第4章ヒーローとアスリート
あの選手とマンガのつながりを知る
マンガを読んで、好きなキャラクターを目標にがんばったり、名言に背中を押されたり、といった経験を持つ人は多いだろう。ここでは著名なアスリートたちがマンガから影響を受けたエピソードを、写真やインタビュー動画をまじえて紹介している。マンガというコンテンツの影響力の強さがわかるコーナーだ。
紹介作品とアスリート
- 高橋陽一「キャプテン翼」×遠藤保仁(ガンバ大阪)
- 満田拓也「MAJOR」×坂本勇人(読売ジャイアンツ)
- 森川ジョージ「はじめの一歩」×清水聡
- 浦沢直樹「YAWARA!」×谷亮子
- 森末慎二・菊田洋之「ガンバ!Fly high」×内村航平
- 小林まこと「柔道部物語」×恵本裕子
- 勝木光「ベイビーステップ」×橘龍平
パナソニックセンター東京・那須さんのチェックポイント!
このコーナーは今後も選手が追加される予定です。その中で、元サッカー日本代表の前園真聖さんが語っているのが自転車マンガの「弱虫ペダル」。マンガから影響を受けるのは精神的な部分もあるので、ご自身が経験された競技と違うマンガを語ってくれることもあるのが面白いですね。
第5章マンガとスポーツの精神的価値
「卓越」「敬意/尊重」「友情」が見られるマンガのシーンとは
IOC(国際オリンピック委員会)は、個人がより高みを目指していく「卓越」、文化や考え方が違う多様な人が互いを理解しようとする「敬意/尊重」、国や文化の違いを越えて交流を深める「友情」の3つを「オリンピックバリュー」として掲げている。この章ではこれらのキーワードから連想するマンガの名言と、それと似たシチュエーションのオリンピックのエピソードを紹介している。
紹介作品
- 高森朝雄・ちばてつや「あしたのジョー」
- 山本鈴美香「エースをねらえ!」
- ちばあきお「キャプテン」
- 高橋陽一「キャプテン翼」
- あだち充「タッチ」
- 古舘春一「ハイキュー!!」
- 松本大洋「ピンポン」
- 梶原一騎・川崎のぼる「巨人の星」
- 藤巻忠俊「黒子のバスケ」
- 渡辺航「弱虫ペダル」
紹介アスリート
- 吉田秀彦
- 有森裕子
- 原田雅彦
- カタリーナ・ビット
- 谷亮子
- ガブリエラ・アンデルセン
- 松田丈志
- キエル兄弟
パナソニックセンター東京・那須さんのチェックポイント!
近代オリンピックの創始者であるピエール・ド・クーベルタンが「オリンピズム(オリンピックの精神)」を唱えています。 卓越性、敬意/尊重、友情はオリンピズムの3つの本質的価値であり、オリンピック競技大会の目標でもあります。 マンガでもこのバリューを感じられる名言があるんじゃないかというのがこのコーナーです。
第6章パラリンピック競技を描くマンガ・アニメ
作品を通じての理解促進と魅力の発信
マンガやアニメは、パラスポーツの認知を高めるのに多大な貢献を果たしているという。井上雄彦「リアル」はパラリンピックの招致が決まる前から車いすバスケを描き、さらに2020年にパラリンピックが東京で開催することが決定してからは、パラスポーツマンガを中心にしたムックも登場。NHKでは「アニ×パラ~あなたのヒーローは誰ですか~」でパラスポーツを扱い、競技の素晴らしさ伝えている。このエリアではそういったアニメやマンガを紹介しているほか、陸上競技用の義足、ブラインドサッカー用のボール、車いすバスケットボール用の車イスなども展示されている。
パナソニックセンター東京・那須さんのチェックポイント!
井上雄彦先生の「リアル」などは昔からある作品ですが、やはりパラリンピックの東京招致が決まってから、パラスポーツを扱う作品は増えました。来場者からは「パラリンピック競技を扱う作品ってこんなにあるんだ」という声が多く聞かれますので、パラリンピック競技を知って頂くきっかけとなり、非常に意義のあるコーナーかと思います。
第7章世界に拡がる日本のマンガ文化
MANGAは日本文化の国際親善大使
最後の展示となる第7章は、スポーツものに限らず日本のマンガ文化を紹介。1970年代以降、日本のマンガが海外でどのように受け入れられていったのかを学ぶことができる。大友克洋「AKIRA」をきっかけにして日本の作品が読まれるようになったという1990年代から、アートとして認められるようになった2010年代までの状況を伝えている。
パナソニックセンター東京・那須さんのチェックポイント!
