ときめきだけじゃない!女性向けマンガ誌・コミックライドivy特集|編集部員に“らしさ”を聞いてみた

マイクロマガジン社の女性向けWebマンガ誌・コミックライドivy(アイビー)が、2025年3月20日に創刊2周年を迎える。「あなたと物語をつなぐ」をテーマに、令嬢・令嬢ロマンスものを中心としたコミカライズ作品を数多く展開しているコミックライドivy。また男性向けマンガ誌・コミックライドに掲載されていた女性向け作品を独立させる形で誕生したという、少々異色の経歴を持つ雑誌でもある。

しかし創刊からの年月が浅いこともあり、コミックライドivyでどんな作品が読めるのかまだ知らない人もいるだろう。そこでコミックナタリーでは、同誌の編集部員にインタビューを実施。代表作4作とともに、コミックライドivyの“らしさ”について聞いてみた。

取材・文 / 大湊京香

コミックライドivyってどんな雑誌?
コミックライドivy ロゴ

2023年3月にマイクロマガジン社より創刊された、女性向けのWebマンガ誌。「あなたと物語をつなぐ」をテーマに、令嬢・令嬢ロマンス作品を中心としたコミカライズ作品を多数連載している。雑誌は毎月20日頃に各種配信サイトで配信。また掲載作品は、マイクロマガジン社のレーベル作品をすべてまとめているWebマンガサイト・ライコミにも掲載され、一部話数の無料公開なども行われるため、「まずは第1話を読んでみてから……」ができるのも特徴だ。

コミックライドivy 公式サイト

ライコミ 公式サイト

コミックライドivyの代表作品はこちら!

「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」
漫画:宙百 原作:辺野夏子

「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」

「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」

あらすじ

周りから“悪役令嬢”と呼ばれているルルフィーナは、王子に婚約破棄される舞踏会の前後1週間を何度もループし続けていた。しかしある日、不思議な声に導かれ幼少期にまで一気に時が巻き戻る。その日は、彼女の人生を狂わせる大きな事件が起きた日だった。巻き戻りを利用して、悲惨な過去を変えようとするルルフィーナの姿が描かれる。

担当編集から一言!

転生ものとは違ってキャラクターの中身が入れ替わったりするわけではないので、不器用なルルフィーナが七転八倒しながら奔走する姿が見どころです。そうして過去に救うことができなかった人たちを救い出し、幸せになるのを見届け涙するシーンは本当に胸がいっぱいになります。また、かつての婚約者であるドミニク殿下とのなんとも言えないじれったいやり取りも必見です!

第1話を読む

「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」
漫画:なき 原作:伊賀海栗

「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」

「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」

あらすじ

精霊の加護がなく、家族から虐げられているアリーチェ。異母妹の身代わりに冷酷非情で有名なジョエル公爵と婚姻を結ぶことになるが、わがままで男好きという根も葉もない噂によってジョエルから冷たい態度を取られてしまう。しかしめげずに健気に振る舞っていると、ジョエルは少しずつ心を開いてくれて……。

担当編集から一言!

アリーチェが嫁いできた当初は表情もなく淡々としていたジョエルが、だんだんとアリーチェに惹かれていき、優しい表情を見せてくれるようになる変化が魅力です。デート回では当初からは考えられない温かい表情を見せてくれますので、ときめくこと間違いなし! 甘々な初デートをお楽しみください。

第1話を読む

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」
漫画:香月あこ 原作:もり

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」

あらすじ

伯爵家令嬢のシャルロットは、少々男勝りゆえに“狂犬令嬢”と呼ばれ、これまでに10回婚約を破棄されてきた。本人は淑女であろうと努めているが、その努力はなかなか人に伝わらない。そんな彼女だが、元婚約者の結婚式で冷徹と噂されるライツェン王国の宰相・レオンハルトから突然に求婚されて……。お転婆なシャルロットと、彼女に対してだけはデレデレのレオンハルトのすれ違いラブコメディが展開される。

担当編集から一言!

