1995年に1作目となる「テイルズ オブ ファンタジア」がリリースされて以降、ゲームを中心にさまざまなメディアミックス展開が行われてきた「テイルズ オブ」シリーズ。そのシリーズ最新作として登場したiOS / Android向けゲームアプリ「テイルズ オブ ルミナリア」では、それぞれの正義を胸に抱く21人の主人公による群像劇が描かれる。さらに「テイルズ オブ ルミナリア」のアニメが、「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」のタイトルで、1月21日に各動画配信サービスで順次配信開始。アニメでは21人のキャラクターのうちの2人にフォーカスを当て、ゲームより少し先の物語を展開していく。アニメーション制作は神風動画、ANIMAが共同で担当。キャラクターデザインを佐伯俊が手がけた。
コミックナタリーではアニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」の配信を記念し、アニメのメインキャラクターとなるレオ・フルカード役を演じる新井良平、ユーゴ・シモン役を演じる竹田海渡にインタビュー。アニメの見どころはもちろん、キャラクターの魅力やそれぞれが掲げる信条などについて聞いた。
取材・文 / カニミソ撮影 / ヨシダヤスシ
歴史の重さと冠の大きさに震えました
──シリーズ1作目の「テイルズ オブ ファンタジア」が発売されてから26年という長い歴史を持つ「テイルズ オブ」シリーズですが、おふたりはこれまで「テイルズ オブ」シリーズのゲームをプレイされたことはありますか?
新井良平 「テイルズ オブ」シリーズは、もともとうちの兄が大好きだったんですよ。兄が「ファンタジア」と「エターニア」をプレイしているのを横目で見ながら、ときどき2プレイヤーとして参加していました。だいたい僕は狩人のチェスターとか、晶霊術の使い手であるキールとか、主人公ではないキャラクターを使って遊んでいましたね。そこから個人で「デスティニー」と「デスティニー2」をプレイしました。
竹田海渡 僕は子供の頃にいとこのお兄ちゃんからもらった「デスティニー2」が最初でした。「デスティニー」をやらずに「デスティニー2」からいきなりプレイしたので、顔を隠した少年・ジューダスの正体がリオンだとは知らず、なんで2人は同じ声なんだろうってずっと疑問に思っていましたね。あとは高校生のときに、14周プレイするくらい「アビス」好きの友達がいて、よく一緒に遊んでたんですよ。僕は「アビス」では烈風のシンクが好きで、彼の秘奥義“アカシック・トーメント”がお気に入りです。その友達は最終的に木刀しか使わない“木刀縛り”にたどり着いて(笑)。
新井 確かに2周目に入ったら、縛りプレイはやりたくなるよね。僕も「デスティニー」のリメイク版で、バルバトスという強い裏ボスにあえて、誰も魔法が使えないメンバーで挑むという縛りでプレイしたことがあります。
──すごく慣れ親しまれていたんですね。おふたりはそんな「テイルズ オブ」シリーズの新作アプリ「テイルズ オブ ルミナリア」でレオ、ユーゴという幼なじみ同士の役を演じられていますが、キャストに決まったときはどう思われましたか。
新井 やっぱり歴史の重さと冠の大きさに震えましたよね。こういう形でシリーズに関わることができてとても光栄ですし、当時一緒に遊んでいた友達やうちの兄もとても喜んでくれて、本当によかったなと。「ルミナリア」をはじめ、これからも長く続いていくシリーズなので、レオという役を精一杯まっとうしていきたいなと思いました。あとは学校の帰り道に傘でペットボトルを弾き飛ばし、「魔神剣」と言って“ごっこ遊び”をしていた過去の自分にも教えてあげたいですね。
竹田 僕がこのお話をいただいたときは今よりもずっと新人だったこともあり、役をもらえたというだけですごくうれしかったですし、受かったあとで「テイルズ オブ」シリーズのオーディションだったと聞かされたので、余計にびっくりしました。確か初めての収録で台本が9冊分くらいあったんですけど、その分厚さにも驚いて。
新井 複数のキャラクターのエピソードを並行して録っていたりしたもんね。ユーゴはユーゴ編や帝国サイドのストーリーだけじゃなくて、レオ編にも出てくれていたりしますから。その部分の台本がドーンと9冊分用意されたという。
竹田 ユーゴというキャラクターはレオたちと暮らしていたユール連邦からジルドラ帝国に亡命するキャラクターなので、両方のストーリーに登場するんですね。その分考えないといけないこともたくさんあったんですけど、「こんなにしゃべっていいんだ」って、とにかくうれしくて。ゲームをあまり知らなかった小学校時代からプレイしているタイトルに出演できて、こうして歴史の一部になれたことを光栄に感じました。
これぞ“THE・主人公”
