モーニング×コミックナタリー PowerPush - 「神の雫」×DEEN
樹林伸(亜樹直)と池森秀一の作詞共作ソング 「心から君が好き~マリアージュ~」発売記念
ワインも音楽もオーソドックスなものだけが100年愛される
──先日、樹林さんが選んだワインを飲みながらDEENの生演奏を聴くという新曲発表会を開催されていましたが、ワインと音楽の“マリアージュ”については、どのようにお考えですか?
樹林 もう、最高ですよね。やっぱり、音楽が聴こえる中だと、ワインの香りが変わって感じるんです。曲によっても変わって感じるし……もう“マリアージュ”って、こういうことだよねっていう。で、そのとき出してもらったワインも、良いものばっかりで……それはもう、本当に時代を超えて、語り継がれるようなものばっかりだったんです。そういう意味では、DEENの音楽も、時代を超えて語り継がれるものになって欲しいし、きっとなるだろうって、僕は思っているんですよね。
池森 恐縮です(笑)。そう、「神の雫」の中に、いろんなお店が出て来たり、物語があったり、アーティストが出て来たりするじゃないですか? 実は、それをやりたかったんですよね。みなさんがワインを飲んでいる前で、僕らが生で音楽を演奏しているっていう。それを今回、アイディアとして出させてもらって……。
樹林 ワインって、まわりに良い香りを届けてくれる良さがあって……音楽も、みんなに届くものじゃないですか? だから、“マリアージュ”っていう言葉が、すごく合うんですよね。こういう楽しみを、もっと音楽好きの人にも……家で音楽をかけながらワインを楽しんでいる人って、たくさんいると思うんですけど、今度は音楽好きな人に、ワインの良さを届けたいなっていう気持ちはありますね。
池森 まさしく“大人の楽しみ”っていう感じですよね。そう、社会人になるのを機に、まったく音楽を聴かなくなったとかっていう人、すごい多いじゃないですか? マンガを読まなくなったりとか。それってやっぱり、大人が楽しめるものが少ないからなのかなって、僕は思っていて。そういう意味では本当に、「神の雫」は大人が楽しめるアイテムだと思うんですよね。
樹林 DEENのファンって、すごく大人の方が多いじゃないですか? やっぱり、大人の聴ける音楽って、まだまだ日本では少ないと思うんです。アメリカとかだと、そういうものが結構いっぱいあると思うんだけど……まあ、10年遅れで大体来ますから、日本もこれからそういう音楽がたくさん出て来るのかなって、僕は思っているんですよね。
──あと、ワインと音楽の共通点として、どちらも“記憶を呼び覚ますもの”っていうのがありますよね?
樹林 それは、ものすごくあると思いますね。たとえば、DEENの音楽っていうのは、もうみんなが知っているわけじゃないですか? 絶対どこかで耳にしているわけで……僕も普通にCDを持っていますから。で、音楽もワインもそうなんですけど、自分がすごい楽しかった瞬間に、たまたまそれがあったりすると、それを飲んだり聴いたりした瞬間に、ぶわーっといろいろ思い出すじゃないですか?
池森 そうなんですよね。
樹林 あれがやっぱり、何とも言えないんですよね(笑)。でも、そういうのは、長くやっている人じゃないと無理ですし、確かな技術の裏付けがないとダメなんですよね。今のDEENのライブを観ていていつも思うんですけど、演奏がとにかく上手いんです。そういう技術の裏付けがあるからこそ残るわけで……ワインもそうなんですよね。一時の流行で作ったものは、やっぱり廃れて行くんだけど、オーソドックなことをずっとやっているものは、100年経っても、やっぱり飲まれるんですよね。
コラボ第2弾はその名もズバリ「神の雫」
──樹林さんとDEENがコラボすると聞いて、最初はちょっと意外と思いましたが、こうして話を聞いていると、ある種納得の行く組み合わせだったんですね。
樹林 だからきっと、近い感性を持っていたんだと思うんですよね。最初に会って話していて、すごいそう思ったし……もう、この人とだったら、何かちょっとコラボするのも面白いかもしれないなって。
池森 光栄です。僕はもう、「神の雫」の大ファンなので(笑)。
──そう、今回のコラボの後に、実はその第2弾となるコラボも、現在制作中とか……。
池森 実は、8月にリリースする予定のアルバムの曲を、1曲樹林さんに作詞してもらっていて……。
樹林 その名もズバリ「神の雫」ですからね。
池森 そう、「神の雫」っていうタイトルの曲を今作っていて……ちょっともう、信じられないですよね。「神の雫」っていうタイトルの曲が、僕らのアルバムに入るっていう。
樹林 そういうのは、後にも先にも、もう無いですから(笑)。
池森 や、すごい話ですよ。で、樹林さんの書かれた歌詞っていうのが、マンガの本編には載っていない、アナザーストーリーみたいな感じになっていて……「神の雫」読者のみなさんは、どうぞお楽しみにっていう感じですね。
樹林 うん、絶対共感してくれると思いますよ。ホントに良い曲ですから。
時代はどんどん今、シンプルな方向に行っている
──では、そちらも楽しみにしつつ、最後にお互いの今後に期待することなどを。
池森 やっぱり、樹林さんには、また美味しいワインのほうを……。
樹林 (笑)。
池森 初めて食事会をしたときに、樹林さんが“使徒”のワインを持って来られて……「えっ!」っていう。「これ、こないだ漫画に出て来たワインだよ!」って。
樹林 僕、溜めておかないほうなんですよ。もう、ワインをガーンって出しちゃうっていう(笑)。
──(笑)。漫画のほうもそろそろ佳境に入って来ていますが、そちらに関してはいかがですか?
