家で声出して笑いました(江口)
──上坂さんは2014年の第壱期から、ドラマCD、OVA、そして第弐期と4年間ピーチ・マキを演じていらっしゃいますが、上坂さんにとってピーチ・マキはどんな存在ですか?
上坂 すごく自分とリンクするところが多いんです。ちょうどマキちゃんを演じるようになったのはアーティストデビューして間もない頃だったので、マキちゃんが方向性を見失いながらがんばる姿に勇気づけられました。アイドルの役はときどき演じるんですが、マキちゃんはとても現実的なアイドル……というか、アイドルしているお芝居よりやさぐれてるお芝居のほうが多いんです。
江口 ふふ(笑)。
上坂 だから演じていてすごく楽しくて、ミキちゃんという仲間ができてからはすごく楽しそうに仕事をしているので、「マキちゃん、軌道に乗ってよかったね!」と思って。もう一人の自分のようです。
江口 「鬼灯の冷徹」は地獄が舞台なんですが、割と仕事に関する話が多くて、いろんな職業のキャラクターが出てくるんです。でも職業の表立って見える部分を描いても、そこはもうみんな知ってるから裏側の部分を描いたほうがいいという思いがあって。マキはまさにその辺りを考えながら描いたキャラクターです。
──例えばアイドルだったら、ステージに立って歌ったり踊ったりしているところではなく……。
江口 そういうきらびやかなところじゃなくて、その裏側のほうが共感しやすいと思っています。それにきれいでかわいくて健気ですごくいい子という、いいところばっかりなアイドルをコメディで描いてしまうと場合によっては嫌われる傾向があるというか、そこはきっと本人が演じている部分であって、本来はもっといろんなことを思っているはずなので(笑)。マキはその“思うところ”をあんまり隠さないで描いています。
上坂 原作マンガを読んで、マキちゃんは逞しいながらも心根がおバカなところがすごくかわいいと思ったんです。事務所の意見にどうにか逆らわずに仕事をやり遂げる真面目なところもありつつ、自分の気持ちを爆発させるところもあり、でもおバカだからかわいく見える。そういうちょっと抜けてるところを意識して演じています。
──第弐期でもピーチ・マキは活躍しましたが、江口さんが特にお好きだったエピソードはどれですか?
江口 マキとミキが現世でスーツのサラリーマンに街頭インタビューをしようとしたら、実は現世を視察中の鬼灯だった回(第10話「加々知の冷徹」)。マキが階段でつまずいちゃって、鬼灯に腰を受け止められたときに出た「あ゛っ」って叫びに、「すごい声出すなあ」って。家で声出して笑いました。
上坂 鬼灯とマキちゃん、すごくロマンチックな構図でしたけど、全然そんなふうになりませんでしたね(笑)。
──鬼灯は落ちてくるピーチ・マキを抱きとめるのではなく、腰を支えてそのままストンって地面に下ろすという器用な技をやってのけましたね。
江口 でもなんだかんだお尻から落ちたから、「そのくらいの声出るよね」って思いました。やっぱり声はマンガだとできない表現なので、アニメでやってくれてすごくありがたいですね。
上坂 私は最終話の第13話が印象に残っていますね。「地獄にも年末進行ってあるんだ!」って。地獄はお餅が原因で死ぬ亡者を裁かなきゃいけないからお正月も忙しくて大変、というのは「確かに」と思いました。
江口 ちょうど放送時期も年末で、ストーリーと合ってましたね。
上坂 はい。忘年会の描写も、鬼灯様の後ろでお酒飲んで潰れてる獄卒のカットとか、幸せな感じがよかったなあ。
キャラソンを私物化(上坂)
江口 私は第4話の「芥子ちゃん伝説」で鬼灯と芥子が童謡の「かちかち山」を歌ってくれたのがアニメならではで、すごくうれしかったんです。やっぱりマンガでは歌の部分が文字だけなので、どんなにおどろおどろしい絵を描いても「かちかち山」の怖さが伝わりづらくて。あと平川(大輔)さんがおっしゃってましたけど、2人の「かちかち山」には中間の音がなくて。
上坂 中間の音?
江口 芥子がめちゃくちゃ声が高くて、鬼灯がすっごく低いので、間を取る音が全くない。ヘッドフォンで聴くとこっちが高くてあっちが低くて、という感じで、2人は一緒に歌ってるのに何回聴いても乖離するんです。
上坂 ハモらない(笑)。
江口 脳がものすごく迷ってしまう(笑)。
──第4話はシロが「桃太郎」、小判が「山寺の和尚さん」を歌った童謡回でもありましたね。
江口 本当に、「鬼灯の冷徹」の声優さんたちに童謡CDを出してほしいくらいです。
上坂 ……私、この場を借りて先生に謝罪しようと思ってることがあって。
江口 え?
