映画「HoneyWorks 10th Anniversary “LIP×LIP FILM×LIVE”」HoneyWorksインタビュー|“キラキラ”だけじゃない、新たなアイドルムービー誕生! 膝を抱えた少年たちが、“この世界の楽しみ方”を見つける物語

3人が注目するサブキャラクターは?

映画「HoneyWorks 10th Anniversary “LIP×LIP FILM×LIVE”」より。社長の田村レイは、初対面でいがみ合っていた2人にユニットを組ませる。

──また、沢城みゆきさん演じる事務所の社長・田村レイのように、LIP×LIPの2人以外にも、本作にはさまざまな人物が登場します。皆さんもLIP×LIPの2人以外で印象的だったキャラクターがいれば教えてください。

shito 電車で(成海)萌奈ちゃんが「アイドルやってみなよー?」と言われて、「私は無理だよー!」と言っているシーンがありますけど、僕はそのシーンにフィーチャーして映画を1本作りたい(笑)。

Gomヤマコ ははははは。

──萌奈ちゃんも「告白実行委員会」シリーズではすでにアイドルデビューしていますから、その前日譚についての想像が膨らむシーンでしたね。

ヤマコ 私は……みんな好きなんですけど、勇次郎の弟の光一郎が、あれだけ悪態ついていても、実は彼は彼で歌舞伎の家を背負ってがんばっているところにキュンとしちゃいました。私はそこをメインで映画化希望です(笑)。

──映画がどんどん増えますね……!

Gom (笑)。堀江由衣さん演じる愛蔵のお母さん(柴崎裕子)もすごくいいですよね。今回の映画に際してみんなで作りあげていったキャラクターの1人ですけど、愛蔵の「しょうがねえな」という雰囲気も含めて、すごく魅力的なキャラクターになっていると思います。

ヤマコ 堀江さんはお酒が飲めないのにあの演技をされているんですよね。すごい……!!

──今回の映画の中での、皆さんの音楽の役割についてもお話を聞かせてください。特に本編では、歌詞やMVで勇次郎の過去のことなどがおぼろげながらも描かれていた「夢ファンファーレ」が、印象的な形で使われていますね。

shito そうですね。そもそも、「夢ファンファーレ」がこの映画の土台になっているんです。「それを映像化してほしい!」という声が多かったことを受けて、今回映画化した部分もあったので。そういう意味では、曲が映画に入りやすい、ブリッジのようなものになっているのかな、と思います。それに、今回新たに用意したオープニング主題歌「LOVE&KISS」とエンディング主題歌「この世界の楽しみ方」も、この映画に寄り添えるような歌詞になったな、と思っていて。「この世界の楽しみ方」に関しては、大人になった勇次郎と愛蔵が、子供の頃の、夢も希望も何もなかった2人に歌っているような歌詞になっています。若い子たちがこの曲を聴いて、感じるものがあったらうれしいな、と思っていました。

Gom オープニング主題歌の「LOVE&KISS」のほうは、タイトルそのままの王道なアイドルソングでありつつ、曲調としては、今回の映画は人間味をかなりリアルに描いている部分も多いので、キラキラした部分だけじゃない、切なさのようなものも描いていこうと思って考えていきました。

──ヤマコさんは、曲を聴いてどう感じましたか?

ヤマコ 私はイラストとMVの担当なので、ただのファン目線の感想になっちゃうんですけど、どっちの曲もすごく好きです(笑)。普段から、イラストやジャケットを描くときは音楽を聴くようにしているんですが、2曲ともリピートでずっと聴いていました。テンションを上げて勢いで描きたいときは「LOVE&KISS」を聴いて、しっとりといい表情のキャラクターを描きたいときは「この世界の楽しみ方」を聴いたりしています(笑)。

shito 今回はLIP×LIPの最新バーチャルライブも同時上映されますけど、そのライブ前に流れるオープニングBGMやエンディングBGMも、このライブのために書き下ろしたものなので、そういう部分も含めて、隅々まで楽しんでくれたらうれしいな、と思います。

好きなことをせずに1日過ごすのはもったいない!

──映画本編を見て、その後バーチャルライブがはじまる構成も素敵ですね。

映画「HoneyWorks 10th Anniversary “LIP×LIP FILM×LIVE”」より。

ヤマコ 映画で裏側の部分や、がんばってきた姿を見たうえでライブを観ると、「この2人が今本当に存在しているんだな」とリアリティが増しますし、「映画の中での物語があったからこそ、あんなに練習していたからこそ、このパフォーマンスがあるのかな」と、ライブまでの過程も踏まえて楽しめるところがすごくいいなあ、と思います。それぞれのキャラクターの個性が動きにもすごく反映されていて、勇次郎だったら、歌舞伎や日本舞踊をしていたからこそ、足をビシッとまっすぐにしてMCをしていたりもしていて。

shito それぞれのクセが、よく出ていますよね。

Gom それに、今回はこれまでのLIP×LIPのライブと比べても、2人のより細かい表情がわかるものにもなっていると思うので、その辺りにも注目してみてください。

shito ライブ中には映画のことに関連したMCもあって、勇次郎や愛蔵も一緒に映画を観たような雰囲気にもなれるはずなので、楽しみにしてもらえるとうれしいです。

──今回の「HoneyWorks 10th Anniversary “LIP×LIP FILM×LIVE”」は、HoneyWorksの10周年を記念した作品であると同時に、LIP×LIPの“はじまりの物語”を描いた作品でもあると思います。それだけに、「皆さん自身も、このタイミングで活動を始めた頃のことを思い出したりしたのかな?」と想像していたのですが。