──キャラクターデザインは「食戟のソーマ」の作画を担当したマンガ家の佐伯俊さんが手がけていますが、イラストを見たときの印象を教えてください。
竹田 初めて動きのある21人のキャラクターイラストを見たときに、男女問わず魅惑的かつ気品があるデザインだなと思いました。収録時にスタッフさんが「背筋の線を佐伯先生に増やしていただきました」と言って、ユーゴのデザインを改めて見せてくれたんですけど、筋繊維の部分までこだわっているんだなと知り、ユーゴについては背中により魅力を感じましたね。
新井 ユーゴは背中の開いた衣装だし、目立つよね。21人が揃ったキービジュアルを改めて見て、レオはすごく主人公っぽいなと感じました。だって、刀を使う赤髪のポニーテールで、マントがある肩鎧や鎖のアクセサリーを身に付けているんですよ。男の子の好きな要素がたくさん盛り込まれていて、これぞ“THE・主人公”だなと。
竹田 ロマンが全部詰まってますよね。赤が基調になっているのもすごくカッコいいですし。
新井 「ルミナリア」が戦隊ものだったら、レオはレッドとして真ん中にいるんだろうなって思うよね。あとはただ明るいだけのいい子じゃないというのが、強気な笑いをしているレオの表情ににじみ出ていて、キャラクターの内面もちゃんとイラストで表現されているんだなと感じました。
──今、新井さんからキャラクターの内面というお話が出ましたが、レオは祖母の遺言である「気高く生きること」を信条・ポリシーとしたキャラクターで、一方ユーゴは自分の守るべきもののために大事な友人を裏切り、敵側のジルドラ帝国につくわけですが、新天地でも彼なりの信念を貫こうと行動します。おふたりは役づくりをしていくうえで意識したり苦労したりした点はありますか?
新井 レオは複雑な過去を抱えているキャラクターなんですが、ベースは明るいんですね。ムードメーカーでもあるし、おっちょこちょいでもある。でも熱血漢でお人好しというのを前面に出しすぎると、明るくなりすぎてしまう。ゲームでは過去を引きずったりするシーンもあるので、そこはシリアスに演じるんですけど、トラウマを含ませたニュアンスで受け答えしたら、「それだと賢すぎるので、あまり相手の言ったことに対して深く考えないで、返事してください」って言われて。確かにそうなんですけど、頭がよさそうに見えたらダメというディレクションが、一番の衝撃でしたね。そこから過去には暗いことがあったけど、みんなの前では明るく振る舞うというのを意識して演じています。まだゲームの収録は終盤まで進んでいないので、深いところまではこれから描かれるエピソードを辿らないとわからないんですけど。
竹田 僕はたくさんある中で特に、連邦にいたときのユーゴと、帝国にいるときのユーゴとの温度感に気を付けていますね。連邦にいる大切な幼なじみを裏切ってまで、敵の帝国側についたということもあり、連邦にいるときの明るさとは決定的に違うようにして。ユーゴは帝国ではロランス隊という隊に所属していて、仲間のアメリー、ファルクとよく一緒にいるんですけど、その2人の姿にレオと、レオと同じく幼なじみで世話役ポジションのセリアを重ねてしまうときがあるんですね。でもレオたちに向ける感情とはまったく別物なので、そこも意識して。あとユーゴは生真面目な性格で仲間思いだけど、1人で悩みを抱え込む不器用な部分もあるので、考えて言葉を発するようにはしていますね。
──お伺いしていて思ったんですけど、見事なまでに真逆のキャラクターですよね。
新井 本当にそうですよね、だからこそいいコンビというか。レオが先陣を切って突っ込んでいくタイプだから、必然的にユーゴが背中を守ってくれるポジションになったっていうこともあるかもしれませんし。ユーゴが後ろに付いているから、レオがどんどん突っ走るようになったのかもしれないですし。ユーゴはゲーム的にも、ガードを使うキャラクターだもんね。
竹田 レオやセリアのことを守るためにいろいろ考えるユーゴって、すごく幸せそうなんですよ。僕も演じていて、幸福感に満ち溢れてくるというか。守ることに関しては、彼は誰にも負けないので。そこは僕も誰にも譲れない気持ちで芝居してます。
新井 ユーゴはレオのことを大好きだよね。宝箱を開けるたび、「レオが喜ぶだろうな」って思い浮かべるくらい、常に考えている。
竹田 そうなんです。だから帝国での作戦中も、「レオだったらこの状況をどう打開してくれるんだろう」とか、「こういうふうに行動するかもしれない」と考えながら演じています。
居場所は変わっても、お互い同じ答えを持っている
──アニメ「テイルズ オブ ルミナリア The Fateful Crossroad」では、ゲームの少し先のストーリーを描いています。袂を分かつことになった2人が再会する場面なども登場するわけですが、アニメで印象に残っているシーンをあげるとしたら?
