デジナタ連載 「SPORTS×MANGA」|マンガの歴史や必殺技を学びながら、スポーツの魅力を知る

スポーツとマンガをテーマにした企画展「SPORTS×MANGA」が、東京・パナソニックセンター東京にて9月29日まで開催されている。本展はマンガを切り口にスポーツの魅力を伝えるもの。スポーツマンガの歴史や、マンガがアスリートに与えた影響、オリンピック・パラリンピックの精神性などを学ぶことができるほか、人気マンガに登場するトレーニングや必殺技を体感できるコーナーも設置されている。

コミックナタリーではこの「SPORTS×MANGA」の内容を詳細に紹介。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を約1年後に控えた今、ぜひ会場に訪れてみてほしい。

取材・文 / 松本真一 撮影 / 笹井タカマサ

「SPORTS×MANGA」

「SPORTS×MANGA」の展示は全7章。フロアはマンガのコマ割りを模した作りになっている。

Panasonicが2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて実施してきたプログラム「いっしょにTOKYOをつくろう。」特別企画展の第5弾。マンガとスポーツが持つ歴史や精神性に迫り、Panasonicのテクノロジーを用いたダイナミックな展示で、作品に込められた思いなどを体感することができる。展示は「スポーツマンガの歴史と日本社会」「ヒーローとアスリート」など全7章に分けられ、キュレーターとしてアングレーム国際漫画祭のアートディレクターであるステファン・ボージャン氏が参加した。

会期:2019年7月13日(土)~9月29日(日)
※月曜日休館(7月15日、9月16日は開館予定)

時間:10:00~18:00(最終入場17:45)

会場:東京都 パナソニックセンター東京
住所:東京都江東区有明3-5-1

料金:無料

1スポーツマンガの歴史と日本社会

スポーツマンガの代表作100タイトル以上を時代背景とともに年表で紹介

「SPORTS×MANGA」の「第1章:スポーツマンガの歴史と日本社会」の展示の様子。

最初のエリアではスポーツマンガの代表作100タイトル以上を、時代背景とともに年表で紹介している。例えば1960年代の高度成長期には、スポーツに情熱を捧げる主人公が努力と根性で試練に立ち向かう“スポ根もの”が国民の共感を得た。また1970年代に女性の社会進出が進むと少女マンガにもスポーツものが増えている。こういった観点から、スポーツマンガと日本社会の結びつきを学ぶことができる。

モニターの上段は読売新聞協力により、その時代に起きた大きな出来事を表示。下段には、時代ごとのスポーツマンガの代表作が野球・格闘技・サッカーなどジャンルごとに並べられている。

モニターの上段は読売新聞協力により、その時代に起きた大きな出来事を表示。下段には、時代ごとのスポーツマンガの代表作が野球・格闘技・サッカーなどジャンルごとに並べられている。

タッチパネルを使用して、作品ごとの解説も見ることができる。「キャプテン翼」は日本でサッカーがメジャースポーツではなかった頃に連載を開始、日本にサッカーブームを起こし、海外でも大ヒットした。

タッチパネルを使用して、作品ごとの解説も見ることができる。「キャプテン翼」は日本でサッカーがメジャースポーツではなかった頃に連載を開始、日本にサッカーブームを起こし、海外でも大ヒットした。

パナソニックセンター東京那須さんのチェックポイント!

スポーツマンガは時代を写す鏡です。「このあたりから必殺技を取り入れているマンガが増えてきたな」とか「Jリーグ開幕後にサッカーマンガが増えてきたな」とか、そういった視点からスポーツマンガの歴史を楽しんでください。

2トレーニング

あのマンガの伝説のトレーニングを体験

「SPORTS×MANGA」の「第2章:トレーニング」の展示の様子。

特訓やトレーニングは、スポーツマンガで重要なシーン。ここではいろんなマンガのトレーニング方法を紹介しているほか、「巨人の星」の星飛雄馬が幼少期にボールを投げ続けていた壁の穴を実物大で展示。さらに「はじめの一歩」に登場した木から落ちる葉っぱをジャブの要領で掴み取るシーンや、「弱虫ペダル」における合宿での、4日間1000キロ走破するトレーニングを最新技術で再現しており、実際にトレーニングに挑戦することができる。

星飛雄馬がボールを投げていた壁の穴の実物大で展示。ボールを投げることはできないが、視覚的にその難しさが味わえる。なお作中では「コントロールとスピードにわずかでも狂いがあれば元の方向には跳ね返らん」と語られているが、実際は球がそのまま水平に跳ね返ってくることは重力の関係で不可能。マンガならではの表現である。

「巨人の星」の壁の穴を通す1人キャッチボールとは?

星飛雄馬は幼少期、おもちゃは野球のグローブとバットとボールしか与えられず、遊びとして行っていたのがこの“1人キャッチボール”。野球ボール大の穴に向かって球を投げ続け、屋外にある木の幹に跳ね返って戻ってきた球をキャッチする。鍛錬の結果、球を何度投げても正確に木の1点に命中し、水平に戻ってくるという正確さを誇る。

星飛雄馬がボールを投げていた壁の穴の実物大で展示。ボールを投げることはできないが、視覚的にその難しさが味わえる。なお作中では「コントロールとスピードにわずかでも狂いがあれば元の方向には跳ね返らん」と語られているが、実際は球がそのまま水平に跳ね返ってくることは重力の関係で不可能。マンガならではの表現である。

このコーナーでは実際に自転車を漕ぐことができる。来場者が漕いだ累計が1000キロに到達すると特殊な演出があるので、運がいいとそれが見られるかもしれない。またコース中に何カ所か設定されているポイントを通過すると、作中の名場面が表示される。
このコーナーでは実際に自転車を漕ぐことができる。来場者が漕いだ累計が1000キロに到達すると特殊な演出があるので、運がいいとそれが見られるかもしれない。またコース中に何カ所か設定されているポイントを通過すると、作中の名場面が表示される。

「弱虫ペダル」の1000キロ走破とは?