上坂 「キャラメル桃ジャム120%」がいい曲すぎて、キャラソンなのに自分の曲のようにライブで歌っていて……。
江口 ふふふ(笑)。
上坂 「そとばの前で会いましょう」も私物化を……。
江口 歌っていただけてすごくうれしいです(笑)。「キャラメル桃ジャム120%」は本当に「キャラメ~ル てんごく~ あまくて やさしい ねっとり感~」というワンフレーズをマンガに出しただけであんなにいい曲に作ってもらえて。
──CD化されている音源だと、マンガには出てこない部分の歌詞も聴けますね。
江口 「全部の歌詞を考えてください」と言われたので提出して、それにアレンジを加えていただいたんです。
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キングレコードは黙ってアニメだけ作ってればいい(上坂)
- アニメ「鬼灯の冷徹 第弐期その弐」
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- 放送情報
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- TOKYO MX1:
2018年4月7日(土)より毎週土曜25:00~ - サンテレビ:
2018年4月7日(土)より毎週土曜25:00~ - BS11:
2018年4月7日(土)より毎週土曜25:00~ - KBS京都:
2018年4月7日(土)より毎週土曜25:00~ - AT-X:
2018年4月9日(月)より毎週月曜22:30~
※リピート放送(水)14:30、(日)7:00、(土)6:30 - AbemaTV:
2018年4月7日(土)25:00~配信 - ほか各動画配信サイトにて随時配信
- TOKYO MX1:
- スタッフ
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- 原作:江口夏実(講談社「モーニング」連載)
- 監督:米田和弘
- 脚本:後藤みどり
- キャラクターデザイン:お祭似郎
- 編集:松原理恵
- 音響監督:はたしょう二
- 音響効果:高梨絵美
- 音響制作:サウンドチーム・ドンファン
- 音楽:TOMISIRO
- 音楽制作:キングレコード
- アニメーション制作:スタジオディーン
- キャスト
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- 鬼灯:安元洋貴
- 閻魔大王:長嶝高士
- シロ:小林由美子
- 柿助:後藤ヒロキ
- ルリオ:松山鷹志
- お香:喜多村英梨
- 茄子:青山桐子
- 唐瓜:柿原徹也
- 芥子:種﨑敦美
- ピーチ・マキ:上坂すみれ
- 桃太郎:平川大輔
- 白澤:遊佐浩二
- 座敷童子・一子:佐藤聡美
- 座敷童子・二子:小倉唯
- ミキ:諏訪彩花
©江口夏実・講談社/「鬼灯の冷徹」第弐期製作委員会
- 江口夏実「鬼灯の冷徹㉖」
- 発売中 / 講談社
26巻にして初登場の閻魔大王第二補佐官は、すでに登場済みの意外なあの人! そして意外にも鬼灯がルリオを第五補佐官に任命! そんな閻魔庁に唐瓜の姉ちゃんが怒鳴り込んできて烏頭と火花を散らすも、何やら意外な展開に……。そして意外性一切なし、期待通りの芥子の部屋にご案内ー!
- 江口夏実(エグチナツミ)
- 2010年に「非日常的な何気ない話」で第57回ちばてつや賞佳作を受賞。その中の一編「鬼」に登場したキャラクター・鬼灯を主人公にした「地獄の沙汰とあれやこれ」がモーニング2010年32号(講談社)に掲載されデビューを果たす。その後数回の掲載を経て、タイトルを「鬼灯の冷徹」と改め連載をスタート。「鬼灯の冷徹」は2014年にテレビアニメ化され、2017年10月より「鬼灯の冷徹 第弐期」が放送。2018年4月より「鬼灯の冷徹 第弐期その弐」がオンエアされる。
- 上坂すみれ(ウエサカスミレ)
- ソビエト社会主義共和国連邦が崩壊した1991年生まれの声優。2012年テレビアニメ「パパのいうことを聞きなさい!」の小鳥遊空役で本格的に声優デビューを果たす。2013年放送のテレビアニメ「波打際のむろみさん」の主題歌「七つの海よりキミの海」でアーティストデビュー。2017年4~6月にはTOKYO MXとBS11で初の冠テレビ番組「上坂すみれのヤバい○○」が放送された。「鬼灯の冷徹」(ピーチ・マキ役)、「中二病でも恋がしたい!」(凸守早苗役)、「いぬやしき」(犬屋敷麻理役)、「蒼天の拳 REGENESIS」(エリカ・アレント役)など出演作多数。
2018年4月11日更新