アニメ「グラゼニ シーズン2」特集 森高夕次×大根仁対談|主人公が絶対に打たれなきゃいけない、野球マンガの妙

森高夕次が“でしゃばって”選んだ「グラゼニ」OP・ED

大根 すべての表現の中で、マンガが一番偉いと僕は思っているんですけど、もしマンガに映像が勝てることがあるとしたら、それは音の表現が大きいと思うんです。

左から森高夕次、大根仁。

森高 音楽が持っている力ってマンガにはなかなか取り込めなくって、映像にはそれが入れられる。だから僕は「グラゼニ」のアニメ化にあたって、音楽に関してちょっとリクエストしたんですよ。オープニングに使われているサイプレス上野とロベルト吉野の「メリゴ feat. SKY-HI」は僕が選んだんです。

大根 僕、知り合いなんですよ。

森高 あっ、そうなんですね! 僕がこの曲を何で知ったかというと、TBSラジオなんですよ。「これはいい曲だな」と思って、ライブにも行って本人にも会ったりして。で、個人的に「アニメに使わせてもらえないですか?」って言ったらOKが出たから、スカパー!さんにお願いして実現したんです。

大根 へえ、そんな話があったんですか。

森高 たぶんもう、こんなチャンスは来ないし、多少でしゃばりと言われてもいいからと思って(笑)。ちなみにエンディングもシーズン1、シーズン2ともに大ファンだった土岐麻子さんに担当してもらっています。シーズン2のエンディングでは、またでしゃばりまして、「オレたちひょうきん族」みたいな雰囲気が出せるようにと、制作スタッフにお願いしました。

大根 ああ、EPOとかの?

アニメ「グラゼニ シーズン2」より。左がヒロインのユキ。

森高 そうそう! 中身はおちゃらけているんだけど、エンディングになると、おしゃれな音楽が流れて、カッコいい感じで終わる。あれができないかなと思って。シーズン1のエンディングは、ヒロインのユキちゃんが河川敷でのんびりしている感じの映像で牧歌的ですごくかわいいんだけど、あまり動きはなかったんです。でもシーズン2はかなり動きますよ。

もし「グラゼニ」を実写化するなら夏之介役は……

──アニメ本編の完成度については、おふたりはどう感じられていますか?

アニメ「グラゼニ シーズン2」より。

大根 全部を観られたわけではないんですけど、原作にすごく忠実にやっていて好印象ですね。夏之介役の落合福嗣くんも、話を聞いたときはどういう感じになるんだろうと思いましたけど、違和感を覚えませんでした。ストーリーの進むペースも、割と原作通りというか、きっちりとやってらっしゃるじゃないですか。ちなみに、シーズン1はどこまで進んだんですか?

森高 3巻でユキちゃんが夏之介の試合を観に来たあたりまでですね。シーズン2も、ペース的には同じくらいで進みます。

大根 原作を映像化するなら、今回のアニメはテンポ的には一番正解だと思いますね。実は何年か前に僕、若い映画プロデューサーから、「『グラゼニ』の実写化はどうですか?」って言われたことがあるんですよ。説教しましたけどね。「『グラゼニ』を2時間で作れるわけないだろう、ナメんなよ!」と(笑)。僕の感覚で言うと、マンガを映画化したときに使える尺って、単行本に換算すると2巻か3巻分ぐらいしかないので。

森高 アニメの場合はね、作ろうと思えば何話まででも作れる。仮にどこかで止まっても、将来的に続きが作られるかもしれないっていう可能性も残る。映画の場合は、作品としてそこで終わっちゃうという、その難しさはありますよね。

「グラゼニ」1巻
最新シリーズである「グラゼニ ~パ・リーグ編~」の1巻。

大根 ええ、だから「グラゼニ」の作り方は、すごく実直で好感の持てるアニメ化だなと思いました。アダチ先生が描いている夏之介の顔のタッチも、長期連載の中でどんどん変わっていってますけど、アニメではうまくポイントを捉えた絶妙な絵柄になっている。

森高 やっぱり、マンガ家はどうしてもタッチが変わっていきますからね。1巻と最新刊だと、まったく違います。どの時代の絵がいいのかっていうのは、人によって好き好きでしょうけど、アニメーターの方が本当にうまいところを捉えて、アニメにしてくれていると思います。

大根 本当に、絶妙にいいところだと思いました。

──ちなみに、プロデューサーから話を持ちかけられたというエピソードも出ましたが、もし大根監督が「グラゼニ」を映像化するとしたら、夏之介役にはどなたをキャスティングしますか?

大根 うーん……。主役としてのネームバリューとか、ビジネスのこととかを考えると、今なら松ケン(松山ケンイチ)ですかね。1年くらいかけて体を作ってもらって。

森高 なるほど(笑)。アニメに関して言うと原作者である僕としては、もう自分の手から離れたものなので、制作スタッフには感謝の気持ちしかないです。素晴らしいものを作ってくれたなっていう。大体ね、原作者はみんな文句をつけたがるもの……って噂に聞くんですけど(笑)。僕はもう、ノー文句ですからね。特に、日常のほわっとした感じというか、なんとなく次も観てみようかなという雰囲気が、最高によくできていると思います。

──シーズン2も期待して観たいと思います。ありがとうございました。

左から森高夕次、大根仁。
アニメ「グラゼニ シーズン2」
BSスカパー!にて2018年10月5日より毎週金曜日22:30~放送
アニメ「グラゼニ シーズン2」
スタッフ

原作:森高夕次・アダチケイジ「グラゼニ」(講談社「モーニング」連載)

監督:渡辺歩

シリーズ構成・脚本:高屋敷英夫

キャラクターデザイン:大貫健一

音楽:多田彰文

音響監督:辻谷耕史

アニメーション制作:スタジオディーン

製作:スカパー!・講談社

キャスト

凡田夏之介:落合福嗣

ユキ:M・A・O

田辺:二又一成

追田:乃村健次

小里:石野竜三

徳永:浪川大輔

渋谷:星野貴紀

松本アナ:松本秀夫

森高夕次(モリタカユウジ)
森高夕次
1963年長野県生まれ。コージィ城倉名義で作品を執筆し、森高夕次名義でマンガ原作者としても活躍する。1989年に週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「男と女のおかしなストーリー」でデビュー。デビュー時から野球を題材にすることが多く、同年ミスターマガジン(講談社)にて「かんとく」、1995年に週刊少年サンデー(小学館)にて「砂漠の野球部」、2003年には週刊少年マガジン(講談社)にて「おれはキャプテン」など数々のヒット作を生み出している。一方で人間の暗い心理を浮き彫りにするような作品も手がけ、2002年にビッグコミックスピリッツで連載した「ティーンズブルース」では、ホストクラブにはまって転落していく女子高生を描き読者を驚かせた。現在の連載作に「グラゼニ ~パ・リーグ編~」「プレイボール2」など。
大根仁(オオネヒトシ)
大根仁
1968年12月28日、東京都生まれ。「アキハバラ@DEEP」「湯けむりスナイパー」などの深夜ドラマで演出を手がける。2011年に映画監督デビュー作「モテキ」で第39回日本アカデミー賞話題賞作品部門を受賞。その後「バクマン。」「SCOOP!」「奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール」などで監督・脚本、劇場アニメ「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」で脚本を担当。現在、監督・脚本を担当した最新作「SUNNY 強い気持ち・強い愛」が公開されている。