コミックナタリー PowerPush - ルノアール兄弟「公園兄弟」発売記念 清野とおる×押切蓮介×ルノアール兄弟 公園雑談
俺たちダチンコ!同い年ぶっちゃけトーク
心機一転で臨んだ「公園兄弟」
──最新作の「公園兄弟」は、ルノアール兄弟の新境地という印象を受けました。がんばる気ゼロの貧乏青年と、金はないのに悠然と怪しげな方舟の宿を経営する“もっさん”。そしてもっさんを慕う公園の住人たちを主軸に据えた、この作品はどのような構想から生まれたんですか?
左近 「セクシーDANSU☆GAI ユビキタス大和」が終わった後、ヤンマガで「おまちゅう」という短期連載をやったんですけど。
上田 これがもう、それまで以上に下ネタの限りを尽くしたようなマンガで。結局僕らの一番の武器は下ネタだからと、思いを新たに提示したんですが……実は反応がいまいちで、仕切り直してみようと話し合ったんです。
左近 僕ら、下ネタがウケなかったら、やることなくなっちゃうんで……。
上田 ちょっとだけですが、自分たちなりにリアリティのある設定を考えるところから始めましたね。僕ら、ドキュメンタリー番組の「ザ・ノンフィクション」が好きで。あの番組に出てくるような、苦境に立たされている人たちを登場させてみようかなと。
左近 底辺をどう生きるか。今の世相をうっすら反映させる狙いもありました。
清野 底辺生活者なのに、なぜかもっさんたちは余裕で生きてる。この奇妙な共同生活ぶりが、すごく面白いよね。
上田 ホームレス仲間たちを描くのも、本当に楽しかったですね。
押切 シゲさんとか、いいよね~。
上田 歯の抜け具合とか、ハゲ具合とか……描き分けのしがいがあってワクワクしました。
押切 そのワクワク感、画面から伝わってきますよ!
上田 かわいい女の子キャラも、このくらい描き分けられたらいいんだろうけど。
押切 え、でも女の子、めっちゃかわいいですよね。
清野 梨子ちゃん、かわいかったっす!
押切 生命を感じさせるキャバ嬢ですよね。グッとくる。ルノアール兄弟の初期の女子キャラってどんな感じだったっけ?
上田 出てきてないですね。動物くらいしか。
押切 女の子描くのに、テレがありませんか?
上田 ありますねぇ。それと……難しい! ちょっと目の位置がズレただけでかわいくなくなっちゃう。ホームレスなら、ちょっとミスっても全然影響ないのに(笑)。
押切 わかるなあ。僕もオバケ描くときはなんでもないけど、女の人描くときは息止めて描きますよ。
ギャグを通して人間に斬りこむ!
押切 「公園兄弟」には、おっぱいパブのエピソードも出てくるけど、実際行ったりするの?
左近 まあかつて、たしなむくらいは。昔、赤羽のおっぱいパブに並んでたら、同級生が通りかかって「あれ?」って言われて……気まずかったなぁ。
上田 めったに会わない人に……一番見られたくないとこだよね。中に入っちゃってたらまだしも「並んででも入りたいんだ」みたいな。
左近 同級生はその上の階のカプセルホテルに行こうとしてたところで。
押切 そこでわざわざ声かけなくてもねぇ(笑)。
──じゃあ、原作するにあたって取材したわけではなく?
左近 昔とった杵柄です。
押切 あの雰囲気、大好きなんですよ。おミズ系の店をチクチクいじるネタ。ルノアール兄弟はやっぱり性に精通してるイメージだから! 童貞の悩みとか、人はなぜセックスをしたがるのかとか、ギャグを通してそういう人間の性(さが)に斬りこんでいく感じ。
上田 ここ数年、僕らが考えてるのは、男と女が逆転してきてるんじゃないかと。女性のほうが「モテたい」とか露骨に主張するようになってますよね。一方、男のほうは純愛好みになってる気がする。だから、今男性向けに「モテたい」みたいな情念全開のマンガ描いても、若い読者にはあまりウケなくなってきてるかなと感じつつあるんですよ。
押切 なるほど……ルノアール兄弟が描く、女の子をテーマにしたマンガも読んでみたいね! キャバ嬢のドロドロ話とか、アホな女キャラとか……いいんじゃない?
