コミックナタリー PowerPush - 四月は君の嘘
OPテーマ担当・コアラモード.とイシグロキョウヘイ監督がクロストーク 原作の魅力と、音楽の力で繋がる3人
「これはちょっとヤバいものに手を出してしまった」
あんにゅ でも、映像にするのが難しいだろうなというところ、例えば、微妙な感情の変化とかも、見事に表現されてますよね。しかも、ただ表現されているだけじゃなく、映像に吸い込まれてしまうくらい美しい。
イシグロ そこまで言ってもらえると、ホントうれしいです(笑)。まあ、僕は監督という形で作品に携わってはいますけど、アニメって多人数が関わって作るものなので、僕ひとりの努力というより、集まったスタッフが原作を愛してくれて、「この原作をより活かすためにはどうしたらいいんだろう?」という前のめりな姿勢で関わってくれているおかげですね。演奏の部分も、映像に落としこんでいくのは、やっぱり大変なんですよ。
あんにゅ 全部、音に動きが合ってますもんね。
イシグロ そうなんですよ。それらしい表現で、逃げようと思ったらできるんですけどね。でも、音楽シーンをガチンコで描けるような作品をアニメ化する機会というのも、あんまりないんです。だったらそういう機会を逃す手はないので、ガチンコで頑張ってみました。
あんにゅ 演奏の微妙な力具合はどうやって表現しているんですか?
イシグロ それはですね……例えば、弓を高速で動かしている瞬間の絵をアニメで描くとしたら、残像を描いておいたりするんです。その状態の絵を連続で動かすと、実際に絵が動いている速度よりも、高速に動いているように見えたりして。
あんにゅ へええー!
イシグロ 演奏に力が入っているところの絵も、作画の参考に撮影した演奏の映像を、そのまま絵に起こすだけだと、上手く行かないことの方が多いんです。若干のデフォルメ、例えば、本当はそんなに曲がらないんだけど、ちょっとだけしならせた弓の絵を1枚だけ入れてみる。その絵が画面に映る時間は、それこそ0.0X秒くらいなんですけど、それによって、力が入っているように見える。それがアニメの不思議なんですよね。止め絵の原画を見ると、変な絵があったりするので、「これで合っているのかな?」と思うかもしれないんですが、それを映像として流すと、すごく綺麗に動いている。
小幡 演奏シーンがこんなに本物の人間みたいなアニメというのは、僕は見たことがなかったです。
イシグロ ピアノのシーンは割と他の作品でもあるんですけど、バイオリンでここまでやっている作品は、本当にないと思いますね。バイオリンの演奏シーンがあるアニメでいちばん有名なのは、「耳をすませば」だと思うんですよ。「カントリーロード」を弾いてるシーン。
あんにゅ 名シーンですよね。
イシグロ でも、コンクールに出られるくらいの技量を持った人間が、ちゃんとバイオリンを演奏するシーンを描いたアニメは、僕はこれまで観たことないですね。だから「ガチンコでやるぞ」という風に決めたときに、覚悟はしてたんです。絶対に大変になると。でも、いざ映像作りの作業に入ってみると、あらためて「これはちょっとヤバいものに手を出してしまった」とは、正直思いましたね。「二度とない機会だぞ」と自分に言い聞かせながらがんばっています。……でも僕からすると、音楽で生計を立てているおふたりのほうが尊敬できますけどね。僕は音楽の道は諦めた人間なので。
アニメは音楽の知識を活かして面白いことができると思った
小幡 いつごろ方向転換されたんですか?
イシグロ 大学の4年です。バンドをやったり、インカレの音楽イベントサークルみたいなのに入ったり、そういうのを高校の1年生からずっとやってきたんです。でもやっぱり、まわりにすごい人もいっぱいいたし、自信が持てなかったんですね。今思うと、覚悟もなかったと思います。自分が好きな音楽が、60年代のサイケとかアングラっぽいの、ヴェルベット・アンダーグラウンドとかで、マジョリティではなかったんですよ。裸のラリーズとかを家で聴いてて、母ちゃんに「なんで壊れたコンポをずっと鳴らしてるの?」とか言われたりね(笑)。
小幡 たしかにそれは、マジョリティではないですね(笑)。
イシグロ その趣味をずっと突き通すには、覚悟が必要じゃないですか。それがなかった。ただ、アニメは音楽をはじめ、音をつけるものだから、絵をマジョリティに寄せた仕上がりにして、音の方で遊ぶみたいなことができたりするんですよ。例えば幾原邦彦監督の作品だと、よくそういうことをされている。アニメ業界に進んだのは、音楽の知識を活かして面白いことができると思ったからではありますね。
──コアラモード.のおふたりの、音楽を仕事にしていこうと思ったきっかけはどんなことだったんですか?
