オタクとしてうれしかったことをアイドルとしてやってる
──末吉さんはもともとアイドルオタクで、その後実際にアイドルになられたわけですが、オタクとアイドル、それぞれの活動の一番楽しいところってどこでしょうか。
僕がオタ活してて一番好きな瞬間は、ステージに推しが登場するときですね。「おった!」っていうあの瞬間。推しを応援していて一番好きな瞬間なので、やっぱり現場が好きです。現場に行かないと味わえないので。
──何回見てもいつも思います?
思います。初めてのときが一番ですけど、やっぱり何回行っても思いますね。会場の匂いとか、周りの人たちの高揚感、オープニングの音が鳴って、ガンガン胸に響いてくる感じからの推しの登場……。オタ活の中でピークですね。
──ではアイドルの立場で感じる楽しい瞬間というと?
いろいろありますけど、例えばライブしてるときにファンの方にレスするじゃないですか。それをめっちゃ喜んでくれたり、隣のオタクの子と一緒にうわーって盛り上がってるのを見るのはすごくうれしいですね。僕はレスしたあと、パフォーマンスしてるときも横目でその余韻を見てるんで(笑)。友達に報告してるとか、そういうところまで見ちゃう。
──(笑)。オタクからすると、どこまで見られてるのかわからないなと思ってしまいますが。
割と見てますよ。ファンサの仕方は人によると思いますけど、僕は完全に狙い撃ちで、周りの人が勘違いして喜んでることもあるけど、それはそれで幸せにしてるからいいかなって思ってます(笑)。でもどちらかというと「これアタシかな?」って信じられてない人のほうが多くて。僕はそんな中途半端な状態で帰ってほしくないから、「もしかしてアタシ?」ってなってる人を見ると、「あなたです!」ってちゃんとアピールして、むこうが「きゃー」ってなるぐらいまでしつこめにやります(笑)。
──それはすごくうれしいでしょうね。
「アタシかなあ?」って感じで帰ってほしくない。「アタシでした!」って自信を持って帰ってほしい(笑)。
──(笑)。逆に困ったことや驚いたことは?
頑なに僕のことを見ない人がいるんですよ。それはいいんです、推しを見てるから仕方ないし。でも僕はそういう人も取り込んでいきたいと思ってるから、そういう人を見つけるとめっちゃしつこく見るんです(笑)。前に、自分のソロ曲のときに最前のどセンにいる人にめっちゃアピールしたんです。さすがにソロだとみんなと目が合うので。そしたら隣のオタクに向かって「なんか見られてるんだけど」「気まず……」みたいなことを言ってて、「ふざけんな」と思ったことはありました(笑)。
──そんなことがあるんですね(笑)。
会話が聞こえるわけじゃないですけど、オタクの方たちってやっぱり表情豊かだからわかるんですよね。
──ではオタクをやっててよかったこと、アイドルとして役に立ったことはありますか。
ファンサとかは、やっぱりオタクのときに自分を見てもらえたらうれしかったから、それをやってる部分はありますね。あと僕、個人的に出ハケをよく見てるんですよ。ステージ降りて楽屋のほうに移動していくところとか、暗転したときの移動とかを双眼鏡で見るのが好きで。そういうところって割と素が出る人もいるから。だから僕も見られてるのを意識してますね。自然っぽく微笑んでみたり……(笑)。オタクが細かいところまで見てるのも知ってるから、そこはオタクしててよかったのかなと。いや、もう全部言っちゃってるからよいか悪いかで言うと、結果よくないような気がするけど(笑)。
──(笑)。
でもライブ中もそうなんですよね。メンバー同士で笑ってるときとかも、ステージには僕の感情があんまりないというか、「ここ、すごくいいところだから抜いてね」とか「はい今見て、絶対見て!」みたいなことを思いながらやっちゃう。
──客席でオタクとしての自分がチェックしてるみたいな。
うん、そんな感じ。それぐらいオタクの要素のほうが濃いですね。YouTubeとかでしゃべってても、オタクの自分なのかアイドルの自分なのかごっちゃになっちゃうんで(笑)。
くっそリアル。くっそリアルです
──「神クズ☆アイドル」の一番の魅力はどんなところにあると思いますか?
一番は普通にアイドルを推してるだけでは見えないところが見れることですね。アイドルって、メイキングが出たりドキュメンタリーが出たりして、けっこう裏側も見れるんですけど、「神クズ☆アイドル」の場合、それに加えてガチの裏側も見れるから、そこがすごく新鮮で面白かった。プライベートとか事務所内のやり取りとかまで見れることってないですからね。アイドルの裏側も知りたいと思ってるオタクって、けっこういると思うんですけど、このマンガに詰まっていると思いました。
──アイドルである末吉さんがそう感じるぐらい、描かれてる内容がリアルってことですかね?
くっそリアル。くっそリアルです。だからオタクの人もそうだし、アイドルの人もそうだし、業界の人が見ても面白いと思う。
──それはすごいですね。
あとZINGSは裏のメイキングも入れて動画上げたら伸びるタイプだと思うんですよ。裏も尊いタイプ。だからメイキング入れたいですね、ドキュメンタリーやってほしい。
──確かに(笑)。今後ぜひそういったエピソードも読みたいですね。
絶対入れてほしい、メイキング。
──では最後に、本作をまだ読んだことのない人におすすめするとしたら?
身の回りのアイドルには、これ読んだらしんどいときもがんばれるよっておすすめしますね。
──読んでるとそんな気持ちになるんですか?
なります! 確実にアイドルモチベーションあがります。モチベーション下がってるアイドルの子に読ませたらモチベーション上がると思う。
──どんな部分でモチベーションがあがったんでしょうか。
読んでいて、やっぱりアイドルの仕事って素敵だなって思ったんです。アイドルの描写もそうですけど、オタクの子の描写もたくさんあるじゃないですか。オタク同士で語り合ってる姿とか、現場で話してる姿を見ることって、普通のアイドルはなかなかないと思うんですけど、「神クズ☆アイドル」を読めばそれが見れる。しかもめちゃくちゃリアル。だから、オタクの人がこういうふうに思ってくれるんだなって思いながら読むとがんばれるし、モチベーションがあがります。
──すごいですね。
オタクの方たちに対しては、もう間違いなく面白いから読んでほしいですね。だって自分がここにいるんだもん(笑)。僕がオタクの子に紹介するなら「これ読んでみ、あんたいるよ」って言います。しかもオタクって共感を大事にするじゃないですか。共感っていう意味でも、アイドルの裏側を見れるっていう意味でも楽しめると思います。
プロフィール
末吉9太郎(スエヨシキュウタロウ)
1993年7月28日生まれ、千葉県出身。5人組ボーイズグループ・CUBERSのリーダー。2019年つんく♂作詞・作曲の「メジャーボーイ」でキングレコードよりメジャーデビューを果たす。グループ活動に加え、個人ではアイドルのオタクの日常を再現した「アイドルオタクあるある」動画を投稿しており、総再生回数は5億回を超える。