デビュー当時からの一貫した姿勢
清野 それにしても「公園兄弟」の表紙、おしゃれじゃないですか~!
──ルノアール兄弟の持ち味はそのまま、新しいステージに入った感じを受けますね。 女子の読者も増えるんじゃないでしょうか。
上田 「これまでと違う感じで描いてみたけど、いかがですか?」と問いかける作品になったかな。
清野 うん、でもルノアール兄弟のすごさは、一貫してるところだと思いますよ。不条理な部分はとことん不条理。90年代からずっと一貫した姿勢で描き続けて、2010年代まで生き残ってるギャグマンガ家。だから、尊敬に値するんだよね。
押切 そう、そこ! デビュー当時とまったく同じ作風を貫いてこれてるってすごく高いハードルなんだよ。まあ、僕自身、ギャグマンガに限界を感じたし。
清野 僕は今、エッセイマンガがメインだけど、デビュー当時はルノアール兄弟と同じ不条理系のギャグマンガを描いてたんです。できればずっと、その路線を描き続けていたかったよね。でも、違うジャンルの要素を入れていかないと生き残れないっていうところまで来ちゃったし……そういう意味では負けたんですよ。悔しいね~。
押切 ちなみに「悔しい」はホメ言葉ですよ。悔しい、ムカつく、死ねはホメ言葉(笑)。
清野 言っとくけど、僕らだけじゃなく、路線変更でしのいでるギャグマンガ家はいっぱいいますよ!(笑) そっちのほうが多いはず!
左近&上田 いやいや、ありがとうございます!
押切 ギャグマンガ家の対談なのに、オチがなくていいんですかね?
左近 えーと……じゃあ……今まで話したこと、全部ウソでしたー!! (笑)
あらすじ
仕事も定まらずプラプラしているヒモ男の心平。彼の前に腹違いの兄貴を名乗る男・もっさんが現れた。折しも家を追い出された矢先の心平は、もっさんの家に身を寄せることに。しかしもっさんは公園の池に浮かぶ屋形船に居を構えるホームレスだったのだ。笑いと謎に満ちた公園兄弟の0円生活がここに始まる。
押切蓮介(おしきりれんすけ)
1979年9月19日生まれ、神奈川県川崎市出身。1998年に、ヤングマガジンにて「マサシ!!うしろだ!!」でデビューし、「でろでろ」などホラーギャグの分野で人気を博す。最新作に格闘ゲームを題材にした青春作品「ハイスコアガール」など。
清野とおる(せいのとおる)
1980年3月24日生まれ、東京都板橋区出身。生まれはほかの3名より下だが、学年は同じ。デビュー作は、1998年にヤングマガジン増刊赤BUTA(講談社)に掲載された「アニキの季節」。自身が住む赤羽周辺を紹介するエッセイマンガ「東京都北区赤羽」で局地的にブレイクする。
ルノアール兄弟(るのあーるきょうだい)
原作担当・左近洋一郎、作画担当・上田優作によるコンビ。ともに1979年生まれで、中学からの同級生。2000年、別冊ヤングジャンプに「ヌーディティ」が掲載されデビューを飾る。下ネタを基本としたギャグが特徴で、代表作は「セクシーDANSU☆GAI ユビキタス大和」。月刊!スピリッツ(小学館)で連載した「さよなら、もっさん。」が「公園兄弟」とタイトルを改め2013年3月29日に刊行された。
ルノアール兄弟プレゼンツ、お花見情報
今回の公園飲みを気に入ったルノアール兄弟が、3月30日(土)に誰でも参加可能なお花見を企画した。詳細情報はTwitterにて告知している。ファンは奮って参加しよう。
さらに4月12日には、新宿ネイキッドLOFTにて中川ホメオパシーとのトークイベントを敢行。詳細は特設サイトにてチェック。