ナタリー PowerPush - じょしらく
ゆるカワ落語ガールズの楽屋劇がTVアニメ化 原作担当の久米田康治が他人事のように語る
「さよなら絶望先生」でお馴染みの久米田康治と、「とらドラ!」の挿絵で知られるヤスのコンビが手がける、落語家ガールズの楽屋コメディ「じょしらく」。このTVアニメが7月5日から、MBSをはじめとする各TV局やWEBサイトで順次放送される。
コミックナタリーでは「さよなら絶望先生」が完結したこの機に久米田をキャッチし、インタビューを敢行。3年足らずで映像化を実現してみせた「じょしらく」の原作担当・久米田が明かす、作品誕生の意外な舞台裏とは。また久米田・ヤスの両氏から、読者とそれぞれ相方へ宛てたメッセージも預かってきたので、併せてご覧いただきたい。
取材・文/井上潤哉 編集/唐木元
「絶望先生」なんて本当もう、どうでもいいんだ
──「じょしらく」のアニメ化、おめでとうございます! 今日は「じょしらく」の魅力に迫るお話を伺ればと。
あれ……。えーと、今日って「さよなら絶望先生」の取材じゃなかったんでしたっけ。
──いや、「じょしらく」アニメ化の取材ですってお伝えしました、よね……?
いまのいままで、「絶望」の取材なんだと思ってました。
──伝わってなかったようで……こちらに手落ちがあったのかもしれません。すいません……。
いや、あのー、僕、いま担当編集がいないんですよ。もともと「じょしらく」には担当が2人付いてたんですが、6月に2人同時に異動になってしまって。で、引き継ぎが上手くいってないのか、誰も何も言ってこない。それで無担当状態なんです、いま。
──その担当不在というお話は、別冊マガジン7月号に掲載された「じょしらく」35話で、たっぷりネタにされていましたが、あれ本当の話だったんですね……。
そうですよ。冗談だと思ってる人が多いみたいですけど。
──取材の日程が伝わっていただけでも不幸中の幸いです(笑)。じゃあちょうどいいので、最終回を迎えたばかりの「絶望先生」の話題から始めましょうか。
いや、「じょしらく」の取材ということなら、「じょしらく」一本でいきましょう。「絶望」なんて終わった作品ですから。
──いやいや久米田ファンにとっては「絶望先生」は重要な作品ですし、ぜひ。
いや、終わった作品のことなんてどうでもいいんです。それより今日ここに来れなかった作画のヤス君のために、「じょしらく」の話、頑張ります。
基本的には可愛い絵を楽しんでいただくマンガです
──では予定通り「じょしらく」についてお伺いしましょう……。まずアニメ化が決定した報せをお聞きになって、いかがでしたか。
「あ、そうなんですね」みたいな。どっちかというと、どこか他人事でした。
──どこか他人事というのは、何か理由があったんでしょうか。
この作品では自分の仕事を「原作者」ですらない、「フキダシ係」と呼んでるんです。やっぱり僕はただの「フキダシ係」なので、喜びの度合いも控えめというか。
──割とご自身の関与を過小評価なさっていますよね。とはいえ世間的には原作者ですので、原作者の口から、まずは「じょしらく」がどんな作品か教えていただけると。
そうですねー、けっこう忘れちゃってるな……。読んで来ればよかったな。
──概要だけでも、覚えてる範囲で。
まず、落語マンガではないんです。密室劇なんですが、なるべく会話のみで成立させようという狙いがありまして。でも取り立てて特に何も起きない話なので、あらためてどういうマンガなのかと聞かれると……弱ったな……。
──たとえば久米田さんが知り合いに「こんなマンガなんだよ」って薦めるとしたら?
知り合いにオススメなんてしませんよ、恥ずかしい。うーんそうだな、基本的には可愛い絵を楽しんでいただくマンガですね。フキダシの中はおまけみたいなもので、最初から「そこはあまり気にしないでくれ」というスタンスでやってます。
──あらすじを紹介すると、女子落語家5人の楽屋トークが描かれていて、話題がどんどん予想外な方向にドリフトしていくショートコメディですよね。でも久米田さんにとって重点は会話ではなく、絵だと。
そう。連載が決まった当初、ネームと絵を作る順序が逆でいいんじゃないかって考えてたぐらいです。
──逆というのは?
音楽でも、書いた歌詞にメロディを付けていくやり方と、先に作ったメロディに歌詞を当てはめていく作り方とがあるじゃないですか。だからまずは、ヤス君に全力で可愛い女の子がしゃべってる絵を描いてもらって、あとから僕がセリフを入れていくという手法を提案したんです。でもまあ「それはさすがに勘弁してください」と編集部から泣きが入って。いつかその形は試してみたいんですけど。
──それが原作者としての理想形ですか?
理想というわけじゃないですけど、自分の責任が減るのがいいなって。
久米田康治×ヤス原作 TVアニメ「じょしらく」
あらすじ
人気イラストレーター・ヤスと、「さよなら絶望先生」の久米田康治が組んだ新境地!? 高座がハネた女子落語家が、楽屋でゆるゆる女子トーク♪ 「おあとがよろしいようで」から始まるガールズ落語家アニメ! ※このアニメは女の子の可愛さをお楽しみ頂くため、邪魔にならない程度の差し障りのない会話をお楽しみ頂く番組です。
オンエア情報
- MBS 7月5日より 毎週木曜26:25~
- TBS 7月6日より 毎週金曜26:25~
- CBC 7月12日より 毎週木曜27:05~
- BS-TBS 7月14日より 毎週土曜24:30~
- ※放送日時に変更の場合あり。
配信情報
- バンダイチャンネル 7月14日より 毎週土曜24:30~(第1話のみ25:00~) ※みんスト上映会もあり。
- ニコニコ動画(ドワンゴ) 7月14日より 毎週土曜26:00~ ※同日25:30からニコ生上映会もあり。
- ビデオマーケット(スマートフォン向け) 7月14日より 毎週土曜25:30~
- Show Time 7月16日(月)より 毎週日曜24:00~ ※1話目のみ月曜に配信。
キャスト
- 蕪羅亭魔梨威:佐倉綾音
- 防波亭手寅:山本希望
- 波浪浮亭木胡桃:小岩井ことり
- 空琉美遊亭丸京:南條愛乃
- 暗落亭苦来:後藤沙緒里
スタッフ
- 原作:久米田康治/漫画:ヤス(講談社「別冊少年マガジン」連載)
- 監督:水島努
- シリーズ構成:横手美智子
- キャラクターデザイン:田中将賀
- 監修:林家しん平
- 音響監督:岩浪美和
- 音楽制作:スターチャイルドレコード
- アニメーション制作:J.C.STAFF
- 製作:女子落語協会
久米田康治(くめたこうじ)
神奈川県生まれ。1990年、「行け!!南国アイスホッケー部」が第27回小学館新人コミック大賞を受賞。翌年、週刊少年サンデー(小学館)に掲載されデビューとなった。当初スポーツマンガとして始まった同作だが、次第にコメディ要素が増え徐々にギャグマンガへと変化。過激な下ネタとお色気で好評を博した。続く「育ってダーリン!!」「太陽の戦士ポカポカ」でも同様の作風を展開。1998年より同誌で連載を開始した「かってに改蔵」は、登場人物の妄想から発せられる痛烈な社会風刺で新たなファンを獲得。2005年より週刊少年マガジン(講談社)で連載された「さよなら絶望先生」は第31回講談社漫画賞を受賞、3度にわたりTVアニメ化され、ヒットを記録した。最終30巻は8月17日に発売される。