小幡 僕はそれこそ小学生のときの音楽の時間に、みんなで合奏するのが楽しいなというところから始まりまして。最初はドラムセットに座ったんですが、「これしかないな」と勝手に思ったというか。なんて言って、いま、ドラムをメインで叩いてないんですけど(笑)。ミュージシャンになりたいなと思った。そこからある意味で盲信的に、それ以外に考えられないと、自分を追い込んできて。その結果、こうやってこの場に出させていただいている。
イシグロ なるほど。小幡さんは僕より10歳くらい年下だから、小学校のときというと、90年代後半ですよね。
小幡 そうですね。あんまりみんな洋楽とか聴いてなくて。最初はL'Arc-en-Cielとか、SOPHIAとか、そういう邦楽のロックを聴いてました。
──V系が盛り上がっていた時期ですね。
小幡 そう、V系が好きでしたね。
イシグロ いやいや、若いつもりでいたけど、僕もだいぶ歳を重ねましたね(笑)。あんにゅさんは小幡さんよりもっと若いですもんね。
あんにゅ 92年生まれです。私はもともとミュージカルが好きで、中学校のときに演劇部に入ってミュージカルをやろうと思っていたんですけど、ミュージカルをまったくやらなくて……。しかも演劇部って人間関係とかとても難しいじゃないですか(笑)。
イシグロ あっはっはっは(笑)。わかる、わかる、わかります!
あんにゅ いろいろと、自分の実力とかも考えて、その道は止めたんですけど、でも音楽には興味があったので、高校で軽音楽部に入って。それからはもう、まっすぐ来ました。
イシグロ 最初からボーカルで?
あんにゅ ボーカルです。いろいろ試したんですけど、ボーカルだなと思いまして。それから曲を作るようになって。
イシグロ ちなみに、コアラモード.の作曲・作詞の分担は決まってるんですか?
小幡 一切決めてないんです。曲によって違いますね。
あんにゅ 「七色シンフォニー」はふたりで作りました。
小幡 シングルのカップリングは、2曲目があんにゅが作詞・作曲で、3曲目は僕が作りました。
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- コアラモード. メジャーデビューシングル「七色シンフォニー」2015年2月18日発売 / アリオラジャパン
- 期間生産限定盤 [CD+DVD] 1620円 / BVCL-630~1 / Amazon.co.jp
- 通常盤 [CD] 1080円 / BVCL-629 / Amazon.co.jp
CD収録曲
- 七色シンフォニー
- あのさ、あのね
- We Are Coalamode.!!
- 七色シンフォニー -TV size-(※期間生産限定盤のみ収録)
期間生産限定盤DVD収録内容
- ノンクレジットオープニング映像
- アニメ「四月は君の嘘」毎週木曜25:20~ フジテレビ・ノイタミナほかにて放送中 / ©新川直司・講談社 / 「四月は君の嘘」製作委員会
- アニメ「四月は君の嘘」
コアラモード.
ボーカルあんにゅとサウンドクリエイター小幡康裕からなる神奈川・横浜出身の男女2人組ユニット。2013年の結成以来、横浜を拠点に精力的なライブ活動を行い、徐々に注目を集める。2014年11月には自主制作の4曲入りシングル「メモリーズ」をリリース。2015年2月にフジテレビ系“ノイタミナ”アニメ「四月は君の嘘」第2クール オープニング・テーマ「七色シンフォニー」でメジャーデビューを果たす。
イシグロキョウヘイ
1980年4月2日生まれ。出身は神奈川県秦野市。2005年、アニメ制作会社・サンライズに入社。2009年に演出家に転身し、2011年に会社を辞めフリーになる。「となりの怪物くん」「団地ともお」などの演出を手がけ、2014年10月より「四月は君の嘘」で初監督を務める。