤ちゃん、乳幼児をイメージしました。自分では何もできないけど、かわいらしさを振りまいて「保護しなきゃ」という感情を沸かせるというか。ペットのようでもありますが、私の中ではもう少し知能が上のイメージです。子育てをしている人の感覚にも通ずるかわいさにしようと思っていました。

──実際にアニメーションに起こすうえで、工夫した点はどこですか?

動きや仕草はこだわりました。アニメを制作するエイトビットには、無理を言って全カットのレイアウト(編注:キャラクターや背景の配置、撮影指示などが書かれたアニメの設計図)をチェックさせてもらったんです。これは私の前作「ゆゆ式」でもやっていたことなんですが、ミーくんだったらこういうふうに起き上がるとか、どういうふうに歩くとか、そういったことは口では伝えづらく、カットを見て指示したほうが早いと思ったんです。

──なるほど。本作にはミイラのミーくんのほか、小鬼のコニー、ドラゴンのいさお、バクのムクムクと、小さい不思議な生物が多く登場します。それらの動きを表現するのは大変だったんじゃないでしょうか。

アニメーターさんたちが工夫してくれたところは活かしながら、「赤ちゃんだから、立つときはまず両手をついてからだよね」などのアイデアを出しました。あと気を付けたのは可動域。ミーくんやコニーは関節がないので腕を曲げたりできないんです。だからそれぞれの歩き方や走り方、振り向き方の参考になるものをキャラクターデザインの岸田(隆宏)さんに描いてもらいました。

──7話でムクムクにミーくんたちが飛び乗るところがありますが、あそこなんて何気ないシーンなのに動きがすごくいいですよね。しかもムクムクの表面がフサフサなことがわかるし、本作の絵に対するこだわりを感じました。

あのカットのアニメーターさんにはがんばっていただけてありがたかったです。作画でギザギザに描かれた毛に、撮影さんがエッジぼかしというエフェクトを入れてくれて、ムクムクのフサフサぶりを上手く表現できたところですね。

いさおと触れ合う部分の描写で、ムクムクのフワフワな毛が表現されている。

──相当“かわいい”が詰まったシーンでした。そのほかお気に入りの描写はありますか?

ミーくんは全部かわいいからなー(笑)。でもどれか1つを選ぶなら6話でミーくんが空にお手紙を渡してモジモジしているところ。コニーは4話で他月に「ぬいぐるみならやるけど」と言われて、興味なさそうにポイって捨てて「ふうー」って仰向けになるところですかね。コニーは何をするか予想できない感じがとてもいい。ヤンチャな弟って感じがして好きです。いさおはジェスチャーがかわいいし、ムクムクも「眠っている大地の身体を操れるの?」と聞かれて、それを証明するのに“どじょうすくい”をさせるというチョイスも意外な面白さがありますし、全員いい生き物ですよね。

──ミーくんたちはあまり声を発しない分、効果音での表現が多いですよね。

8話Bパートではほぼ人間キャラクターが登場せず、不思議な生き物の声を発しないやり取りだけで話が展開する。かおり監督もお気に入りのエピソードだ。

彼らの効果音についてはSEさんと事前に別途打ち合わせをして、全キャラクター分、違うものを作ってもらいました。例えば歩くときの音も、ミーくんなら水分多めなミイラなのでちょっとピチャピチャしている感じだとか。そうやっていろいろと作ってもらった音を洗練させていきました。

──そういえば、ミーくんたちのキャストはいまだ発表されてません。

声に関しては……最終話の12話にご期待ください(笑)。

アニメはとにかく“かわいい”推しに

──かおり監督は、最初から“かわいい”アニメを目指そうと思っていたのですか?

はい。まず原作を読んだとき、「かわいいキャラクターがいっぱい出てくるじゃん!」と驚いたんです。最初は「うわ、ミーくんめっちゃかわいい!」とか思いながら読んでいて、さらに読み進めていくとコニーをはじめかわいい子がどんどん出てきて。アニメでは自分も感じたかわいさと、1巻冒頭で空がミーくんと一緒にどう暮らしていこうかと試行錯誤していたわちゃわちゃした感じを落とし込みたいと考えていました。

──アニメは原作にも増して、終始和やかな雰囲気でした。

マンガでは、読んでいく途中で「ん?」となった部分もあったんです。丘森という空のクラスメイトのキャラクターが登場する場面なんですが、彼は自分の彼女にプレゼントしたいからという理由でミーくんを盗んでしまった子で。

アニメ2話では、ぬいぐるみのふりをしたミーくんを茂木が持っていってしまう展開に。

──アニメのほうに丘森は登場しませんでしたよね。そのエピソードは2話にあたると思うんですが、代わりにミーくんは茂木にぬいぐるみと間違えられて、空の前から姿を消すという展開に。