「狂犬令嬢」と揶揄される猪突猛進ガールなシャルロットと、シャルロットが好きすぎて変態ストーカーと化しているレオンの噛み合わなさが見どころの本作。お互いのことが大好きなはずなのに、斜め上の突飛な発想で加速していく勘違いをそれぞれの視点で楽しんでいただけたら嬉しいです!

第1話を読む

「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」
漫画:式部玲 原作:紫月音湖

「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」

「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」

あらすじ

物語の舞台は竜が人とともに生きる国・メルトシア王国。城下町で花屋を営む少女・フィオナは、ひょんなことから珍しい竜の卵を孵してしまう。まだ幼い竜は、その成長過程での経験をもとに、人々を守る聖竜にも世界を滅ぼす暗黒竜にもなりうるという。彼女は生真面目で女性慣れしていない竜騎士の団長・ヴィクトールと仮初の夫婦となり、子竜を聖竜にするべく育成をすることになる。

担当編集から一言!

モフモフの子竜が見せる、かわいくて時に人間のような挙動に癒されます。それだけでなく、竜騎士団長を務める強くてカッコいいヴィクトールがフィオナに向ける純情っぷりは、ギャップ強めで愛おしさ増し増し! ロマンスだけでなく迫力と躍動感あるアクションも見どころです。

第1話を読む

編集部員インタビュー

ivyのヒロインは“強い女”が多い

──今回コミックライドivy編集部からは編集長の原さんと、編集部員のMさん、Sさん、Nさんにご参加いただきました。まずは「令嬢・令嬢ロマンスもの」をメインに展開しているコミックライドivy(以下、ivy)の創刊の経緯を、改めて教えてください。

 コミックライドに掲載されていた作品を独立させた形になります。コミックライドは男性をターゲットとした雑誌ですが、一時期から令嬢ものを多数取り扱うようになりまして。作品数も増えてきたところで、明確に男性と女性のターゲットを分けるためにivyの創刊に至りました。

──男性向け雑誌で女性向け作品が増えるのは不思議な現象だなと思いましたが、何かきっかけがあったのでしょうか?

 もともと弊社ではそんなに女性向け作品を展開してこなかったのですが、「組長娘と世話係」のヒットがあったり、女性編集者の人数が増えていったりしたこともあり、女性向け作品を増やしていく流れができたんです。ほかの出版社さんで、男性向け媒体で令嬢作品を展開するところはけっこうありまして、需要的にも悪くないだろうと。実際掲載してみても、女性向け作品だからといって読まれないということはあまりなかったので、男性にも女性ものを垣根なく手に取って読んでもらえるだろうという感触はありました。

「組長娘と世話係」1巻

「組長娘と世話係」1巻

──今、令嬢ものは人気ジャンルの1つで、世に多くの作品が送り出されています。ほかの媒体と比べてここがivyの独自性だ、と言える部分はありますか?

 女性編集の好みの部分もあったりはするんですけれども、キャラクター性に関しては自立心がある“強い”女性が多いと思いますね。

編集部員M そうですね。やっぱり“強い女”が個人的に好きなので、作品にも反映されているとは思います。もちろんivyには小動物系のヒロインもいるんですけど、結果的に何かしら自分の軸や芯を持ってる女の子が多いですね。

 あとは世界観や設定の部分でオリジナリティのある作品を手がけるようにしています。メリーバッドエンド(※)だったり、何回も何回も時間が巻き戻ったり。例えば「呪われ侯爵様の訳ありメイド」のヒロインは令嬢らしい令嬢ではなく、仕事に生きる女の子が描かれていますし、「不機嫌な公爵様はウソ発見器付き令嬢の取説をご所望です」では嘘を見つけると身体が震えるという、ちょっと特殊な女の子がヒロインとして描かれます。

(※)物語において、登場人物の誰かにとってはハッピーエンドだが、当人以外や読み手などから見たときにはそうでないと思われる結末のこと。

不器用ながらがんばる女の子、ボケ続ける令嬢、花屋の町娘……振り幅広い代表作

──ivyの代表作4作についてもお話を聞かせてください。それぞれの見どころを伺っていければと思うのですが、まずは「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」からお願いします。

