コミックナタリー Power Push - カサリンチュ×小山宙哉
「New World」へ踏み出してからの「あと一歩」
タツヒロ(カサリンチュ)、小山宙哉、コウスケ(カサリンチュ)
新しい世界へ踏み出して「やっぱり無理なのかな」って思った人に聴いてほしい(タツヒロ)
──次に27巻のテーマ曲である「あと一歩」について伺いたいんですが、まず27巻を読んだ感想としてはどうでした?
27巻あらすじ
コウスケ 「宇宙兄弟」ってどの巻でもそうなんですけど、自分に投影できたり、誰かに投影できたり、すごく身近に感じつつも感動できるんですよね。目標とか夢とか、何かを突き詰めるというのは、そこまで行くのが絶対大変なのはわかりますから。特に27巻は、小山さんのブログとかで「ここをずっと描きたかった」という思いとかも知ってましたし。
タツヒロ 僕はすごく感動して……もちろん読んでもらうのが一番いいんですけど、「この感動を僕らの曲で伝えられたら素敵なことだな」と思いました。せりかさんが目標に向かっていく意識とかは、自分たちに重ねたりもしますし。カサリンチュとしてもっと上の景色やステージがある中で、まだまだ辿り着けてないところがたくさんありますからね。あと、せりかさんがネットで叩かれるあのシーンは苦しかったですねー。マンガを投げたくなるぐらい。
──そこで昔からせりかさんを知ってる人たちは信じててくれて、せりかさんががんばるというお話でした。
タツヒロ そうですね、そこに感動しました。僕らにもデビュー当時から応援してくれる人が各地にいらっしゃるんで、そういう人の顔を思い浮かべて「がんばろう」って。
──では27巻を読んで制作された「あと一歩」を作るにあたって、気を付けた点などはありますか?
タツヒロ 27巻までのストーリー……せりかさんがこれまで歩んできた道とか、お父さんとのこととか、書きたいことがいっぱいあって、でも全部書いて「宇宙兄弟」に寄り過ぎちゃうと良くないなと思いました。「宇宙兄弟」を知らない人にも伝わりやすい曲にもしたいなという気持ちがあるので、そういったバランスを考えながら作っていった感じですね。とはいえ「宇宙兄弟」のことは大好きなので、そこからのフレーズがたくさん出てきます。知らない人にも伝わるんじゃないかなと思ったフレーズをちりばめてますね。
──作中の「せりかさんの代わりは誰にもできない」というフレーズが、「あなたの代わりは誰にもできない」という歌詞になってたり、普遍的な歌詞に直されてますよね。知らない人にも伝わるし、知ってたらもっとグッとくるという。
タツヒロ そうですね、27巻を読んで作った曲ではあるんですけど、「宇宙兄弟」ファンだけじゃなく、がんばってるすべての人たちに聴いてほしいなってのは思ってます。「New World」は新しい世界に一歩踏み出す歌ですけど、でも新しい一歩を踏み出しつつ、「踏み出してみたけどやっぱしんどいな、無理なのかな」ってときもきっとあると思うんですよ。僕たちもその最中だと思うし。だからそこでまた「あと一歩」ってところに繋がるといいなと。
カサリンチュの音楽を聴く人が増える世の中になってほしい(小山)
──なるほど、「New World」と「あと一歩」は繋がってるわけですね。
小山 カサリンチュの曲全部に言えることかもしれないですけど、「あと一歩」は曲から来る高揚感が凄くて、前向きになれるんですよね。歌詞だけじゃなく、曲全体からポジティブになれる強さみたいなのを感じます。だからいろんな、働いてる人とかに聴いてほしいですよ。
タツヒロ ありがとうございます。やっぱり「あと一歩」って曲はアルバムの中で重要な曲だと僕たちは思ってるんでうれしいです。繰り返しになりますけど、やりたいこととか夢に向かってる人たちに聴いてほしいですね。
小山 ホントにすごくいい曲ですよ。「New World」のときはアニメのエンディングだったこともあって、ムッタと日々人の視点というか、“少年時代の夢”感が曲にあったんです。だけど「あと一歩」はせりかがテーマということもあって、曲全体に女性らしさがあるように聞こえました。イントロから「シャララララン」という綺麗な音が聴こえるんですけど、それで「女性に宛てた曲」みたいな感じがしますし、「考えて作られてるな」って。全然、男でも聴けるいい曲ですけど、イントロのピアノも印象的ですし、サビのメロディもすごく爽やかで、好きなところがいっぱいありますね。
タツヒロ いやー、ここまでおっしゃっていただけるとうれしいですね。
小山 僕はカサリンチュの曲は本物だと思ってますから。タツヒロさんの声は風景が見えるんですよね。そういう人ってなかなかいないと思うし、多くの人に伝わってほしいです。こういう音楽を聴く人が増える世の中になってほしいですね。
──大絶賛ですね。
小山 おふたりにはもっとがんばっていただいて、テレビとかでも観たいですよ。大きいこと言うと年末の紅白(歌合戦)とかでも。別にそれがゴールではないですけど、それぐらい日本の人たちに知られてほしいなと。
タツヒロ ここまでおっしゃっていただけると、音楽やっててよかったなと思いますね……。けど本当に、「あと一歩」は僕らの新しいスタートでもありますし、小山さんに「よかったね」って言ってもらえるように、今まで以上にがんばります。
コウスケ カサリンチュとしてずっと歌っていける曲を作るきっかけを作ってくれたので、小山さんには感謝しかないです。ここからは夢中になって、できることをやるだけですね。そんな曲を作らせてくれてありがたいです。これを全国に届けていきたいですね。
- カサリンチュ 3rdアルバム「カサリズム3」 / 2016年5月18日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3800円 / ESCL-4561~2
- 通常盤 [CD] 3200円 / ESCL-4563
CD収録曲
- たいせつなひと
- メリーゴーランド feat. NANAE & MAIKO(from 7!!)