ここでは日本のマンガの海外版単行本も展示されているので、ぜひ手に取って見てください。注目してほしいのは、セリフは英訳されていても、擬音は日本語のままということも多いんです。例えば静かな場面を表す「しーん……」というオノマトペですが、ここで「Silent……」と書くと、原文とはニュアンスが微妙に違って感じられるのがわかると思います。
パナソニックセンター東京・那須瑞紀氏インタビュー
──この「SPORTS×MANGA」は、Panasonicが2017年から行っているオリンピック・パラリンピックに向けた「いっしょにTOKYOをつくろう。」という取り組みの一環だそうですね。
そうですね。文化的視点で、スポーツの魅力を発信するという試みです。2018年には「スポーツ×フォト」というテーマの「The Moment」という企画展を行いました。
──昨年は写真だったんですね。今回はなぜマンガをテーマにしようと思ったのでしょうか。
マンガが日本を代表する文化であるというのがまず1つ。そしてマンガは、発信力がすごくあると思うんです。
──確かにマンガは子供から大人まで読むものですからね。
それに、日常では接点があまりないことにも、マンガを通して触れることができると思うんです。例えばLGBTや人種の問題について考えたことがない人でも、マンガでそういった話を読むと距離が縮まるというか。それと同じで、マンガならではの入りやすさ、わかりやすさといった部分で、パラリンピック競技との距離が縮まるということもあるのかなと。
──なるほど。ほかにも、今回の展示でスポーツマンガの歴史を見ていて思ったのですが、人気マンガが持つ影響力というのもすごいですよね。
そうですね。私は部活でバスケットボールをやっているときに「SLAM DUNK」の連載が始まったんですよ。って言うと世代がバレちゃうんですけど(笑)。「SLAM DUNK」の連載前後で、バスケ部の入部希望者の数ってかなり変わりましたから。
──この「SPORTS×MANGA」はどんな人に観に来てほしいですか?
今回ターゲットとして若い人たちにたくさん来て欲しいと思っておりますが、親子で来てくれる人も多いですね。お父さん、お母さんにとって懐かしいマンガが多かったみたいで。「キャプテン翼」で育ったお父さんが、子供と一緒にスカイラブハリケーンの人形を見て楽しんでいたりとか。
──「こんな技が出るマンガがあるんだよ」と。
そこから子供が「キャプテン翼」を読むきっかけになるといいなと思います。
──最新技術を使ってマンガの必殺技やトレーニングを体験できるコーナーは非常に印象的でした。
今回は実現できませんでしたが、日向小次郎のタイガーショットの特訓シーンをやろう、という話もありましたね。
──海の高波に向かってシュートの練習をするシーンですね。
壁に向かってボールを蹴ると、CGで海が表示されてボールが返ってくるみたいな(笑)。ほかにも「巨人の星」の大リーグボール養成ギブスが実際に作れないか?とか、「はじめの一歩」のガゼルパンチ用のスクワットをやると、ARでどんどんムキムキになるのはどうだとか、とか。会議でそういうアイデアはいろいろ出ました。
──楽しそうな会議ですね(笑)。その会議の結果、「テニスの王子様」の「無我の境地」などが残ったと。
「無我の境地」は皆さんにぜひ体験してもらって、写真を撮って、SNSなどで拡散していただければ。
──「無我の境地」でインスタ映え(笑)。最後に、コミックナタリー読者に向けて「SPORTS×MANGA」をアピールするならどんな部分でしょうか。
今回の展示では、スポーツマンガの歴史を学ぶことができます。それ以外にも、例えば4章の「ヒーローとアスリート」、5章の「マンガとスポーツの精神的価値」では、リアルなスポーツとスポーツマンガの繋がりを知れるので、マンガ好きの方にとっても非常に興味深いものになっているのではないかと。
──確かに、僕はスポーツマンガは読むのですが実際のスポーツはあまり見ないので、マンガがアスリートに与えた影響の話などは新鮮でした。
マンガから影響を受けている選手は非常にたくさんいらっしゃいます。それも「この技をやりたいからこの競技をやる」ということではなくて、もっと努力とか成長とか、精神的な部分に関してマンガからメッセージを受け取って支えられたというストーリーが非常に多いです。だからこの「SPORTS×MANGA」を通じてマンガとアスリートの関係性を知れば、実際にそのスポーツをやっていない人でも、共感を得たり、感動できる部分は多いと思いますよ。