編集部員M 「巻き戻り」は、一定期間の巻き戻りを何度も何度も繰り返していた令嬢・ルルフィーナが、ある日を境に4歳まで巻き戻ってしまうことから始まる物語です。いとこを死なせてしまった事件をきっかけに悲惨な過去を背負うことになった彼女が、巻き戻りを利用して、よりよい未来のために七転八倒しながら行動する姿には心打たれるんじゃないかなと思います。死なせてしまったメイドを生かすこともできましたし、第4話では事件の真相を知っただけでなく、希薄だと思っていた家族からの愛情も知ることができて。作品の魅力がぎゅっと詰まっている回だと思います。

「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」第4話より。
「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」第4話より。

「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」第4話より。

──成長したときの記憶もある分、4歳にしては落ち着いていて利発的な様子も印象的でした。

編集部員M ルルフィーナは転生者ではないですし、巻き戻り前のささくれ立った心と貴族としての矜持を持ったまま巻き戻ったので、なかなか素直になりきれない部分があって。読者さんからするととっつきにくい印象が最初はあると思うんですけど、そういう女の子が不器用ながらがんばっていく姿は心に響くと思います。

──「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」では冷酷非情と言われるフォンタナ家の公爵・ジョエルと、妹の身代わりとして嫁いだ令嬢・アリーチェの物語が描かれます。1巻時点ではなかなか2人の距離は縮まらなかったですが……。

編集部員N まだ単行本には収録されていないのですが、第10話と第11話でようやくアリーチェとジョエルのデート回が来るんです! やっと2人がイチャイチャしはじめます! 家族から虐げられ、つらいことしかなかったアリーチェの表情がだんだんと緩み、明るくなってきました。読者さんからも、ヒロインが幸せになるところが見たいですという感想をいただいていたので、やっときた!というところでイチオシのシーンになります。

「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」第10話より。喫茶店デートで、ジョエルのふいな動作にドキドキが止まらないアリーチェ。

「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」第10話より。喫茶店デートで、ジョエルのふいな動作にドキドキが止まらないアリーチェ。

──一際コメディ色が強いな、と思ったのは「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」でした。

編集部員N シャルロットとレオン、2人とも“変な子”なのがこの作品のすべてです(笑)。原作を活かし、2人の視点を混在させた状態で物語が進むのも特徴的でして、お互いの視点でずっと思い違いと暴走をし続けながら物語が進んでいくのが面白いと思います。そんな“ボケ続けワールド”に新しいキャラも加わってきて、やっとツッコミが来た!と思うんですが、この子もなかなかにボケまくるので、いつまでもツッコミが不在のまま展開されます。

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」第1話より。
「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」第1話より。

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」第1話より。

──作品を読むと本当にその通りだなということがよくわかりました(笑)。続いて「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」は、代表作の中で唯一令嬢が主人公ではありませんでしたね。

編集部員S そうなんです、主人公のフィオナは街の花屋の娘でして。すごくまっすぐな性格なので、ヒーローのヴィクトールのことを異性ではなく、竜を育てるという使命をまっとうするためのパートナーとしてしか見ていないんです。一方のヴィクトールも竜騎士団長というカッコいい役職ながら女性慣れしておらず、2人してアワアワしているさまを見るのが楽しいかなと思います。特に第2話で、ヴィクトールが使用人たちにフィオナのことを婚約者として紹介するシーン。普段のカッコいい彼からポンコツになる姿を見ることができますし、それを見た後に、このドキドキを信じちゃいけないと自分を諌めるフィオナの姿もかわいらしいです。

「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」第2話より。使用人たちに婚約者としてフィオナを紹介するヴィクトールだが、緊張のあまり噛みまくってしまう。

「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」第2話より。使用人たちに婚約者としてフィオナを紹介するヴィクトールだが、緊張のあまり噛みまくってしまう。

──今後、びっくりする展開が待ち受けていると伺いましたが……。

編集部員S 実はこの後、不穏なシーンが出てくるんです。国同士の陰謀が渦巻く片鱗が見えてきて、あまり少女マンガで見ない展開が起きるので、読者の想像しているものを裏切っていけるのではないかなと。作家さんはアクションシーンも得意とされる方なので、そのあたりにも注目です。