オーイシマサヨシを困らせる、圧倒的な没入感で時間を溶かしまくりのLINEマンガ

アニソンシンガー・アニソンクリエイターとして活動するオーイシマサヨシは、言わずと知れたマンガ好き。LINEマンガのユーザーでもあり、最近はつい時間を忘れてしまうほどハマっているという。コミックナタリーでは、そんなオーイシにLINEマンガの使い心地や特にお気に入りの作品についてインタビュー。ある1作品にテーマ曲を作るとしたら?という無茶ぶりな質問にも答えてもらった。またLINEマンガ編集部オススメのwebtoonも新たに読み、その魅力を紹介している。

取材・文 / ナカニシキュウ撮影 / 武田和真

オタクがマウントを取れる時代

──まず、オーイシさんはこれまでにマンガとどう接してきたのかというお話から聞かせてください。おそらく幼少期から親しんでこられたと思うんですけども……。

はい、そうですね。記憶している限りでは、小学校低学年くらいのときからお小遣いを全ブッパして週刊少年ジャンプ(集英社)と週刊少年マガジン(講談社)を買って読む習慣がありまして。自分のお小遣いだけでは足りないので、父親を巻き込んで同じように週刊マンガ雑誌を買わせるように仕向けて、手分けして毎週毎週買っていましたね。それから30年以上経った今でも、週刊マンガ雑誌は読み続けています。

──ということは、親御さんの影響で読み始めたパターンではないんですね?

ではないですね、そういえば。……となると、始まりはどこからだったんでしょうね(笑)。たぶん、当時は「ドラゴンボール」とかの少年マンガ原作のアニメが夕方にたくさん放送されていたので、そのあたりから興味を持ったのかもしれないです。周りのみんなも、そういうアニメの必殺技を身ぶり手ぶりでマネしたりしてましたし。

──かめはめ波とかは全員やりますもんね。

僕らの時代は魔貫光殺砲が大流行してました(笑)。それ以来、時期によってハマる作家さんがいろいろ変わっていったりもしつつ、おしなべてどの年代でも何かしらマンガは読んでいましたね。いろんな作品にそのときどきでハマってきました。

オーイシマサヨシ

オーイシマサヨシ

──好きな作品の傾向は何かありますか?

僕は昔から、主人公がどんどん強くなっていくマンガが大好きだったんですよ。いろんな技を覚えたりしながら大会を勝ち上がっていったりするような……バトルものもそうだし、スポーツものもそうですね。毎話毎話、手に汗握って楽しんでいました。特に好きなのが、戦いの終盤に主人公が隠し持っていた必殺技とかを出してくる展開あるじゃないですか。あれが出てきたときのアドレナリンはヤバいですね(笑)。そういう展開に出会うと、43歳になった今でも瞬時に少年に戻れてしまう。だからその手のマンガは今でも本当に好きで、ずっと読んでいます。

──オーイシさんの人生において、マンガという存在は大きいもの?

めちゃくちゃ影響を受けていると思います。今こうやってアニソンシンガー、アニソンクリエイターという仕事ができているのも、過去にずっとマンガと触れ合ってきたからこそだと思ったりもするので。あと、僕はマンガってひとつのコミュニケーションツールでもあると思ってるんですけど、例えばクラスメイトと好きな作品の話で盛り上がったり、掘り出し物の作品を見つけてきてみんなに紹介したらクラスのヒーローになったりとか、そういうマンガを通じたコミュニケーションが人格形成に影響した部分も大きかった気がしていますね。僕の人生には必要不可欠なものだったんじゃないかなと。

オーイシマサヨシ

オーイシマサヨシ

──「いい作品を知っているやつが偉い」という感覚って、たぶんどのジャンルにもありますよね。音楽ファンとかもまったく同じだと思いますし。

ああ、そうですね。今は特にそういう時代になっている気がします。あるジャンルに対してものすごく精通していることがちゃんと武器になるというか。オタクがマウントを取れる時代になっている(笑)。僕らの若い頃はまだオタクの地位が低かったと思うんですけど、それを思うとずいぶん風向きが変わりましたよね。

──「誰がなんと言おうと俺はこれが好きなんだ」と言える人がカッコいい、という価値観が普通になったというか。

今はそうなりましたね。ただ、それが行きすぎて“知識量の勝負”みたいになっちゃっている側面もあって……最近よく聞くような「アニメや映画を倍速で観る」みたいな方向に行っちゃうのは、僕は由々しき事態だと思ってるんですけど。「とにかく情報を摂取しよう摂取しよう」みたいな感じで、ある意味“情報摂取戦国時代”が来ているのかなと。情報量の多いやつが勝てる、論破できる、それが偉いみたいな。

──それでちゃんと作品を楽しめているのか、ちょっと心配になりますけどね。

そうなんですよねえ。

もはや四次元ポケットです

──そんなオーイシさんが最近LINEマンガをよく読まれていると聞いたんですけども、どういう経緯でLINEマンガと出会ったんですか?

この取材を受けるにあたって、その記憶をちょっとたどってみたんですけど……たぶん、普通にLINEを使っているときに出てくるバナー広告で「なんか面白そうなマンガだな」と思ってクリックしたのがきっかけだったんじゃないかと思うんですよ。それで最初に読んだのが「カンスト突破」だったんですが、いきなりドハマリしちゃって。

「カンスト突破」

「カンスト突破」

「カンスト突破」
原作:成仏予定・紅実 / 作画:MINO

正体不明のエラーにより、3000年間も仮想空間に閉じ込められていた皆本宗助。現実世界で過ぎた時間はわずか10年だったが、彼が覚醒テストを完遂し現実世界に戻っくるとモンスターの群れやダンジョンが待ち受けていて……。人類最強となった宗助は、すべてを元通りに戻すべく戦いに挑む。2023年上期に連載再開予定だ。

LINEマンガで読む!

