ナタリー PowerPush - じょしらく
ゆるカワ落語ガールズの楽屋劇がTVアニメ化 原作担当の久米田康治が他人事のように語る
落語に詳しくないから、ボロが出ないように楽屋の話だけ
──先ほど「落語マンガではない」とおっしゃったように、マンガには落語を演じるシーンはまったくと言っていいほど出てきません。それなのに、なぜ落語、落語家という題材を選ばれたのでしょう。
それは、作中にも「M浦プロデューサー」の名で出てくる、元マガジン副編集長様がそう決めたからです。あの人、自分が落語を好きなものだから「落語で何か描いてよ」って。
──M浦さんは「絶望先生」にも度々登場されましたので、久米田ファンにとっては馴染みのある方ですね。作中では鬼のようなイカツイ風貌の。
そう。僕はそんなに落語に詳しくないから、ボロが出ないように楽屋の話だけにしてごまかしてるんです。もともとM浦さんは、僕に落語を書かせて、それを誰かに寄席で上演してもらうという、リアルのイベントがやりたかったみたいなんですよ。イベントを実現させるための材料として、「(落語の)マンガでも描いといて」みたいな物言いで(笑)。だから僕としても「アニメ化もイベントのためのおまけでしょ」ぐらいの気持ちで……。
──どこか他人事、という意味がだんだんわかってきました。「じょしらく」というタイトルも、近年流行のいわゆる"4文字タイトル"で、久米田作品にしては意外に思いましたが、ひょっとしてこれも……。
ええ、M浦さんが決めました。「考えてください」って言われたんで僕も10個ぐらい真面目に考えたんですけど、結局M浦さんは自分の案を選んだの。その時点で、この作品に対する僕のスタンスは決まりました。あまり深入りしてはいけないんだな、と(笑)。だから僕は「フキダシ係」って肩書きにしたんです。
──だいたい諸々の事情がわかってまいりました(笑)。
久米田康治とヤスじゃ文字数でいえば5対2ですよ?
──作画のヤスさんは「とらドラ!」の挿絵などで知られる、イラストレーター出身の作家さんです。ヤスさんとは、どのようにしてコンビを組むに至ったのでしょう。
それももちろん「作られたユニット」ですから、M浦プロデューサーが決めたんです。僕からはどういう人がいいとか、希望は出していません。
──ヤスさんに決まったと聞いたときはいかがでしたか。
最初は存じ上げていなくて、ずいぶん短い名前の人だなー、と。
──文字数ですか……。
や、正直、久米田康治とヤスじゃ字数の差が大きいから、名前が並ぶと僕がしゃしゃり出てるみたいで嫌なんですよね。だから僕の名前は文字のサイズを下げてくれっていつも言ってるんですよ。だって文字数でいえば5対2ですよ? これじゃなんか、ギャラも5対2で僕が持ってってるみたいじゃないですか。
──そんなこと誰も思わないですから。作業についてお聞きしたいんですが、原稿ができるまでにヤスさんとはどのようなやりとりをされてますか?
そんなにやりとりすることはないですよね……。いや、仲悪いとかじゃないんですよ。仕事の話をしないだけで(笑)。なんかマンガでは主張を譲り合ってる感じがしますね。お互い「そこはお任せで」「いやそちらこそ」みたいな。
──でも、久米田さんのほうがずいぶん先輩ですよね。リードする部分もあったのでは。
あんまり難易度の高いコマができてしまわないように、とは意識しましたね。ヤス君はやっぱりマンガ家というよりはイラストレーターさんなので、「描きやすい可愛い絵」をなるべく描かせてあげたくて、それもあって密室劇にしたんです。でもそれが裏目に出て、逆に難しいアングルができてしまったかもって少し反省してます。
ほんとうは女の子同士のイヤーな感じを出したかった
──「じょしらく」の最大の魅力と言えるのが、個性的な5人の女子落語家のキャラクターです。この5人はどのように形作られていったのでしょう。
まずヤス君に何パターンも可愛い女の子を描いてもらって、その中から5人に絞ったという流れですね。
──完全にビジュアル先行で作品を立ち上げていったんですね。
そうです。僕は絵を見てから「この人はこういうキャラにしよう」と性格や生い立ちを肉付けしていって、最後に名前を決めました。
──登場人物が女性キャラだけという設定については、何か狙いがあったのでしょうか。
ほんとうは女の子同士のイヤーな感じを出せればいいと思ってました。給湯室での会話、みたいな。でも結局のところ僕は女の子ではないので、そのへんの描写はうまく出せているかどうか……。
──キービジュアルでも扉絵でも、センターにはたいてい魔梨威が描かれていますが、久米田さんは単行本3巻の巻末で「主役は手寅です」とコメントされています。なぜ手寅が主役なのでしょうか。
手寅はあんまり属性がないという、要は戦隊物でいうところの「赤」なんです。強い主役にしちゃうと大人数の場合はなかなかまとまらないし、その人の話になっちゃうので。主役は無属性ながらも「こいつには何かあるな」みたいな感じにしておくのが、いちばん物語を作りやすいのかなって。
──それは最初から決めていたのですか?
