「異界撤退パラベラム」発売記念!ガンアクションの名手・いのうえ空が選ぶガンアクションマンガ5選 (3/3)

銃から滲み出るキャラクター性

──個人的には皇麻が使う銃について、まゆるが解説しているシーンもよかったです。ガンアクション初心者としては、使っている銃にちゃんと意味があるんだというのが見えて。

あれは「GUN SMITH CATS」の影響もありますね。作中でラリーが使っている銃のCz75についてまるまる1ページを使ってドーンと説明する場面があるんですけど、それがすごく好きなんですよ。

「異界撤退パラベラム」より。

「異界撤退パラベラム」より。

──ガンアクション好きとしては登場する銃もやはり気になるポイントなんですか?

はい。「あぶない刑事」だったら舘ひろしさんが黒が好きだということで、銃のグリップをわざわざ変えて黒に統一しているんです。「ギャロップ」では主人公の女性が彼氏から託されたS&W645(45口径)のロングバレル仕様の銃を使っていて、女性が持つには大きい銃なんですよね。それを仲間から「お前にはあってない」「重いしデカいし目立つしそんなの使うな」と言われるんです。そういう銃から見えるキャラクター性みたいなものも面白いんです。

「ゼロイン」誕生の裏にあった心の友の言葉

──今回、「異界撤退パラベラム」1巻の発売に合わせて「ゼロイン」が5月9日から16日まで1週間無料公開されます。「ゼロイン」はここまで伺ってきた、いのうえ先生の好きなものが詰まった作品だと思いますが、その成り立ちを教えてください。

「ゼロイン」11巻

「ゼロイン」11巻

月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)で新作を連載することになって、ガンアクションということは決まっていたんですが、どんな話にしようか迷っていたんです。そんなときに専門学校時代からの心の友に誘われて観に行った映画が「リベリオン」でした。“ガン=カタ”と呼ばれる2丁拳銃のアクションが印象的な映画で。観終わってすぐにその友達に「これやんなよ!」って言われたんです。本当にバカみたいに、友達ノリな言葉なんですけどね(笑)。それで僕も「そうだね! やってみるか」とすぐに決めていました。

──即決ですね(笑)。

いろんなガンアクションを僕に観させて、僕にガンアクションマンガを描かせようとしてくれる友達だったんです(笑)。「リベリオン」も僕に刺激を与えるために誘ってくれたんでしょうね。本当によかったのが、その友達とのやり取りのおかげで気を楽にして連載を始められたんです。「ゼロイン」の前に連載していた「リアルバウトハイスクール」が原作付きで、新作のオリジナルをどうしようか気負いしていたんです。ああしなきゃ、こうしなきゃと悩んでしまい、自分が何を描きたいのか見失っていて。そのときに、友達からさっきの言葉をもらって、フィーリングが大事だよなと踏ん切りをつけさせてくれたんです。

「ゼロイン」より。

「ゼロイン」より。

──いのうえ先生の作品のファンとして、そのお友達に感謝の言葉を贈りたいです。実はいのうえ先生にぜひ聞いてみたかったのが、「ゼロイン」の序盤にある衝撃的なシーンについてでして。これから作品を初めて読む人もいるのでネタバレしない範囲で裏話を教えてください。

本当に勝負というか、あのシーンはすごくがんばって描きました。作品の中でもめちゃくちゃ重要でしたね。あれがやれたから作家として、ひとつ大きくなれた気がします。でもあのシーンを描いた後に、自分も真剣に考えていたもんだからしばらく落ち込んじゃって……。連載中は長いこと引きずっていましたね。

──でもあのシーンがあったらこそ、ヒリヒリとした緊張感を持って最後まで「ゼロイン」を楽しめましたし、そのシーンで一気に作品に引き込まれました。

読者の反応もすごくあって。皆さんがこうやって作品を楽しんでくれているんだと実感した場面でもありました。そこから読者のことも考えて作品を描こうと思わされましたね。

──初見の読者にはまずあのシーンまでぜひ読んでもらいたいです。今読んでも色褪せない魅力がありました。

ありがとうございます。だからこそ今やっている「異界撤退パラベラム」も、「ゼロイン」に並べたい、負けない作品にしたいという目標を持っています。1話が掲載されたときも「ゼロイン」の読者が反応してくれていましたし、「ゼロイン」から20年、その期間、僕のガンアクションを待っていてくれた人たちに、成長した自分のマンガで恩返しできる作品にしたいです。いのうえ空が詰まった作品になるようにがんばります。

カドコミ&ニコニコ漫画「ゼロイン」全12巻無料開放

「異界撤退パラベラム」1巻の発売を記念して、いのうえ空によるガンアクションマンガ「ゼロイン」が期間限定で全話無料で読める!

期間:2025年5月9日(金)11:00~16日(金)11:00

あらすじ

16歳の女子校生・爲妹みくるは、凶悪犯罪専門に結成された民間特殊機動警官隊(民警)の凄腕エージェント。ある日、同じ学校のいじめられっ子で刑事を父親にもつ白石光を彼女が救ったことから、2人の関係は密接になっていく。決意を固めた光は、みくると同じ民警のエージェントに入隊することになり……。

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プロフィール

いのうえ空(イノウエソラ)

1972年生まれ。和歌山県出身。1994年にコミックガイア(青心社)にて「JAM!!」でデビュー。雑賀礼史の小説「召喚教師リアルバウトハイスクール」ではイラストに加え、月刊コミックドラゴン(富士見書房)でのコミカライズも担当する。2004年から2011年にわたり月刊ドラゴンエイジ(富士見書房)にて「ゼロイン」を連載。その他の代表作に「マイぼーる!」「僕の彼女はさすがです。」などがある。2024年10月より最新作「異界撤退パラベラム」を月刊ドラゴンエイジ(KADOKAWA)にて連載中。