──それまで、電子書籍でマンガを読む習慣はありました?

ありましたね。もちろんもともとは紙のマンガ派だったので、最初はちょっと抵抗もあったんですけど。「紙をめくるのがいいんじゃん!」みたいな変なこだわりがあったんですけど……でも実際に電子で読み始めると、移動中でも気軽に読めたり、楽屋でメイクしている最中にも読めたりと、紙にはない便利さを実感する場面がどんどん増えてきて。今では割と電子書籍を利用することが多くなりましたね。

──スマホ1台に何百冊、何千冊と入れられるというのは、紙派からすると魔法のような話ですよね。

うちの本棚なんて、もう壊滅状態ですから(笑)。あの本棚がスマホ1台にまとまる……なんならそれ以上の冊数をまとめられると考えたら、それはもはや四次元ポケットですよ。しかも、それをいつでもどこでも見られるという気軽さがまたよくて。例えば電車移動の10分間だけ読みたくなったらパッと読んでパッとやめられるし、それこそLINEマンガだったら「あのマンガ、更新されてるかな?」と見に行ったりして、ちょうど10分くらいで1話読み切れたりするじゃないですか。さすがLINEマンガさん、ツボを押さえてるなと(笑)。

──おっしゃる通り、現代人のライフスタイルに見事にハマる仕様だなと個人的にも感じます。

こんなに便利なものを使わない手はないですよ。これだけ紙で買い続けてきた僕ですらこうなっているというのは、それが答えなんだなと思いますね。

オーイシマサヨシ

オーイシマサヨシ

──それによって、逆に紙で買うことの特別感も生まれましたよね。

そうなんですよね。本当の本当にコレクションしたい作品は紙で買う、というような。音楽業界でも似たようなことが起きていて、CDがグッズ化しているんですね。音楽そのものはサブスクで聴くけど、ジャケットやブックレットが手元に欲しいからCDを買う、という方も今すごく増えていて。音楽もマンガも、デジタルとアナログのすみ分けが進んでいる印象はすごくありますね。

今の文化が生んだ新しいエンタメ

──LINEマンガの話に戻りますが、「カンスト突破」をはじめとするタテ読みのマンガ、いわゆるwebtoonに初めて触れたときの印象はどんな感じでした?

感動しました!

──感動しましたか!

すみません、小泉元首相みたいなことを言って(笑)。でも本当に感動したんですよね。僕はそれまでページをめくるマンガ文化しか知らなかったんですけど、下へ下へスクロールしていく読み方にまったくストレスを感じなかった。「なんじゃこりゃー!」と思いながらスッと読んでいけたんで、ちょっとびっくりしちゃいましたね。もっと抵抗あるかなと思ってたんですけど、けっこうすぐに受け入れることができました。

オーイシマサヨシ

オーイシマサヨシ

──素晴らしい適応力ですね……。

これって、日本では生まれ得なかった形なんじゃないかとも思ったんですよ。日本人にはセオリーみたいなものを重んじる国民性があるし、マンガ文化は長い歴史とともに日本に根付いてきた素晴らしい文化だから、それゆえにそこからはみ出すには相当な勇気がいる。この縦スクロールというマンガのスタイルは、ある意味ではその型を破ったというか、まったく新しいジャンルを開拓したなというふうに感じました。

──おっしゃる通りだと思います。

この形によって生まれる、読むときのスピード感がやっぱりいいですよね。ページをめくる動作ももちろん僕は好きなんですけど、その形式では得られない瞬発力があるというか。基本フルカラーだからというのもあると思うんですけど、目に入ってくる情報がすごく華やかで、スピード感がすごいなと。

「カンスト突破」より。

「カンスト突破」より。

──視覚情報としての入ってきかたは、マンガよりもむしろアニメに近いですよね。

そうそう、そうなんですよ! 特に、セリフとかがあまりなくて絵の情報だけで見せていくシーンなんかは、見ていて「これ、アニメなんじゃないか?」と錯覚するような瞬間もあったりして。それで言うと、音が出たり絵が動いたりするwebtoonもあるみたいな話をちょっと小耳に挟んだんですけど……。

(LINEマンガ担当者) ありますね。現状はアプリではなくブラウザのみになってしまうんですが、画像が動いて音も出るホラー作品がありまして……。

ホラー! いやー、仕掛けますねえ(笑)。それってスマホやタブレットで読むという大前提がないとできないことだと思うんで、まさに今の文化が生んだ新しいエンタメだなあという感じがします。

オーイシマサヨシ

オーイシマサヨシ

──確かに、紙の世界ではまず出てこない発想ですもんね。

あと僕がちょっと思ったのは、webtoonって、てらいがないですよね。王道をやることに迷いがないというか、ど真ん中にストレートを投げ込んでくる遠慮のなさを感じるんですよ。最近のマンガはけっこう「いかにひねりを入れられるか」の勝負になっちゃってる印象があったりもするんで、その遠慮のなさがすごく気持ちよかったんですよね。それに特にいいなと思ったのが、悪役のキャラクターが“ちゃんと悪いやつ”なところ(笑)。それがめちゃくちゃいいなと思いました。