新井 さっき竹田くんが言っていた帝国サイドと連邦サイドの演じ分けの部分で、僕はゲーム収録の進行上、連邦にいた頃のユーゴのイメージしかなかったんですよ。アニメで初めて帝国に行ったユーゴに会って、ずいぶんダークな感じになったと。何が彼をこんなふうに変えてしまったのか、未だわからぬままなんですが、「一体、何があったの?」「そんな子だったっけ?」って聞きたくなるほどで。
竹田 確かに。それでいうと、改めて戦場にいるレオを見つけたユーゴが「変わらないね、レオ」とつぶやくシーンがあるんですけど、レオはこんなに変わってないんだと実感して、まぶしさを感じました。その後レオとユーゴが対峙するシーンでは、ユーゴは帝国軍人である以上、なんとか冷静さを保とうとするんです。でも表情を見るとそうしきれておらず、演じていて心苦しかったですね。レオたちに対して「ピラーは返してもらう、連邦」と言うセリフがあるんですが、彼らを名前で呼ぶのではなく“連邦”と口にしたところにユーゴなりの覚悟を感じて、なるべく私情を捨てるように努力しました。
新井 がんばって線を引こうとしているもんね。レオもやっぱり引き戻したい気持ちは強くあるので、任務とはいえどこまで本気で戦えるかっていう。
──アニメでは、だいぶ取っ組みあっていましたよね。
新井 泥臭いケンカをしていましたね(笑)。斬り合いのシーンのアフレコでは動くところ全部に息や声を入れてくださいと言われたので、収録も大変でした。表情がちょっとでも変わろうものなら、もう……。
竹田 ずっと息で「うっ」「はっ」と入れてましたよね。大変でしたけど、2人がなりふりかまわず真の意味でケンカをしている感じがすごくいいんですよ。レオに胸ぐらを掴まれて追い詰められたとき、ユーゴが頭突きで反撃するんですけど、そこも印象的で。声もガラの悪さを出すようにして。アニメになって絵が加わることで、ここはもっと憎しみがこもっているんだとか、ここはもっと迷いがあったんだとか、キャラクターに対して補完できた部分もありますね。より深みを出せるようになったというか。
──キャラクターの新たな一面を知ることができたと。
新井 もしかしたら、これから録るゲーム収録のほうにも、フィードバックできるかもしれない。ゲームよりも「こんなに表情豊かなんだ」って思わせられる機会が多かったよね。あと現場では絡みが多いという理由から竹田くん、セリア役の岡咲美保さんとよく一緒に収録させてもらっていたんですけど、横にかけ合いができる相手がいると臨場感があるし、お互い高めあってセリフを言い合うことができるので、とても楽しかったです。アニメは前後編で、今回登場しないキャラクターもたくさんいるので、また別のキャラクターを交えてできる機会があったらうれしいですね。
──個人的にたまらなかったのが、前編・後編それぞれに出てくる、「自分たちの戦いについて正しいことをしているのか、正義とは何か」について問うシーンです。レオとユーゴ、それぞれのセリフが印象的ですよね。
新井 そうなんですよね。居場所は変わっても、お互い同じ答えを持っているという。しかも同じ構図で描かれてますからね。フレデリックさんと須田景凪さんによる挿入歌のタイトルが「ANSWER」というところもまたエモいんですよ。
竹田 同じ正義を掲げているからこその対峙なんでしょうね。
新井 どっちも譲れないからね。でもきっと同じ場所にいては、実現できないとユーゴが判断して離れていったんだろうなって。
──何がユーゴをそうさせたのかというのは、気になりますよね。
新井 事前に知っておきたいこととして、レオとユーゴはどういう別れ方をしたのかを現場のスタッフにざっくり聞いたんですね。ケンカ別れなのか、それとも何も言わずに出ていってしまったのか。それによって、演じ方も変わってくるじゃないですか。そうしたら、離れることを伝えてから出ていったと。そんなに穏便に済むか?とは思ったんですけど。
竹田 おそらくレオは止めたし、出ていってほしくない気持ちも当然あったと思うんですよ。でも最後は幼なじみの意思を尊重したんじゃないかと僕は思っていて。
新井 ユーゴは一番つらい道を歩んでいるよね。帝国に行ったら行ったで、「裏切りもんだぜ、アイツ」って言われて。いつか連邦に帰ってきてくれるといいよね。
竹田 帰らないです(きっぱり)。帰らないことは決まっています。
──即答ですね。
竹田 帝国に渡ったことに対する責任もありますし、そこで「連邦に帰りたい」というような未練がましい考えがあったら、なすべきことをなせないと思うので。そこに関しては、演じるうえで絶対ブレないようにしたいと思ってますね。
新井 (深い息を込めながら)そっかーー、じゃあ申し訳ないけど倒すしかないね。
竹田 要はそういうことです。僕も倒すしかないんですよ。
新井 お互いの正義をかけて戦っていこう。
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自分が演じるキャラクターの一番の味方でありたい