誰が主役とかは言わずに始めましたけど、感覚的にはこの子(が主役)だなっていうのはありましたね。
──でもよくよく見返してみると、その手寅だけが、1話目にはいないので驚きました。
そうでしたっけ(笑)。まあ、第1話に主役が出てこない話なんていくらでもありますから。
──ちなみにお気に入りのキャラは?
えーと……、これから考えます(笑)。どれが好きとか考えたことなかったな……。なんだか急に告白されちゃって「1日考えさせてくれ」みたいな気持ちになってます、いま。
久米田康治×ヤス原作 TVアニメ「じょしらく」
あらすじ
人気イラストレーター・ヤスと、「さよなら絶望先生」の久米田康治が組んだ新境地!? 高座がハネた女子落語家が、楽屋でゆるゆる女子トーク♪ 「おあとがよろしいようで」から始まるガールズ落語家アニメ! ※このアニメは女の子の可愛さをお楽しみ頂くため、邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみ頂く番組です。
オンエア情報
- MBS 7月5日より 毎週木曜26:25~
- TBS 7月6日より 毎週金曜26:25~
- CBC 7月12日より 毎週木曜27:05~
- BS-TBS 7月14日より 毎週土曜24:30~
- ※放送日時に変更の場合あり。
配信情報
- バンダイチャンネル 7月14日より 毎週土曜24:30~(第1話のみ25:00~) ※みんスト上映会もあり。
- ニコニコ動画(ドワンゴ) 7月14日より 毎週土曜26:00~ ※同日25:30からニコ生上映会もあり。
- ビデオマーケット(スマートフォン向け) 7月14日より 毎週土曜25:30~
- Show Time 7月16日(月)より 毎週日曜24:00~ ※1話目のみ月曜に配信。
キャスト
- 蕪羅亭魔梨威:佐倉綾音
- 防波亭手寅:山本希望
- 波浪浮亭木胡桃:小岩井ことり
- 空琉美遊亭丸京:南條愛乃
- 暗落亭苦来:後藤沙緒里
スタッフ
- 原作:久米田康治/漫画:ヤス(講談社「別冊少年マガジン」連載)
- 監督:水島努
- シリーズ構成:横手美智子
- キャラクターデザイン:田中将賀
- 監修:林家しん平
- 音響監督:岩浪美和
- 音楽制作:スターチャイルドレコード
- アニメーション制作:J.C.STAFF
- 製作:女子落語協会
久米田康治(くめたこうじ)
神奈川県生まれ。1990年、「行け!!南国アイスホッケー部」が第27回小学館新人コミック大賞を受賞。翌年、週刊少年サンデー(小学館)に掲載されデビューとなった。当初スポーツマンガとして始まった同作だが、次第にコメディ要素が増え徐々にギャグマンガへと変化。過激な下ネタとお色気で好評を博した。続く「育ってダーリン!!」「太陽の戦士ポカポカ」でも同様の作風を展開。1998年より同誌で連載を開始した「かってに改蔵」は、登場人物の妄想から発せられる痛烈な社会風刺で新たなファンを獲得。2005年より週刊少年マガジン(講談社)で連載された「さよなら絶望先生」は第31回講談社漫画賞を受賞、3度にわたりTVアニメ化され、ヒットを記録した。最終30巻は8月17日に発売される。