Gom 僕自身も「音楽をやっていこう」と決めたときは、最初は親に大反対されたりもしたので、まさに今回の映画と同じような状況だったんです。だからこそ、そこから1つひとつステップを踏んで、誰かとの関係値を築いていく姿はやっぱり印象的でした。

ヤマコ この映画では、LIP×LIPの2人の「やりたいことをやり続けて、夢を叶える」という芯の強いところが描かれていますけど……。

──その雰囲気は、エンディング主題歌「この世界の楽しみ方」の歌詞にも表れていますね。

ヤマコ そうですね。私自身も、ハニワをはじめる2年ぐらい前に、当時やっていた普通のお仕事がしんどくて、絵を描くのをやめていた時期があったんです。でも、絵を描くことがやっぱり好きで、「好きなことをせずに1日過ごすのはもったいない!」と思い直して。それで絵を描きはじめた頃に、ちょうど声をかけられてハニワの活動がはじまりました。「1日のうちに絶対に好きなことを1つはするぞ」と決めて絵を描き続けていたら、ちょうどそのタイミングで2人に声をかけてもらったんです。それが、好きなことをやり続けられる今につながっているので、ブレなくてよかったな、やり続けてよかったな、と改めて思います。

やりたいことは、まだまだたくさんあるんです

──活動をはじめた10年間、今のように多くの人々が皆さんの作品に触れてくれるような状況がやってくると思っていましたか?

shito 実際のところ、全然想像はしていなかったです(笑)。でも、やっていることはずっと変わっていなくて、その都度その都度やりたいことをやらせてもらっていますし、ひとつずつ「次はこれがやりたいです!」ということを発信して、それを10年続けてこれた、という感覚で。スタッフの皆さんにはわがままを言ってしまっている部分もあるのかもしれないですけど、これからもわがままを言わせていただきたいな、と思っています(笑)。

Gom (笑)。人によっては、やりたいことは特になくて、「人生暇つぶし」という人もいるかもしれないですけど、僕の場合、10年やってきて思うのは、やりたいことはまだ全然できていなくて、まだまだたくさんあるということで。なので、これからも10年、20年とがんばっていきたいな、と思っているところですね。

ヤマコ ハニワの活動をはじめた頃は、「ボーカロイドの曲にMVをつけてください」という話だったのが、そこからTVアニメや劇場版の制作にまで広がっていくのは、最初は全然想像していなかったことでした。あくまでハニワは音楽のユニットなので、そういうものはまったく別物だと思っていたんです。でも、この10年の間に、音楽から派生して小説が生まれたり、映画になったり、TVアニメが生まれたり、という広がりを経験して「いろんな可能性があるんだな」と実感しましたし、そのたびに新しい挑戦に踏み出させてもらっているので、本当に楽しいです。去年は初めて作詞もさせてもらいましたし。

──ライブで歌ったこともありましたよね。

ヤマコ ありました(笑)。そんなふうに、いろんな扉を開かせてもらっているな、と。

──これからのHoneyWorksについては、どんなことを考えていますか?

shito やっぱり、聴いてくれる皆さんが喜んでくれるようなことをしたいな、というのが一番で、それが自分たちにとっては作品を出し続けて、ひとつでも面白いものを作ることだと思うので。これからも「暇さえあれば曲を作っていこう!」と思っています(笑)。

Gom 作品を出し続ける、というのは僕も同じですね。あとは「ハニワを通ってきた」という世代がもっと増えたらいいな、とも思っています。何年後かに「懐かしい」と思ってくれる人がいてもうれしいですし、これから新しく触れてくれる人たちも増やしていきたいですし。そう考えると、まだまだ出し続けなくちゃな、と思います(笑)。僕らのことを一度好きになってくれて、通り過ぎていく人がいても、どこかでまたふらっと作品に触れてくれたらうれしいし、「今まではあまり合わないと思っていたけれど、この曲は好き」という人がいてくれてもうれしいですし。自分たちの作品が、誰かに寄り添っていけたらいいな、と思いますね。

ヤマコ 私の場合、暇さえあれば2人が曲を作っているので、MVを作る作業が全然追いついていなくて(笑)。これからもどんどん作っていきたいですし、クオリティももっと上げていきたいです。何より、キャラクターを愛して、その魅力をこれからももっと深堀りしていていけたらいいな、と思っています。