小野田坂道が所属する総北高校自転車競技部は、4日間で1000キロを走る合宿を毎シーズン行っている。長距離を走るだけでなく、ハンドルを取り替えられたり、ギアを使えなくされたりといった、1人ひとり異なる細工も自転車に施され、各選手が過酷な状況を味わった結果、自転車競技の奥深さを再発見することになる。

このコーナーでは実際に自転車を漕ぐことができる。来場者が漕いだ累計が1000キロに到達すると特殊な演出があるので、運がいいとそれが見られるかもしれない。またコース中に何カ所か設定されているポイントを通過すると、作中の名場面が表示される。

木の葉を掴むトレーニングを再現したミニゲームが楽しめる。手に装着したセンサーが画面内のグローブに対応して動くので、何枚掴み取れるかチャレンジしよう。ゲームの監修はロンドン2012オリンピックのボクシングバンタム級銅メダリストである清水聡選手が行っている。
木の葉を掴むトレーニングを再現したミニゲームが楽しめる。手に装着したセンサーが画面内のグローブに対応して動くので、何枚掴み取れるかチャレンジしよう。ゲームの監修はロンドン2012オリンピックのボクシングバンタム級銅メダリストである清水聡選手が行っている。

「はじめの一歩」の木の葉掴みとは?

ボクサーを目指す幕之内一歩は、プロである鷹村守にボクシングを教えてほしいと頼むが、そこで出された課題が「木から落ちる葉っぱを10枚連続で掴み取れ」というもの。1枚目は簡単だが、葉っぱを落とさずに2枚目を掴み取ることは難しく、ボクシングのジャブのように、拳に力を入れずにシャープに突き出すことが重要。

木の葉を掴むトレーニングを再現したミニゲームが楽しめる。手に装着したセンサーが画面内のグローブに対応して動くので、何枚掴み取れるかチャレンジしよう。ゲームの監修はロンドン2012オリンピックのボクシングバンタム級銅メダリストである清水聡選手が行っている。

パナソニックセンター東京那須さんのチェックポイント!

例えば「巨人の星」や「あしたのジョー」に登場するトレーニングは根性を必要とする特訓ですが、これが「テニスの王子様」だと、乾貞治という選手が開発した“乾汁”という、罰ゲーム用のドリンクが登場します。これはとても飲めたものではなく、この罰ゲームから逃れるために実力以上の力を発揮し奮闘努力するというシーンがあります。紹介されているトレーニングだけ見比べても、時代ごとに違いがあるということがわかると思います。

3必殺技

マンガでしか表現できないテクニックの数々

「SPORTS×MANGA」の「第3章:必殺技」の展示の様子。

ド派手な必殺技の数々は、スポーツマンガの最大の魅力と言っていいだろう。この第3章では、日本の野球マンガ史上初めて魔球が登場したとされる、貝塚ひろし「くりくり投手」から始まる、必殺技の歴史を辿ることができる。そのほか「キャプテン翼」の立花兄弟によるド派手な空中技・スカイラブハリケーンを人形で再現して展示。さらに「テニスの王子様」に登場する「無我の境地」をARで体験することも可能だ。

「キャプテン翼」のスカイラブハリケーンとは?

展示では等身大の人形2体でスカイラブハリケーンを展示。高さはマンガから推測し、約6メートルの天井に届かんばかり。
また人形の横には、高橋陽一描き下ろしの立花兄弟が。これは「チョークアートメーカー」というアプリで描かれたもので、高橋が描いたイラストが、描き順に従ってモニターに再現されている。

双子である立花政夫・和夫によるコンビプレイ。1人が発射台になり、もう1人を高くまで蹴り上げることで、通常のジャンプでは届かない高さから急角度のヘディングシュートを放つアクロバティックな技。

展示では等身大の人形2体でスカイラブハリケーンを展示。高さはマンガから推測し、約6メートルの天井に届かんばかり。また人形の横には、高橋陽一描き下ろしの立花兄弟が。これは「チョークアートメーカー」というアプリで描かれたもので、高橋が描いたイラストが、描き順に従ってモニターに再現されている。

「テニスの王子様」の「無我の境地」とは?

この展示ではARを用い、「無我の境地」発動時のオーラを再現。モニターに設置されたカメラを見つめて集中することで、画面にエフェクトが発現する。ぜひここで「You still have lots more to work on…(まだまだだね)」と決めゼリフを言ってみよう。

関東大会決勝の直前、越前リョーマと切原赤也が非公式戦を行う際、越前が到達したのが「無我の境地」。無意識の状態で己の限界を超え、過去の対戦相手の技を繰り出すことができるという状態。

この展示ではARを用い、「無我の境地」発動時のオーラを再現。モニターに設置されたカメラを見つめて集中することで、画面にエフェクトが発現する。ぜひここで「You still have lots more to work on…(まだまだだね)」と決めゼリフを言ってみよう。

パナソニックセンター東京那須さんのチェックポイント!

熱量とか覇気のようなものって実際には目には見えないけど、確かにあるものだと思います。それを目に見えるようにしているのがマンガならではの表現なんじゃないかなって。それを私たちの目でも見られるようにPanasonicのテクノロジーで再現したのが「無我の境地」なので、ぜひ体感してみてください。