辻真先（小説家・脚本家）

担当エピソード第3話「大陸横断鉄道（嘘）の冒険」

脚本を務めたのは1960年代からアニメ・特撮の脚本、マンガ原作、推理小説などを数多く手がけてきた大ベテラン・辻真先。物語は鉄道マニアのマーキス侯爵が持つ庭園と、その広大な敷地をめぐる鉄道を舞台に繰り広げられる。侯爵のコレクションである貴重な切符を盗むべく、ルパンは庭園のパーティに潜入。不二子と協力しながら切符の在り処を探る。切符の行く末をめぐって敵味方が東奔西走するドタバタ劇が楽しいエピソードだ。

押井守（アニメ監督）

担当エピソード第4話「ダイナーの殺し屋たち」

「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」をはじめ、名作と呼ばれるアニメを数多く世に送り出してきた押井守。実現こそしなかったものの、監督を務める予定で劇場版「ルパン三世」の企画に携わったことがあるのは有名な話だ。そのため「PART6」へ参加することが発表されたときには、SNSで話題になった。

そんな押井が担当したエピソードの1つが「ダイナーの殺し屋たち」。ある日の夕方、寂れたダイナーを2人の男が訪れる。カウンターに座った彼らは注文を済ませると、ウェイトレスと他愛ない会話を始めた。店内にいた6人の先客はなんと全員が殺し屋。ルパンはおろか一味のメンバーすら姿を見せない物語は不穏な雰囲気を漂わせ進行していく。ネタバレ厳禁の物語なので、ここから先の展開はぜひ自分の目で確かめてみてほしい。

担当エピソード第10話「ダーウィンの鳥」

ミハイルと自称する謎めいた人物に、大英自然史博物館に眠る始祖鳥化石を盗んでほしいと依頼された不二子。化石はダーウィンの進化論が発表された2年後に発掘され、その正しさを裏付けるものだという。しかしミハイルはこの化石が人の手によって作られた紛い物である可能性を示唆するのだった。不二子は正体不明のミハイルやその背後にいる依頼人に疑念を抱きつつも博物館に忍び込むのだが……。ミハイルと不二子が繰り広げる難解で淡々とした会話劇や、現実なのか夢なのかわからない不条理な展開など、押井らしさがふんだんに盛り込まれた「ルパン三世」を堪能できる。

芦辺拓（小説家）

担当エピソード第5話「帝都は泥棒の夢を見る前篇」
第6話「帝都は泥棒の夢を見る後篇」

前後編の2話で構成された「帝都は泥棒の夢を見る」。なぜか昭和初期の帝都・東京に来てしまったルパンは銭形そっくりの警部・波越に追われ、不二子そっくりの女盗賊・黒蜥蜴に救われた。2人は口を揃えてルパンのことを“黄金仮面”と呼ぶ。さらに次元や五ェ門と思しき人物や、明智小五郎と名乗る探偵までもがルパンの目の前に現れるのだった。

脚本を担当した小説家・芦辺拓は過去に「真説ルパン対ホームズ」「明智小五郎VS金田一耕助」といったパスティーシュ作品を執筆しているほか、子供向けに江戸川乱歩の少年探偵団シリーズのリライト作品を手がけている。「帝都は泥棒の夢を見る」にも乱歩作品などのネタがいくつか仕込まれているため、元ネタを調べたり読んだりして楽しむのも一興だ。

樋口明雄（小説家）

担当エピソード第8話「ラスト・ブレット」

レイブンの財宝をめぐる物語から3年前、ホームズがリリーを引き取るまでの一悶着を描いた「ラスト・ブレット」。ストーリーはリリーに恋心を抱く少年ケニーと、何者かに狙われているリリーを守ることになった次元を軸に展開される。脚本を担当した小説家・樋口明雄が放送前コメントで「最高にクールでハードボイルドなストーリーをみなさまにお届けします！」と宣言した通り、命懸けの仕事に挑む次元が痺れるほどカッコいいエピソードになっている。

そんな樋口のデビュー作はなんと1987年に刊行された「ルパン三世戦場は、フリーウェイ」。ほかにも「ルパン三世」の小説やゲームブックをいくつか手がけているものの、TVシリーズの脚本を担当するのは今回が初めてだった。

湊かなえ（小説家・脚本家）

担当エピソード第9話「漆黒のダイヤモンド」

映画化を果たした「告白」をはじめミステリーやサスペンスを数多く執筆し、“イヤミスの女王”（「イヤミス」はイヤな読後感のあるミステリーのこと）と呼ばれる小説家・脚本家の湊かなえ。そんな彼女が手がけた「漆黒のダイヤモンド」は、100年前に大西洋で暴れ、ブラジルの監獄で処刑された海賊王ジークの幻のお宝・漆黒のダイヤモンドをめぐり展開される。どうやらルパンのほかにもジークの宝を狙っている人物がいるようで……秘宝にまつわる人々のドラマが切なくも美しい一篇だ。