「かつて神だった獣たちへ」|バイオレンス好きの広瀬アリスが「かつ神」に惹かれる理由

「かつ神」は切ないエピソードが多い

──特に印象に残っているシーンやエピソードはありますか?

「かつて神だった獣たちへ」より、ハンクがかつての部下・ガルムと戦うシーン。

やっぱりシャールとお父さんの話は外せないです。ハンクに殺されたと思っていたお父さんが生きていて、しかも心を失ってシャールたちを攻撃してくる。最後は自分の手でお父さんの暴走を止めようとするシャールは、本当に強い子だなと思います。読んでいて一番感情移入ができるのはシャールなんですけど、でも自分がもしシャールの立場だったら、あんなに強くなれないですね。

──シャールがハンクの気持ちを理解するきっかけにもなるエピソードですよね。

個人的に好きなのは、ハンクがかつての部下・ガルムと戦うエピソードですね。ハンクは狼だし、ガルムは犬の形をした擬神兵なので、狼と犬が延々戦っているっていう、ちょっと不思議な画ではあるんですが(笑)。あの戦いは熱かった! 基本的にハンクは強いので、圧勝してしまうことのほうが多かったと思うんですが、ガルムとは対等に戦っているのがよかったです。ハンクがかつての仲間である擬神兵と戦うシーンは毎回ぐっと来ます。

──擬神兵それぞれにエピソードがありますからね。

心が失くなったとはいえ、擬神兵たち1人ひとりに人間だった頃のバックボーンはあるので、それを思うとすごく切ないんですよ。1巻のベヒモスのエピソードも印象に残っています。人間の時の記憶がどれぐらい残っているのか分からないけど「海が見たい」って願ってボロボロになりながら海を目指す姿は泣けましたね。特に海の手前で力尽きて倒れるシーン。あとちょっとで海っていうところで、たどり着けないんですよ。最後の最後まで自分の意志を貫き通そうとするところ、よかったなあ……。あとは3巻に登場するセイレーンの話も好きです。

「かつて神だった獣たちへ」より、ベヒモスが海を目指すシーン。

──切ないエピソードが多いですよね。擬神兵であるハンクが、元仲間の擬神兵を殺していく話ですし。

そうなんですよね。擬神兵の過去のエピソードや回想も丁寧に描かれるので、それを知ってしまうと余計に戦いがつらいんです。擬神兵たちも、ある意味被害者なのかもしれない。読んでいると、だんだん何が正義なのかわからなくなってきて、擬神兵を倒していくことが本当に正義なのかとか、考えてしまいます。

一番最初に読んだマンガは「ツルモク独身寮」

──では広瀬さんのマンガ歴についてもお伺いしたいのですが、マンガは昔からお好きだったんでしょうか。

子供の頃から読んでました。最初に読んだマンガは、窪之内英策さんの「ツルモク独身寮」でした。小学校4年生ぐらいの頃、父が全巻買って帰ってきたんです。それを私も一緒になって読んでいて。

──小学4年生に「ツルモク独身寮」って、難しいような……。

広瀬アリス

多分、ちゃんと内容を理解して読んでいたわけではなかったと思います(笑)。でも「マンガって面白いな」って思ったきっかけが「ツルモク」だったんです。今思えば、小学生が読むには大人っぽい話だったと思うんですけど。

──少女マンガや恋愛ものはあまり読んでこなかったんですか。

中学生の頃は読んでました。やっぱり周りの友達とか女の子の同級生はラブコメとかを読んでましたし。でも面白いことは面白いんですけど、なんか私が求めているものはこれじゃないな、と(笑)。その頃、ひとつ上の兄が友達から「ドラゴンボール」とか「シュート!」とか、バトルもの、スポーツものをよく借りていて。私もそれを一緒に読むようになってから、どんどん青年マンガにシフトしていって。「GANTZ」とか「彼岸島」あたりを読むようになってからは、グロテスクなものに完全にハマりました(笑)。

──バラエティ番組にご出演された際、広瀬さんの好きなマンガが、女優さんとは思えないラインナップでかなり話題になってましたよね(笑)。

そうなんですよ……。なんか好きなマンガの話をすると「病んでるね」とか「それヤバいよ」とか、すぐ言われるんですけど(笑)。でも私、全然そんなことないんですよ。内容がエグいから読んでいるわけじゃなくて、純粋に作品の世界観が面白いのと、こんなマンガを作ってしまうマンガ家さんの頭の中ってすごいなって思うんです。

──エグいシーンは、読んでいて抵抗はないですか。

広瀬アリス

全然ないです。テンション上がります(笑)。でも唯一、本田真吾さんの「切子」は怖かったですね……。家の本棚にありますけど、読み返すのにはかなり勇気がいります。ちょっとしたトラウマ(笑)。あ、でも本田さんの「ハカイジュウ」は大好きです!

──では、最近読んで面白かった作品はありますか?

最近読んだ中だと「神さまの言うとおり」の金城宗幸さんが原作の「ジャガーン」が来てます。電車の中で人がバーって死んでいくシーンがあるんですが、そのインパクトがすごくて。渋谷のカフェで読みながら「うわー!」って、ひとりで大興奮してました(笑)。

めいびい「かつて神だった獣たちへ⑥」
発売中 / 講談社
めいびい「かつて神だった獣たちへ⑥」

コミック 463円

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Kindle版 432円

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クロード率いる擬神兵討伐部隊「クーデグラース」と共闘することを決めたハンク。次なる標的は、ボルドクリーク要塞を守る不死身の獣・ケンタウロス。その砦では、クロードの兄であり、ハンクの宿敵・ケインの姿も目撃されており……。ケンタウロス討伐が目的のクーデグラースとハンクだったが、任務はその域を超え、政府軍と共に要塞攻略戦に加わることに。ついに「戦争」が始まる──!

「かつて神だった獣たちへ」6巻発売記念めいびいサイン会

日時:2017年9月16日(土)13:00~
会場:SHIBUYA TSUTAYA B1Fコミック売場
参加方法:9月8日10時より、SHIBUYA TSUTAYA店頭にて「かつて神だった獣たちへ」6巻を購入した先着60名に整理券を配布。整理券は定員に達し次第終了。

広瀬アリス(ヒロセアリス)
1994年12月11日生まれ。静岡県出身。フォスタープラス所属。2008年に女優デビュー。2009年に女性ファッション誌・セブンティーン(集英社)の専属モデルに。ドラマ「釣りバカ日誌~新入社員 浜崎伝助~」の小林みち子役、映画「新宿スワンⅡ」小沢マユミ役など出演作多数。2017年10月2日より放送のNHK連続ドラマ小説「わろてんか」にリリコ役で出演。また2017年11月3日公開の映画「氷菓」では、千反田える役として主演を務める。
めいびい
男性の2人組。2005年にコミック夢雅(桜桃書房)で商業誌デビュー。代表作に「黄昏乙女×アムネジア」「結婚指輪物語」「かつて神だった獣たちへ」など。2014年3月より月刊ビッグガンガン(スクウェア・エニックス)にて「結婚指輪物語」を、2014年6月より別冊少年マガジン(講談社)にて「かつて神だった獣たちへ」を連載中。

衣装 / ワンピース(カミシマ チナミ イエロー/KAMISHIMA CHINAMI 青山店:03-3406-9210)、
イヤリング(ソムニウム/ソムニウム:03-3614-1102)、
サンダル(FLAG-J/FLAG-J渋谷109店:03-3477-5052)