コミックナタリー PowerPush - 不安の種

トラウマ必至の名作ホラーが実写化

監督・長江俊和が訊く!原作者・中山昌亮へ9の質問

マンガ「不安の種+」より。

「不安の種」は、どういう発想で企画されたのでしょうか?

読者の想像力をくすぐり、感情をわずかに揺らすことのみに特化した作品を作りたい……というところから出発しています。

私は今回、「人生は常に、予測不能な曖昧模糊とした“不安”に満ちあふれている。しかし我々は、その不安を享受し、生きてゆかなければならない」というテーマを、映画の中に込めました。中山先生にとって、「不安の種」の根底に流れるテーマは、何でしょうか?

テーマ自体は先の答えと同じで「読者の想像力に働きかけ感情にわずかな波をたてる」ということがすべてです。その結果読者の皆さん各々が、自身に合った意味を作品に後付けで当てはめていただけたとしたら、僕としては非常にありがたいし幸せです。

「不安の種」を描かれるときの、創作秘話を教えて下さい。

うーん、あまり喜んでもらえるような楽屋裏はないですよ(^^; ガッカリされるかもしれませんが、ホラー作品を描いてるワリに仕事場に陰はないですし、実は相当にビビリなのでホラー要素のあるものも仕事場には一切ないんですよ(笑)。

マンガ「不安の種+」より。

ネタは、どういった方法で収集されるのですか?

色々ですけれど自分からネタ集めに動いたことはありません。多くの場合はふとした会話の中から拾う場合が多いです。仕事中のアシスタントの話の中からとか、打ち合わせ中のバカ話の中からとか、そんな感じです(笑)。

中山先生が気に入っているエピソード、ベスト3を教えて下さい。また1位のエピソードについては、その理由をお聞かせください。

1位:メモリー
2位:あそぼうおじさん
3位:平行移動

いずれも父方の叔父から聞いた話がもとになってできた話です。1位のメモリーは単行本未収録です。すごく好きな話なんですけれど「不安の種」には全く合わないエピソードだったので、単行本に入れませんでした。

映画「不安の種」より。

「不安の種」が映像化されると聞いたとき、どう思われましたか?

もちろん「有り難いなぁ」と思いました。ただ僕の作品は映像化のお話が来てもなかなか実現まで行かない事がほとんどでしたので、映像化がキッチリ実現してから本格的に喜ぼうと思ってました。ですから今はシッカリ喜んでますよ(笑)。

映画「不安の種」より、石橋杏奈。

もし続編があるとしたら、ほかに映像化してみたいエピソードはありますか?

音が鍵になるエピソードが観たいです。映画は音が強い武器ですし逆にマンガはそこが弱いので、音を上手く使った話を観てみたいです。例えばスタンリー・キューブリックの「シャイニング」はホテルの廊下を三輪車で走る音が異様に怖かったですけれど、自分の描いたエピソードの中から「この音を抽出するか!!」と思わせられたら、「ヤラレタ!!」って唸ると思います。具体的なエピソードは僕が挙げるよりも、監督が「音」を鍵にした場合どのエピソードを選ぶのかの方が興味があります。

中山先生の好きな映画を教えて下さい。また、その理由も教えてください。

「自転車泥棒」「ひまわり」「道」「ライフ・イズ・ビューティフル」「ニュー・シネマ・パラダイス(ディレクターズカットじゃないオリジナルの方)」……etc。イタリア映画が多いかもしれません。

「オチョナンさん」とは、実際にあった伝承なのでしょうか?それとも、中山先生の創作なのでしょうか?もし伝承ならば、どこで、どのような言い伝えをお聞きになったのでしょうか?創作だとしたら、どのようなところにヒントがあったのでしょうか?

これは……明らかにしない方が良いでしょう。墓場まで持っていくつもりです。

映画「不安の種」2013年7月20日よりシネクイント、テアトル梅田ほかにて全国順次公開
あらすじ

奇妙な出来事ばかりが起こる地方都市──富沼市。

バイク便ライダーの巧(浅香航大)は、バイク事故に遭った誠二(須賀健太)と遭遇。助けを求められるが、誠二の身体は半壊し医学上はすでに死亡していた。そんな2人を遠くから眺める少女・陽子(石橋杏奈)。誠二は薄れゆく意識の中、恋人である彼女と出会った半年前の記憶を遡る……。

一方、事故に遭遇後バイク便を辞めた巧は、新しいアルバイト先で陽子に出会うが……。

出演

石橋杏奈
須賀健太
浅香航大
岩井志麻子
津田寛治

監督・脚本

長江俊和(「放送禁止」シリーズ、「パラノーマル・アクティビティ第2章TOKYO NIGHT」)

主題歌

ムック「狂乱狂唱 RMX for 不安の種」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)

(C)中山昌亮(秋田書店)2004/「不安の種」製作委員会2013

長江俊和(ながえとしかず)
長江俊和

1966年2月11日大阪府生まれ。1997年、TVシリーズ「奇跡体験!アンビリバボー」の立ち上げからディレクターとして参加。以降「学校の怪談 春の呪いスペシャル」や、「世にも奇妙な物語 春の特別編」など、怪談・心霊ドラマを数多く手掛けた。2003年からスタートした「放送禁止」シリーズは深夜帯の放送でわずか6編が作られただけだが、ドキュメンタリー番組のスタイルを踏襲してフィクションを撮る手法が論議を呼び、翌日のクレーム数ナンバーワンになると同時に熱烈な支持を獲得、後に劇場版2編も製作された。映画では「放送禁止 劇場版 ~密着68日 復讐執行人」「放送禁止 劇場版 ニッポンの大家族 Saiko! The Large family」のほか、「パラノーマル・アクティビティ第2章/TOKYO NIGHT」「エンマ」といった作品で監督を務め、型に捉われない映像表現と、リアリティと深みのあるドラマ演出で高い評価を得ている。

中山昌亮(なかやままさあき)
中山昌亮

1966年12月16日北海道旭川市生まれ。1988年に月刊アフタヌーン(講談社)の新人賞・四季賞冬のコンテストにて「離脱」が準入選。また第20回ちばてつや賞一般部門では「SHUTTERED ROOM」で準入選を果たす。1990年、モーニング(講談社)の増刊号にて「いい人なんだけど……」でデビュー。2006年にはビッグコミックオリジナル(小学館)で連載していた「PS-羅生門-」がTVドラマ化された。このほか代表作に「オフィス北極星」「不安の種」「不安の種+」など。2010年からNEMESIS(講談社)にて「後遺症ラジオ」を連載中。