「ダイナ荘びより」|松重豊、田中要次、バイきんぐ小峠が、TVアニメ「ダイナ荘びより」でゆるかわいい恐竜役に挑戦

「映画 すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」や「アグレッシブ烈子」を手がけるファンワークスと、アニプレックス、ソニー・クリエイティブプロダクツがタッグを組んで制作するオリジナルTVアニメ「ダイナ荘びより」。現代に生きる恐竜3匹がアパートの一室で共同生活を送る様子を描く同作には、ティラノサウルス役で松重豊、トリケラトプス役で田中要次、ステノニコサウルス役でバイきんぐの小峠英二が出演する。

アニメの放送開始に合わせ、コミックナタリーでは松重、田中、小峠の3人にインタビューを実施。恐竜との意外な縁や、声優という仕事の難しさについて聞いた。取材中、松重が田中のかわいらしい演技を大絶賛すると、田中は意外な告白を……。さらに恐竜たちが日々怯える“絶滅”というワードにちなみ、3人からも“人類最後の日にしたいこと”に答えてもらった。

取材・文 / 西村萌 撮影 / 曽我美芽

「ダイナ荘びより」

舞台は小さなアパート「ダイナ荘」の一室。性格がまったく違う3匹の恐竜、ティラノサウルス・トリケラトプス・ステノニコサウルスは共同生活をすることになった。バイトをしたり、銭湯へ行ったり、スイーツを食べたりと、たまにケンカもするけど楽しい毎日が続いていく。ところがある日、隕石落下の予報が出て……!? 現代を生きる恐竜たちの、ゆるくてシュールなアパートライフが描かれる。

ティラノサウルス(CV:松重豊)
ティラノサウルス(CV:松重豊)
最強の肉食恐竜。
好きなもの:甘いもの、お肉
苦手なこと:手が長くないとできないこと
トリケラトプス(CV:田中要次)
トリケラトプス(CV:田中要次)
3本の角をもつ草食恐竜。
得意なこと:いつでもすぐ寝られる
苦手なこと:空気を読むこと
ステノニコサウルス(CV:小峠英二)
ステノニコサウルス(CV:小峠英二)
比較的大きな脳をもつ恐竜。
好きなタイプ:褒めてくれる人
苦手なこと:体力のいる運動

ティラノサウルス役は人生で2度目(松重)

──まず、オファーを受けたときはどう思われましたか? 皆さん本業が声優さんではないので、視聴者からすると少し意外なキャスティングだったのではないかなと思うのですが。

松重豊
ティラノサウルス

松重豊 やっぱり声優さんは今忙しいですからね。「鬼滅の刃」の大ヒットもあってアニメ業界以外でもますますご活躍されていますから、我々俳優と芸人が駆り出されたんだろうなと。

──そんなそんな(笑)。松重さんはディズニー映画の「アーロと少年」でも恐竜を演じていらっしゃいましたよね。

松重 そう。僕、ティラノサウルス役は人生で2度目なんです。ティラノサウルスって最強の肉食恐竜ですけど、この作品のティラノはゆるくてかわいい。そこに面白みがある、愛されるキャラクターになっているんじゃないかなと思います。

──田中さんと小峠さんは、ご自身が演じるキャラクターについてどう思われましたか?

田中要次 僕の演じるトリケラトプスはマイペースで会話にあまり加わらないけど、最後にサクッと心を突き刺すような一言を放ってしまうようなキャラクター。言葉数が少ない分、より難しかったです。そういえば昨日お風呂に入ってるときに思い出したんですけど、僕もトリケラトプスにはちょっと縁があるんです。昔、友達とビデオカメラを持って旅行しながら小芝居を撮ったことがあって。そのタイトルが佐野元春さんの「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」っていうアルバムをもじって、「トリケラトプスと泳ぐ日」でした。