- 最近彼女が出来まして
- ハッピーエンド
- new energy
- 風
- 故郷(ふるさと)
- Interlude
- ナイスダンス
- アイラブユー
- タイムカプセル
- あなたの物語
- さあいこう
- やまおりたにおり
- あと一歩
初回限定盤DVD収録内容
- ハッピーエンド MusicVideo
- 故郷 MusicVideo
- 風 MusicVideo
- たいせつなひとMusic Video
- カサリズム3楽曲解説
カサリンチュ
ボーカル、アコースティックギター担当のタツヒロ(写真左)と、ヒューマンビートボックス、ボーカル、アコースティックギター担当のコウスケ(写真右)によるユニット。鹿児島県奄美大島笠利町在住で、ユニット名は「笠利の人」を意味する。高校の同級生だった2人は東京での生活を経て、一度は島に帰郷するが、友人の結婚式をきっかけにユニットを結成。ともに2013年までは奄美大島で仕事をしながら音楽活動を続ける。2007年、奄美群島限定でミニアルバム「kasarinchu」をリリースし、1000枚を超えるセールスを記録。2010年、ミニアルバム「感謝」にてメジャーデビュー。2012年9月に1stアルバム「カサリズム」を発表。2013年11月、アニメ「宇宙兄弟」のエンディングテーマ「NewWorld」をリリースした。2016年6月より、全国ツアー「カサリズム3」に挑む。
- カサリンチュ 全国ライブツアー2016「カサリズム3」
- 2016年6月4日(土)大阪府 UMEDA CLUB QUATTRO
- 2016年6月5日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
- 2016年6月25日(土)岡山県 MO:GLA
- 2016年6月26日(日)福岡県 Gate's7
- 2016年7月3日(日)愛知県 名古屋SPADE BOX
- 2016年7月10日(日)北海道 cube garden
- 2016年7月24日(日)宮城県 仙台Hook
- 2016年8月11日(木)富山県 富山県民小劇場オルビス
- 2016年8月13日(土)東京都 TSUTAYA O-EAST
「宇宙兄弟」27巻&最新28巻発売中!
- 小山宙哉「宇宙兄弟(27)」 / 講談社
- 617円
- Kindle版 / 540円
父の命を奪ったALSを治す薬を作るため、ISSで実験を繰り返すせりかだが、思うような成果が出ない。そんな時、せりかに個人的な恨みを持つ人間が、ネット上に「毒薬」をばらまいた。悪意は一瞬で拡散し、地球からの激しいバッシングは、せりか本人の耳にまで届いてしまう。そして告げられる実験中止命令。追い詰められたせりかの周りに、水滴が舞った──。
- 小山宙哉「宇宙兄弟(28)」 / 講談社
- 617円
- Kindle版 / 540円
せりかたちのALS実験が成功したという知らせに喜びを噛み締めながら、ジョーカーズはシャロン月面天文台を建設するため月の裏側へ向かう。予想外のトラブル、姿を消す仲間……。六太(ムッタ)は自らの足で人類未踏の闇へと踏み出していく。
小山宙哉(コヤマチュウヤ)
1978年京都生まれ。初めての持ち込み作品「ジジジイ」 で第14回マンガオープン審査委員賞(わたせせいぞう賞)を受賞。「ハルジャン」「ジジジイ-GGG-」などのヒットを経て、2007年12月からモーニング(講談社)で代表作「宇宙兄弟」の連載をスタートさせる。同作はアニメ化、実写化を果たしたほか、第56回小学館漫画賞一般向け部門、第35回講談社漫画賞一般部門、2014年の手塚治虫文化賞読者賞を受賞している。