池森 や、そこらへんはもう、作品が上がって来たときのお楽しみなので……敢えて樹林さんにインタビューして知ろうとは、全然思わないですね。もう、僕が続きをどれだけ楽しみにしているかっていう。「神の雫」を読むときは、何も予定が無い日を選んで……今日は歌詞も書かなくていいし、練習も無いし、もう何も無いっていうときに、自分の大好きな空間で、好きな音楽をかけながら、じっくり読んで。そして、お腹を空かしたタイミングで、料理とワインを楽しむんです。
樹林 最高じゃないですか(笑)。
池森 もう、至福のときですね(笑)。
──一方、DEENのみなさんは、来年のデビュー満20周年に向けて、現在いろいろ準備中とのことですが。
樹林 や、もうホントに、シンプルな音楽をやって欲しいなっていう……それが僕、すごく良いなと思っているんですよね。ともすると、時代の流れを読み違えて、コテコテのほうに行く人もいると思うんですけど、分厚いものを作るのって、実はすごい簡単なんですよね。で、今のDEENは、やっぱりシンプルなほうに向かっていると、僕は思っていて……。
──現在、DEENが行っている“Triangle Project”(ゲストミュージシャンを入れず、DEENの3人のみで音源を制作し、ライブを行うプロジェクト)っていうのは、まさにそういうことですよね。
樹林 そうなんですよね。実は、ワインも同じで……いろんなことをいじりまわしてやっていた時代は確かにあるんですけど、どんどん今、シンプルな方向に行っているんです。テロワールを大事にして、ただシンプルに葡萄を作るっていう。そういうときに、何か本質みたいなものが見えて来たりするんですよね。で、僕はやっぱり音楽も、DEENをはじめとして、そういう方向に行って欲しいなって思っているんですよね。
池森 DEENっていうバンドは、あんまりテレビに出たりしないというか、そういうのとは違う環境でずっと音楽をやって来ていて。やっぱり“もの作り”に対する意識がみんな高いというか、そういう意識をすごく大事に思って、やって来ているんですよね。だから、今、3人だけで音を鳴らしているっていうことも含めて、そういう部分を、これからもっと見せて行きたいなって思っています。
──なるほど。今日は長い時間、本当にありがとうございました。
池森 また是非、ライブにいらしてください(笑)。
樹林 はい、喜んで(笑)。
DEEN ニューシングル「心から君が好き~マリアージュ~(初回限定盤)」2012年6月27日発売 / Ariola Japan
収録曲
- 心から君が好き~マリアージュ~
- 雨がいつか上がるように
- Hello
- 心から君が好き~マリアージュ~(off vocal version)
- 雨がいつか上がるように(off vocal version)
- Hello(off vocal version)
初回限定版 特典CD収録曲
- Re-Birth
- Lost time
- ROUTE 466
- 終章
- NIGHT CRUISIN’
- 太陽と花びら
- ユートピアは見えてるのに
- magic
- 空もハレルヤ
DEEN(でぃーん)
1993年に池森秀一(Vo)と山根公路(Key)を中心に結成された音楽ユニット。上杉昇(ex.WANDS)作詞、織田哲郎作曲による「このまま君だけを奪い去りたい」でメジャーデビューを果たす。同曲はCMタイアップもあり、新人にもかかわらずミリオンヒットを記録。翌年1994年にも「瞳そらさないで」がミリオンを達成し、1stアルバム「DEEN」は150万枚を超える売り上げを記録。メンバーの加入・脱退を経て、現在は池森・山根・田川伸治(G)の3人で活動中。2004年には韓国での日本音楽全面解禁に伴い、日本人として初となるワンマンライブを敢行し成功を収めている。
樹林伸(きばやししん)
(亜樹直 あぎただし)
「神の雫」の原作を亜樹直の名で手がけるほか、多くのマンガ原作を手がける。代表作多数。最近はマンガ原作に限らず、小説・脚本・作詞と多くのフィールドに活動の幅を広げ、マルチクリエイターとして活躍中。