ときめきだけじゃない!女性向けマンガ誌・コミックライドivy特集|編集部員に“らしさ”を聞いてみた (2/2)

ヒーローから迫られる見開きは「スチル絵みたいにしましょう!」

──12月25日には新刊3タイトルが刊行されるとのことで、各作品の見どころも教えてもらえたらと思います。まずは「私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~なので、全員破滅は阻止させていただきます~」ですが、ivyの中では最長となる6巻が発売されますね。

 「私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!」はコミックライドで一番最初に出た令嬢作品なんです。ヒロインと攻略対象のヒーローが、燃える王都の中、千年の眠りにつくというメリーバッドエンドからスタートする作品でして。物語の舞台が乙女ゲームなこともあり、たくさん入れられたキュンキュン要素は見どころかなと思います。またその中で、主人公が“脳筋”張りにガンガンと立ち進んでいくんですよね。その姿は、男性が見てても面白いなって感じると思います。

編集部員M やっぱり主人公のイリスが、“力こそパワー”な脳筋令嬢なのが面白いと思います。だいたいのことは力技で解決する部分が爽快なんですが、それだけじゃなくって、彼女は本来相対するはずのヒロインにも優しいんです。そこが見ていて安心感がありますね。

──特に印象的なシーンなどありますか?

編集部員M 作中で「土痘」という流行病が蔓延するのですが、イリスやレゼダが一生懸命ワクチンを開発して広めるも、結局全員は救うことができなかったと悔やむシーンがあるんです。「もっと助けられた」と泣くイリスに対して、「残った未来を大切にしよう」と前を向けるような言葉をかけるレゼダ王子。そして2人の間で“共犯”という共通の言語が生まれた部分にはグッときました。あとは随所で入れ込んでいる見開きシーン。たまゆき先生の描く、勢いある見開きページはすごく気持ちがいいですし、メリバ感強めのシーンでは先生と「ここはスチル絵みたいにしましょう!」とキャッキャしながら制作しています(笑)。

「私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~なので、全員破滅は阻止させていただきます~」2巻第9話より。

「私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~なので、全員破滅は阻止させていただきます~」2巻第9話より。

──最新刊ではどのような展開がされるのでしょうか。

編集部員M 6巻から新章が開幕します! 回避したはずのメリバの火種がくすぶり始めて、これまで順調に成長してきた弟のニジェルに“ドS調教騎士”の影が垣間見えてきます。新キャラとして隣国の王女様とその護衛も登場し、不穏な動きをしていた男子生徒も動き出すので、その3人がどうやって絡んでいくのかを楽しみにしていただきたいです。

──続いて「呪われ侯爵様の訳ありメイド」は1巻が発売になりますね。どんなところが魅力ですか?

編集部員N とにかくヒーローのシリルのビジュアルが圧倒的に“優勝”。彼自身は悲惨な過去を持っていて、何もかもを諦めたネガティブなイケメンなんです。一方、ヒロインのローラはひたすら明るい圧倒的な“ポジティブ光属性”。2人の絡みはまだほとんどないんですけど、きっと相性がよさそうだな、と思える巻になっていると思います。

──シリルは青年になったり、幼い男児になったり、犬になったりとさまざまな姿かたちに変形しますよね。

編集部員N 実は第6話の扉絵の猫もシリルなんです。彼の一族には、いろんなものに変身する呪いが代々受け継がれていて、そのせいで悲惨な目にもあってきました。ただ、悲劇のヒーローポジションのイケメンはおいしいので、ぜひ彼のいろんな姿を見ていただきたいです。

──(笑)。最後に「不機嫌な公爵様はウソ発見器付き令嬢の取説をご所望です」は2巻発売となりますが、先ほども少し話に出た通り、オフィーリアのウソを見抜くと身体が震えるという体質はかなり特徴的ですよね。

編集部員M そうですね、彼女はその特殊すぎる体質がゆえにもともと家に引きこもっていたんですが、そんな世間知らずの子が、ストラーニ公爵の目に留まったことをきっかけに外に飛び出していく。そこが見どころポイントの1つかなと思いますし、読んでいくと雛鳥の巣立ちを見ている感覚になれると思います(笑)。あとは長官室のイケメンたち。ストラーニ公爵は罪を犯した貴族を取り調べる刑部省の長官室長を務めており、彼を取り巻く長官室メンバーがみんな部類の違うイケメンたちなんです。彼らとオフィーリアとの関わり合いは楽しんでいただけるかなと思います。2巻だとストラーニ公爵の笑顔が見られるので、彼の笑顔を観てオフィーリアが震えるのかどうかを楽しみにしていただきたいです。

「不機嫌な公爵様はウソ発見器付き令嬢の取説をご所望です」1巻第3話より。
「不機嫌な公爵様はウソ発見器付き令嬢の取説をご所望です」1巻第3話より。

「不機嫌な公爵様はウソ発見器付き令嬢の取説をご所望です」1巻第3話より。

私がこの作品を一番愛しているから、私に理解できていないわけがない

──令嬢ものの面白さ、楽しみ方はどんなところにあると思いますか?