原作ファンに申し訳ないなと思いながら、そのエピソードはカットさせてもらいました。やっぱり一番伝えたかったのは、かわいい、ほのぼのとした雰囲気でしたので。

──本作にはプロデューサーとしてドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で知られる那須田淳さんが参加されています。アニメ版を作るにあたってどのような擦り合わせをしたんでしょうか。

那須田さんも原作の表紙を見て「かわいい。これをアニメにしよう」と感じたそうで、顔合わせのときから「とにかく“かわいい”を前面に出そう」とおっしゃってました。あと面白かったのは、ツッコミどころのあるシチュエーションを、1話につき1回は作るよう言われたこと。例えば4話の回想シーンでは、砂場で遊んでる空がものすごく立派なお城を完成させてるとか(笑)。

──6話で庭に生えていたマンドレイクが、引っこ抜こうとする空たちから逃げる描写もやたらと気合いが入っていて、確かにツッコみたくなりました。

あれは得体の知れないマンドレイクがどういうふうに移動するのかと話題になったとき、「回転したら早く動くんじゃない?」って盛り上がったんです。原作にはないオリジナルのシーンなんですが、シナリオライターさんにうまく書き加えてもらいました。

逃げ出したマンドレイクを追いかける空たち。

──アニメではオリジナルシーンが追加されるほかにも、エピソード順を入れ替えるなどしています。どういうふうにシリーズ構成をされたのでしょうか?

ほのぼのとしたエピソードを中心に構成し直そうという方針のもと、(シリーズ構成の)赤尾でこさんに案を出してもらって、それを元に内容を固めていきました。気を使ったのは大地が登場するタイミングですね。原作ではかなり後ろのほうで本格的に登場しますが、アニメのオープニングに出ているキャラがしばらく本編に登場しないのは厳しい。だから登場を前倒しにして、その分、後ろ回しにしたエピソードに大地をどう関わらせるかとか、そういった辻褄合わせに少し苦労しました。

「ミイラの飼い方」
「ミイラの飼い方」

男子高校生・柏木空は、旅先のエジプトにいる自称冒険家の父から突如、手のひらサイズのミイラを送りつけられる。小さいうえに、臆病で、泣き虫。でも何とも言えないかわいさを持つミイラにミーくんと名付け、空はひとつ屋根の下でともに暮らし始める。

スタッフ
  • 原作:空木かける(comico)
  • プロデューサー:那須田淳
  • 監督:かおり
  • シリーズ構成:赤尾でこ
  • キャラクターデザイン:岸田隆宏
  • アニメーション制作:エイトビット
キャスト
  • 柏木空:田村睦心
  • 神谷他月:河本啓佑
  • 茂木朝:茜屋日海夏
  • 柏木カエデ:茅野愛衣
  • 立秋大地:山下誠一郎

©空木かける・comico/ミイラの飼い方製作委員会

DVD「ミイラの飼い方①」
2018年3月21日(水) / ポニーキャニオン
「ミイラの飼い方」第1巻

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DVD「ミイラの飼い方②」
2018年4月18日(水) / ポニーキャニオン
「ミイラの飼い方」第2巻

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イベント
テレビアニメ「ミイラの飼い方」in サンリオピューロランド
期間:2018年3月24日(土)~4月8日(日)
場所:サンリオピューロランド
コラボグッズやコラボフード、ミーくんのグリーティング、展示コーナーなど盛りだくさん!
ミーくんたちといつもいっしょ!みんな集まれ!「ミイラの飼い方」トークショー
日時:2018年3月31日(土)
時間:17:00~、19:00~
場所:サンリオピューロランド ディスカバリーシアター
出演者:田村睦心(柏木空役)、河本啓佑(神谷他月役)、茜屋日海夏(茂木朝役)、山下誠一郎(立秋大地役)、かおり、ミーくん、ポムポムプリン
ショップ
「ミイラの飼い方」イースターフェア
期間:2018年3月5日(月)~27日(火)
場所:東急ハンズ池袋店 1Fイベントスペース
「ミイラの飼い方」×THEキャラSHOP
期間:2018年3月23日(金)~4月8日(日)
場所:池袋マルイ 7F
カフェ
gourmandise cafeandstore HEP FIVE店
期間:2018年2月15日(木)~4月1日(日)
場所:大阪市梅田 HEP FIVE3F
「ミイラの飼い方」×nicocafe
期間:2018年3月21日(水・祝)~4月3日(火)
場所:池袋P'PARCO
かおり
アニメ監督。代表作には高校で情報処理部に属する3人の女子を中心とした日常もの「ゆゆ式」がある。最新作は1月より放送スタートした「ミイラの飼い方」。