小峠英二 へえ! そんなつながりがあったんですね。3匹の恐竜の会話をトリオのコントで例えると、松重さんのティラノサウルスがボケで、田中さんのトリケラトプスが大ボケ、そして僕の演じるステノニコサウルスがツッコミ。だから僕は、そのまんまの自分で演じられた気がします。同じ事務所のコウメ太夫が恐竜大好きなんですけど、あいつじゃなくて僕にオファーがきてくれてよかったです(笑)。

松重 でも今後、仲間の恐竜役で出てきてもらってもよさそうだね。

小峠 ダメですよ。「チクショー!!」しか言えないですから(笑)。

「あるよ」の一言すら、毎回不安だった(田中)

──声優というのは、ナレーションやラジオなどの声のお仕事ともまた違った難しさがあるのでしょうか?

松重 そうですね。ナレーションのときはそのドキュメンタリー映像などに自分がひたすら寄り添うような気持ちで声を入れるのが一番やりやすいんですけど、アニメーションのほうは自分というものがそこに介在する余地がないぐらい、すべてが絵の中に詰まっているので、どう演じたらいいのか毎回悩みます。

田中 僕もいつも不安なまま収録してますね。でもよく考えたら、それは声優のお仕事だけじゃないかもしれない。20年前の「HERO」というドラマで話題になった「あるよ」って一言のセリフですら、「あの言い方で大丈夫だったかな?」って毎回思ってましたからね。今回も下手したら、放送のときには別の人の声に差し替えられるんじゃないのかなっていう恐怖に駆られてます。

松重 さっきもう替えの人がスタンバイしてましたよ。

田中 えっ!? そういえば監督からダメ出しが少ないなと思ってたんですよ……。

小峠 見切りをつけられてた(笑)。

──あはは(笑)。そんな苦労もありながら、ここまでのアフレコを振り返ってどうでしたか? 全26話のうち、ちょうど半分ぐらいまで録り終えたそうですが。

松重 昨日はみんなでキャラクターの気持ちを作るために、恐竜たちのぬいぐるみをマイクの前に置いてアフレコしたんだよね。さっき田中さんは心配してたけど、非常に素晴らしかったですよ。相当作り込んできたなあと。大変勉強になりました。

田中要次
トリケラトプス

田中 いやいや……。僕ね、どうやら家の中だとあの声らしいの。

──あんなふうにかわいらしい声なんですか?

小峠 えー、ちょっと想像したくないですね。

松重 田中さんは意外と乙女な部分があるよね。

──皆さんはキャリアのある俳優さん、芸人さんなのですが、世間の人たちに「渋い」とか「面白い」だけじゃなく、「かわいい」と思われたことも少なくはないと思うんです。そういった声があるってことは、御三方は自覚していらっしゃいますか?

松重 まあ、かわいいって取材とかで言われることもけっこうあるけど、普段街を散歩していて「わあ、かわいいですね!」なんて言われたことないからね(笑)。かわいいオーラなんて微塵も出してないつもりだし、どっちかっていうと眉間に皺寄せて、サングラスかけて近寄り難いはずですから。まあ、田中さんはそうじゃないと思うけど。

田中 ちょっと、僕もかわいいつもりはまったくありませんよ(笑)。でも確かに今まで参加させてもらったアニメを振り返ってみても、この顔なのになぜかかわいらしいキャラクターが多いかもしれない。たぶん僕ってしゃべると意外と声のキーが高いから、そういう役が回ってきたりするのかしら。

松重 かしら。

小峠 また乙女が出ましたね。

──あはは(笑)。小峠さんは、かわいいと言われることは……?

小峠 聞いたことないっすよ。ライブやりゃあハゲ狂ったおっさんしか来ないんですから、かわいいなんて言われるわけがない!(笑)

松重 ハゲ狂うってどんなんなんだ(笑)。でも小峠さんはモテそうだよね。かわいいというよりはダンディズムを感じる。

田中 うんうん。

松重 どっちかというと、女性側が小峠さんに“かわいさ”を出すのかもしれない。

小峠 自分ではピンとこないなー。