コミックナタリー PowerPush - 山本崇一朗「ふだつきのキョーコちゃん」

ゲッサンのルーキーが描く ひたすら可愛いツンデレ妹

山本崇一朗インタビュー

巨乳が人格に反映されるんだろうか?

山本崇一朗

──「ふだつきのキョーコちゃん」は以前ゲッサンに掲載された、隣にキョンシーの女の子が引っ越してくるという読み切り作品が原型ですよね(『まちにまったおとなりさん』)。いくつか大きく変わったところもありますが。

そうですね。例えば読み切りには、優等生女子の日々野さんは登場しなかったんですよ。連載になるとき担当さんから、女の子がもう1人欲しいということで、「真面目で巨乳」というお題を出されたんです。

──それはまたド直球な(笑)。

「巨乳」の時点でもう「?」ってなってしまったんですよね。巨乳ってなんだろうって……巨乳が人格に反映されるんだろうか、巨乳キャラっぽい人格ってどんなんだろうとかいろいろ考えてしまって。

──(笑)。

「ふだつきのキョーコちゃん」より、日々野さん。学校の中で、唯一ケンジに親身になってくれる存在だ。

で、考えあぐねた末に、とにかく「おっとりさせよう」みたいな感じになって。それで、天然でおっとりした女子というのでひとまず描いてみたんですけど。

──巨乳っぽい性格とはそういう感じという、山本先生なりの結論ですね。

あと巨乳といえばタレ目かなと思って。それでああいう造形になりました。でも日々野さんについては、連載が始まった時点でもまだ固まっていなくて、話が進むうちに徐々に決まってきた感じがあります。

──最近は迷われないんでしょうか。

そうですね。スポーツテストの回あたりで、これだっていう感じにはなりました。

──なるほど。しかし結果としては、日々野さんはそこまで巨乳ではないような……。

いえ、これが僕の許せる限りの巨乳なんです。もちろん1番好きなのは、キョーコのぺったんこです!

明るいツンデレキャラが大好き

──そういえば“妹”という要素も、読み切りにはありませんでしたよね。「キョーコちゃん」で付け加えたのはどういった理由で。

やっぱり、男女が簡単に一緒にいる理由が欲しかったっていうのがすごく大きかったですね。あと僕、姉も弟もいるんですけど、妹がいないんですよ。なので妹に対する憧れがひたすらあって……(笑)。

「ふだつきのキョーコちゃん」より。

──現実にいないからこそ可愛く描けるわけですね。

そうですね。だから多分、キョーコを姉にしたら全然可愛くなくなっちゃうと思います。

──ツンデレにされたのも、山本先生の憧れの投影ですか?

そうですね。明るいツンデレキャラが好きなんです。

──明るいツンデレと言いますと、例えば?

やはり「うる星やつら」のラムちゃんでしょうか。ツンデレと呼ぶかは少し微妙ですが……可愛くて大好きです。全然暗くならない部分も含めて。

──ツンデレでも、くらーい過去を背負ったヒロイン、みたいのは……。

ダメですねー。見てられないんです。最近のアニメとかでも最初の方は好きなんですよ。でも後半になってヒロインのトラウマシーンが、ってなると…あそこらへんからはちょっと観られないんですよね(笑)。

──確かに山本先生の作品は、暗い雰囲気とは今のところ無縁ですね。

基本的に僕、重い話を読むことも描くことも苦手なんです。キャラクターもみんな脳天気なのが好きで。

はるき悦巳「じゃりン子チエ」1巻

──読むことも。それは昔からそうなんですか?

そうですね。本当に明るいの……例えば「じゃりン子チエ」とか、アニメですけど「ガンバの冒険」とか「ヤッターマン」なんかが好きでした。暗いやつは読みにくくて、ずっと苦手なままなんです。

──確かに「じゃりン子チエ」なんかは展開的に暗い部分もありますが、それでも雰囲気はずっと明るいままですね。

はい。あんな雰囲気になれたらいいなと思います。

ダントツに影響を受けたのは「ラブロマ」

とよ田みのる「ラブロマ」1巻

──ほかに影響を受けられた作品はありますか?

ダントツは、とよ田みのる先生の「ラブロマ」です。

──ダントツとはすごいですね。どういった部分にでしょう。

あの主役2人が、ずっとイチャイチャしてるのに嫌味にならない感じは、本当に凄まじいと思っていて。

──確かに雰囲気は通じる部分がある気がします。絵柄も、とよ田先生を意識されていたり?

いや、絵は「ジョジョの奇妙な冒険」だったり「バキ」だったりを、手当たり次第模写して練習していました。あとは「AKIRA」とかもすごく好きでしたね。直接参考にしている、というわけでもないんですが……。

──絵を描く際に、ここは気をつけているという部分はありますか。

「ふだつきのキョーコちゃん」より。

やっぱり表情でしょうか。こう眉毛を……ちょっとつり上げるか、上げないかみたいなところで、何度も描き直したりします。線が少ない絵柄なので(笑)。

担当 でも絵柄やコマ割り、話の内容にしても、少ないというか、無駄のない作風なんですよね。出来上がるのもすごく早いんですよ。僕が担当してきた中で、1番打ち合わせに時間がかからない(笑)。

──へええ。編集者と何度も話し合ってしっかり作り上げていく感じではないんですか。

そうですね。担当さんにはシチュエーションの要点だけ提示していただくっていう。今回は運動会やろうとか、喧嘩した話をやろうとか。そしたらじゃあ、それで描いてみますという感じで、話を用意していますね。僕はその取っ掛かりが出ないタイプなので、すごく助かっています。

──ネームの直しも少ない感じですか?

はい。日本語はよく直されますが(笑)。

山本崇一朗「ふだつきのキョーコちゃん(1)」 / 2014年1月10日発売 / 580円 / 小学館
「ふだつきのキョーコちゃん(1)」

妹に近づく男を片っ端から威圧するため、最凶の「シスコンヤンキー」と恐れられる札月ケンジ。
「俺の妹に、絶対に近づくな!!」その過保護に隠された、キョーコちゃんの秘密とは…?
クールな妹はときどき素直、表裏一体シスコンコメディー第1巻!

山本崇一朗(やまもとそういちろう)
山本崇一朗

5月30日生まれ。小豆島出身。血液型B型。2011年9月、第27回ゲッサン新人賞佳作受賞。同年12月、第69回新人コミック大賞佳作受賞。2012年6月に「からかい上手の高木さん」でプチデビュー、同年12月「恋文」で本格デビューを果たす。2014年現在、ゲッサン(小学館)本誌にて「ふだつきのキョーコちゃん」、ゲッサンminiにて「からかい上手の高木さん」を初連載にしてW連載中。