コミックナタリー Power Push - 久米田康治からの“お別れ”

画業26年目で初画集、初原画展、初サイン会… マンガ界の火薬庫が語る“これまでとこれから”

1991年に「行け!!南国アイスホッケー部」でデビューした久米田康治。「生きる道を探していた」と語る久米田の作品は、スポーツコメディ、ラブコメ、下ネタギャグ、ブラックコメディと多岐にわたり、アニメ化や舞台化もされた「じょしらく」の原作、小説の挿絵などマンガ以外の仕事も数多く手がけている。

マンガ家生活26年目、48歳にして初の画集刊行、初の原画展開催、初の単独サイン会実施と、ますます精力的な活動を続ける久米田康治。画集「悔画展」と新作「かくしごと」1巻の発売を記念し、これまでの歩みについて語ってもらった。

取材・文 / 小林聖

悔画展収録!久米田康治が後悔したイラスト3選 (本人のコメント付き)

  • 「かってに改蔵」イラスト(「悔画展」収録)

    すっごい苦労して和紙を取り込んだ思い出が……後悔しています。

  • 「さよなら絶望先生」イラスト(「悔画展」収録)

    文明に寄りすぎて鼻に付く。
    後悔してる。

  • 「せっかち伯爵と時間どろぼう」イラスト(「悔画展」収録)

    影絵は理解されない。ちゃんと顔とか描いて、普通に描くよりめんどくさいのに、手抜きっぽく言われて……。後悔しています。

僕が知らないだけで、もうすぐ死んじゃうんですかね

──今年は初の画集「悔画展」刊行に、初の作品展「一挙後悔中 ~さよなら久米田先生~」の開催、「かくしごと」1巻刊行記念で初の単独サイン会実施と、かなり精力的に活動されていますね。

「悔画展」

そうですね。まあ、体が動く最後くらいの歳なのかなと思って。いつどうなってしまうかわからないので、サイン会とかわざわざ来てくれる人にはお別れを言っておこうかなと。

──いきなりそんな。

まあ、たまたま重なっただけなんですが。「かくしごと」をやる前、1年くらいブラブラしていたので、そのとき割と気軽にいろんな話を受けちゃったんですよね。それが今年一気に来た。

──「悔画展」はデビュー作の「行け!!南国アイスホッケー部」から最新作の「かくしごと」までのほぼ全連載作を網羅しています。さらに「うる星やつら」のラムちゃんやガンダムとのコラボレーションなど、寄稿してきたイラストもたくさん収録されますが、思い出深いものはありますか?

基本的に覚えているか覚えていないかの二択というか……。本当に描いた記憶がないものも出てきて。単行本の表紙とかは覚えてますけど、コラボ企画とかは「そういえば、やったなあ」「やったっけ?」っていう感じのものが多いです。本当にヤバいっすね、老化が。描いてない絵を出されて「描いたでしょ?」って言われたら「描いたかも……」って言っちゃうと思います(笑)。ただ、今回いろいろな原稿を掘り出していて気付いたんですけど、僕、雑誌の単独表紙のイラストをやったのって20年前が最後なんですよね。

「太陽の戦士ポカポカ」イラスト(「悔画展」収録)

──「行け!!南国アイスホッケー部」の後に連載した「太陽の戦士ポカポカ」のときですか?

そうです。「ポカポカ」の1回目。雑誌の表紙って、だいたい連載開始のときにもらえたりするんですけど、アイドルのグラビアとかに取られてたりして、その後たぶん1回もないんです。ショックでしたね。まあだから、20年前がピークだったのかな。

──いや、そんな(笑)。「悔画展」というタイトルは編集さんが付けられたんですか?

そうですね。結構失礼なタイトルですけどね。作品展も「さよなら久米田先生」とか言われてるし。

舞台「49日後…」のパンフレットに寄稿した生前葬のイラスト(「悔画展」収録)

──以前「さよなら絶望先生」で講談社漫画賞を受賞したときは生前葬をやられて、今回は「さよなら久米田先生」で……。

僕が知らないだけで、もうすぐ死んじゃうんですかね。最後だからいろいろしてくれてるのかなって。

久米田康治画集「悔画展」/ 2016年6月30日発売 / 2700円 / 講談社
久米田康治画集「悔画展」

待望した!久米田康治、画業26年目にして初の画集!! 選りすぐりのイラストを多数収録し、全イラストに本人の「後悔コメンタリー」付き!

作品展
「一挙後悔中 ~さよなら久米田先生~」

東京会場
会期:2016年7月2日(土)~8月14日(日)
会場:青山GoFa
大阪会場
会期:8月23日(火)~9月4日(日)
会場:海岸通ギャラリーCASO スペースB
久米田康治「かくしごと(1)」/ 2016年6月17日発売 / 講談社
久米田康治「かくしごと(1)」
648円
Kindle版 / 540円

父・後藤可久士、娘・後藤姫。父が娘にぜったい知られたくない秘密……。それは、自分が「漫画家」だということ!でもそんなの隠し通せるの?「隠し事」は「描く仕事」! 愛ゆえに心配しちゃう漫画家パパが大暴走の、漫画業界トラブルコメディ、開幕!

久米田康治(クメタコウジ)
久米田康治

神奈川県生まれ。1990年、「行け!!南国アイスホッケー部」が第27回小学館新人コミック大賞を受賞。翌年、週刊少年サンデー(小学館)に掲載されデビューとなった。当初スポーツマンガとして始まった同作だが、次第にコメディ要素が増え徐々にギャグマンガへと変化。過激な下ネタとお色気で好評を博した。1998年より同誌で連載を開始した「かってに改蔵」は、登場人物の妄想から発せられる痛烈な社会風刺で新たなファンを獲得。2005年より週刊少年マガジン(講談社)で連載を開始した「さよなら絶望先生」は2007年に第31回講談社漫画賞を受賞、同年テレビアニメ化され、さらなるヒットを記録した。アニメ化に続き舞台化もされた「じょしらく」の原作を務めるなどし、現在は月刊少年マガジン(講談社)にて「かくしごと」、楽園 Le Paradis [ル パラディ](白泉社)にて「スタジオパルプ」を連載中。また「じょしらく」と同じくヤスとタッグを組んだ「なんくる姉さん」もヤングマガジンサード(講談社)にて連載されている。