オープニングだって相当かわいい

──本作の“かわいい”ポイントとして忘れていけないのは、各所で大きな話題となったエンディングです。ただその前に、オープニングも相当かわいいことに触れておきたく。

そう、オープニングもいいんですよ！ あれはナベシンさん（ワタナベシンイチ）にコンテをやっていただいたんです。本編でも1本だけ参加いただいたんですけど、かわいらしい小動物系は大好きらしく、「『ミイラ』をやれてよかった、もっと早くから参加したかった」と言っていただきました。ギャグが得意なナベシンさんに、その思い入れが強く出たコンテをあげてもらえましたね。

──冒頭でコニーがくしゃみしているあたり芸が細かいですが、コンテの段階からあったんですか？

あれは原画さんがやってくれました。スローでないとわからないくらい一瞬の動きですけど、ああいった遊びがあるといいですよね。

──オープニングでは随所に回転する描写が入ります。

私がコンテに関する打ち合わせ時に「歌詞に沿ったシチュエーションの絵は作らないでほしい」とお願いしたんですよ。歌詞そのまま……例えば「じゃあねと手を振って」でキャラが手を振っていたら「そのまんまじゃん」って思うじゃないですか（笑）。それに対してナベシンさんは「地球儀を回せば（ぐるるるるる）」という歌詞を拾って“回転”をテーマにしてくれたんだと思います。かわいらしい仕上がりで、作品のテイストにぴったり合わせてくださいました。

エンディング動画ができるまで、そして“真顔”の意味

──さて、本題のエンディングの話です。まずキャラクターを踊らせるのは那須田さんの案なのでしょうか。

そうです。「逃げ恥」と同じようにキャラクターが踊り、観ている人たちに真似して踊ってもらって、それがムーブメントになったら楽しそうだなというコンセプトです。

──振付師はELEVENPLAYのKAORIさんです。「逃げ恥」のエンディングを作られたMIKIKOさんのカンパニーの方ですね。最初に振り付けを見たときの印象は？

私はダンスの内容にノータッチだったので、「一体どんなダンスがあがってくるんだろう」「『逃げ恥』みたいな手の振りのダンスがくるのかな」なんて思いながらドキドキして待っていたんです。そしていざ振り付け動画が到着してみたら「これ、全部は踊れないな」と（笑）。細かい振りが多かったので、絶対にアニメのキャラクターでは表現できないというところだけ少し手直ししてもらいました。

──すごくかわいいし、真似したくなる振り付けですけど、やっぱりアニメキャラクターに踊らせるのは難しいですよね。

6等身のキャラクターの全身をカメラ内に収めて踊らせるとなると、絵が崩れてしまうことが懸念されました。そういった問題をどう解決するかすごく考えて、ギリギリのタイミングで思いついたのが「基本はSDキャラに踊らせて、曲が転調した後だけガチで踊らせる」という案だったんです。

──転調後のインパクトが強くなったし、結果オーライでしょうか。

SDキャラのデザインは私がしたのですが、あのおかげで“かわいい”というコンセプトも貫けたし（笑）。これまでいろいろと作ってきたエンディングの中でも一番のお気に入りです。

──アニメのエンディングテーマ「ロゼッタ・ストーン」はフル版をかなり編集して使っていますよね。ド頭からまったく違うし、最後の転調は1番サビでもラストのサビでもありません。

その編集は私ではなく、那須田さんが担当されたのですが、最初に聴いたときは「フルと全然違う！」と驚きました。聴き比べると面白いですよね。

──転調後、なぜか全員無表情で、巷では“真顔ダンス”なんて呼ばれてましたが……。

あれにはいくつか理由があって、まず動画でKAORIさんが普通に明るく踊っていたのに、あそこだけ真剣な顔だったんですよ。それが面白いなと思って、その意図を考えていたのが1つです（笑）。そして歌詞が「誰でも大好きしちゃダメ どこかに消えたりしないで」と、アニメの内容を超えて、少し考えさせるようなメッセージを含んだ歌詞だったので、それを真剣な表情で表すのはアリだなと思ったのも1つです。アニメのキャラクターって感情表現豊かだと思われがちですが、真面目な気持ちを表現するときって眉を吊り上げるとか、そういった記号でしか表現できないんです。でも人間が本当に真剣なときって真顔になるじゃないですか。だからアニメでも真顔にしたほうが真剣さが伝わるんじゃないかと思って、アニメーターさんにオーダーしました。

──そういった意図があったんですね。

視聴者の皆さんは疑問が浮かんでいるようなので意図はあまり伝わらなかったかもしれないですが、インパクトは残せたみたいなので手応えは十分です。でもここで改めて、あれは一生懸命な、真剣な表情なんだと言わせてください！

──その真顔が、最後に手を振りながら少し緩むところもいいですよね。

最後は微笑んで、「また観てね」というメッセージを込めています。あとあの4人は最後まで真剣でいられるキャラでもないので、にっこりしたほうがいいですよね。

──話を伺い、「ミイラの飼い方」の“かわいい”が随所にこだわって作られていることがわかりました。

本編はもちろんですが、いろいろなグッズも“かわいい”推しなんです。DVDだって、ミーくんたちをかたどったふわふわのポーチに入ってるんですよ。そういったものもチェックして、観てくれている人が末永くミーくんたちを愛してくれるとうれしいです。