コミックナタリー PowerPush - 小川麻衣子 ひとりぼっちの地球侵略

“ぼっち”ミーツ・ボーイ 先輩は、孤独な宇宙人少女

広瀬くんは先輩に全力で付いていくキャラ

広瀬岬一(左)と大鳥希(右)。

──では広瀬くんはどうやってできたキャラクターなんでしょうか。

広瀬くんは完全に先輩専用に作られたキャラクターです。先輩がおしゃまで口数が多くてよく動くので、それを受けるように、先輩が動いたら全部受け止める。はじめは広瀬くんと先輩は同学年だったんですけど、最終的には年下にして、背も低くしました。

──それはなぜでしょう?

同じ背格好にして完全に対等にすると、広瀬くんが恋に落ちちゃうと思ったので。だってこんな女の子に突撃されて「特別なの」って言われたら、私だったらキュンキュンしちゃいますよ!

──それは年をズラすことで回避できる?

「ひとりぼっちの地球侵略」カット

私の中で言い訳が欲しかったんです。「広瀬くんは小さい、子どものような男の子なんだ」っていう言い訳をすれば、恋に落ちにくくなるかなと。あと広瀬くんにはため息をつかせたくないなと思って描いています。先輩は変な行動を起こしたり、勝手にいなくなったり出現したりするけど、その度に全力で付いていくキャラ。「やれやれ……」とか言ってため息つきながら、仕方なく付き合ってあげる感じじゃなくて。修造のように「全力で付いて行けよ!」って思いながら描いていたら、あんな風に、とてもいい子に育ちました。

──流され体質ではなくて。

そうですね。自分から付いていく。自分でも「広瀬くん、やるじゃないか」って思ってます。

キャラ同士の関係性を妄想するのが楽しい

──破天荒な女の子と、それに付いていく男の子という関係性について、もう少し聞かせてください。

悠々と傘で空を飛ぶ大鳥希と、余裕なさげに飛ぶ広瀬岬一。1巻カバーイラストより。

この話を描こうと思った動機が、やっぱりキャラクターの関係性が描きたかったからなんです。キャラクターの掛け合いが真っ先に活きてくるようなお話がいいなと。

──小川さんは百合作品も描かれてますが、百合やBLを描かれる方は、キャラクターの関係性を描くのがお好きなのかなと。

かなり好きですね。例えば「タッチ」でも、最後の「浅倉南を愛しています」というセリフの「愛しています」の6文字には、26巻分の思いがすべて詰まっているじゃないですか。三角関係を経て、失った片割れがいて、っていういろんなぐちゃぐちゃになった思いがシンプルになって「愛しています」になったんです。私、そこの過程を考えるのが大好きなんですよ。その単純な言葉に至るまでの過程とか、関係性を妄想するのが楽しい。とにかく2人の関係性を描くことが最優先だったので、まさか戦わせることになるとは……(笑)。

──かわいらしい絵柄ですが、意外とバトル場面ではグロい描写もあったりしますね。バトルは当初は予定になかったんですか?

最初はあまり描こうとは思っていなかったですね。自分の中でバトル禁止令を出した時期があるほど、集中線のついたマンガは一生描かないと思ってたんですけど。でも「ぼっち侵略」の前に、「とある飛空士への追憶」のコミカライズをさせてもらって、ちょっと自分に自信がついたんだと思います。小説の中の壮大な風景とか、ありえない風景を描いてきたので、自分が思いついた変な風景も描けるかもしれないなって。

──では「飛空士」は、いいステップアップになったんですね。

コマ割りの効果を説明する小川麻衣子。時間は上から下のコマに移るときに移動するので、視線が横に動く縦のコマ割りでは、物事が一瞬の間に起こっていると読者に感じさせる。

「飛空士」の前は、空間を描くような見開きは描いてなかったですね。コマの縦割りも「飛空士」時代に習得した技です。かなり少女マンガ的な効果ですが。時間は上から下のコマに移るときに移動するので、横に流れると同時に起こっている印象を残すんですよ。だから私は心情が移るときや、主観が入り交じるときは意識して縦割りにしています。あんまりやりすぎると効果が薄くなるので、ここぞというときにしか使いませんが。

寂しいSFが子供のころから大好きなんです

──ちなみにタイトルの「ひとりぼっちの地球侵略」は、藤子不二雄先生の「ひとりぼっちの宇宙戦争」から?

そうです。私、「ひとりぼっちの宇宙戦争」っていうタイトルがすごく好きで。なんというか、寂しいSFが子どものころから大好きなんです。

──寂しいSF?

例えば「火の鳥」の未来編とか。ロックや猿田博士は放射能で死んでしまうけど、主人公のマサトだけが、火の鳥の加護で生き延びてぼっちになる。いちばん記憶に残っているシーンは、マサトが猿田博士を看取るシーンです。子どものころは寂しすぎて嫌だったんですけど、大人になってもいやにあの光景が脳裏に焼き付いていて、好きだったんだなと思います。

──では最後に今後の展開を少しお聞きしたいのですが、先輩と広瀬くんの2人はどうなっていくんでしょうか。

「ひとりぼっちの地球侵略」カット

かなり大変な目に遭ってもらいたいと思っています。大鳥先輩はボロボロにさせたいし……。広瀬くんにも大変なことが起きそうだけど、それを全力で受け止めてほしい。「全力で生きろよ!」と思いながら描いてるので。

──乗り越えてほしいと思って描いてるんですね。試練を課す先生みたいな。

そうです。やっぱり全力で乗り越えているときのキャラクターって、その行動に嘘がないと思うので、そういう光景を描きたいんですね。3巻は文化祭で和気あいあいとしてるんですが、これから困難なことを起こしたいので、嵐の前の静けさという感じも意識しています。ご期待ください。

岬一と先輩のファーストキスの行方は……!? ファーストキス(?)も果たし、順調に進むかに見えた岬一と希の地球侵略。そんな中現れたロシアからの転校生・アイラ。希の正体を知り、2人の関係を強く警戒する彼女の参加で、文化祭近づく学園生活は――!?

小川麻衣子(おがわまいこ)
小川麻衣子

1986年7月26日生まれ。福岡県出身。2005年、「こより日和!」で週刊少年サンデーまんがカレッジに入選。翌2006年、少年サンデー超増刊12月号(ともに小学館)掲載の「ブレイブ・フィスト」でデビューを飾った。2009年、犬村小六原作の「とある飛空士への追憶」で初連載。2012年「ひとりぼっちの地球侵略」をゲッサンで執筆開始。