編集部員M 主人公像がしっかりしているところがいいところかなと思います。ジャンルとして大きい分、どの作品も他作品との差別化が意識されているので、その違いを見るのが楽しいです。私は主人公が何をするのか、何をしてくれるのかに期待をするタイプなので、例えばさっき話に出た「ウソはつ」の主人公がウソに反応して床に転がっているのを見るだけで面白くて、“愛いやつ”って思えてきますね。

編集部員S 私はヒロインとヒーローの関係性の違いを楽しんでいます。令嬢ものって、ある程度“絶対幸せになるよね”みたいな保険があると思うんですけど、その中でなんとか差別化を図ろうとして出てくる部分が面白くて。

──例えばどういった違いがあるんでしょう。

編集部員S 家柄の問題がよく出てきますが、相手が貴族なのか庶民なのかによって2人の関係性が変わってきてしまいますよね。その違いによって、その後の言動や、キャラクター自身の人生観も異なってくるかなと思うと、まったく別の作品になるので面白いです。

編集部員N 私は華やかなドレスやロリータ服がすごい好きなので、服装に注目してしまいます。かわいい服を着た女の子が好きで、彼女たちが自由に勝手に生きている様子を眺めているだけで幸せなんです。庶民系の服でも中世とか近代の服ってめちゃくちゃかわいいと思っていて。ヒロインちゃんがいろんな服をいろんなパターンで着てくれているだけでもう眼福です!

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」イラスト

「10回婚約破棄された私が冷徹公爵様に溺愛されるなんて罠ですか?」イラスト

──ivyの作品づくりで大事にしていることがあれば教えてください。

編集部員M 担当編集は作家さんにとって一番最初の読者になるので、読者目線で読むことを大事にしています。加えて、編集者としてネームのどこが気になった箇所で、どう足りないのか、どう変えていったらよさそうかを、案に起こして作家さんと揉んでいく作業が多いです。

編集部員S 私も、まず1周目では読者として読ませていただき、そのとき感じたものを青字でネームなどに書き出しています。2周目、3周目で改めて編集者としての指摘を混ぜるのですが、特にキャラクターがその場面で感じていること、思っていることは意識するようにしていますね。

──と言いますと……?

編集部員S キャラクターが何か行動を起こすときって、その前段階で感じたことをもとに動くはずだと思っていて。なので作家さんの中にある感情と、私が読んで受けた感情がすれ違っていたら、そこをすり合わせていく作業が必要だなと。作家さんの個性や感性はできるだけ潰したくないので、打ち合わせでどうアウトプットしていくかを相談しています。

編集部員N 「私がこの作品を一番愛しているから、私に理解できていないわけがない」という気持ちを持つことも大事だなと思いますね。ありがたいことに私の担当作は私が好きな作家さんに描いていただいているので、「あなたの描く、これが見たい!」と熱量を持って伝えるようにしています。原作の魅力的なところとマンガ家さんの技をかけ合わせて、作家さんの個性が光るような作品づくりというのは常に心がけていきたいですね。

創刊2周年に向けジャンルを拡大、メディア化も目指したい!

──ivyは2025年3月に創刊2周年を迎えます。創刊から今日に至るまで、どのような変化を遂げたと感じますか。

 やはり作品のバリエーションは豊かになりました。今後は令嬢もの以外のジャンルにも裾野を広げて、いろんな趣味嗜好を持っている読者さんにも楽しんでもらえたらなと思います。

編集部員M 読み切りで令嬢ものだけでない、さまざまな作品にチャレンジできたのもよかったです。作家さんやレーベルの可能性を探っていく場として活用できました。

──読者からの反応は何かありましたか?

編集部員M SNSでivyの作品が面白いって書いてくれている読者の方がいらっしゃって。作品単体で読む読者さんの方がとても増えてきている中で、レーベルのくくりで認知してくれる方がいてくださるのはうれしかったです。

コミックライドivy vol.22

コミックライドivy vol.22

──では最後に、話せる範囲で構いませんが、創刊2年に向けた意気込みを教えてください。

 今も少し話に出ましたが、読み切りを軸に和風ファンタジーや現代ものなど、さまざまなジャンルを展開していきたいですね。女性が好きな作品をどんどん出していけるレーベルになればなと。そして今はコミカライズがメインですが、ゆくゆくはオリジナル作品も視野に入れていきたいです。

編集部員M 現状はコミカライズの作品群がivyを支えてくれているので、その柱をベースに、台風の目のようにジャンルを拡大していきたいです。ivyで描きたい、ivyを読みたいって作家さんたちや読者さんに思ってもらえるように、イチ編集として走り抜けていければと思っています。

編集部員S 来年度から作品の幅を広げられそうなこともあり、女性が好きなさまざまなジャンルの作品を生み出していければと思います。令嬢もの飽きちゃったな、と思っている方にも手を伸ばしていただいて、マンガそのものを楽しめるような作品づくりをしていきたいです。

編集部員N 私はかわいい女の子が大好きなので、コミカライズ・オリジナル問わず、かわいいヒロインをいっぱい生み出していけたらなと思います! それに伴ってイケメンでカッコいいヒーローもたくさん生み出していきます。

 あとはメディア化も目指していきたいところ。出版社としては本をいかに売るのか、というところを考えねばならないのですが、メディア化は大きな風になるかなと考えていますので、アニメ化はもちろん、ジャンルによってはドラマ化も視野に入れ、全作品で狙っていきたいと思います!

プロフィール

編集長・原(ハラ)

コミックライド、コミックライドアドバンス、コミックライドivy、コミックELMO、コミックRougeの編集長。ぶんか社でマンガ編集の経験を積んだのち、2017年にマイクロマガジン社にマンガ編集者として就職。コミックELMO、コミックRougeを立ち上げる。2022年に全レーベルの編集長に就任。近年の担当作は「組長娘と世話係」「レベル1から始まる召喚無双」「救い、巣喰われ」など。

編集部員M

コミックライドivy、コミックELMO、コミックRougeの編集部員。コミックライドivyでは「私が聖女?いいえ、悪役令嬢です!~なので、全員破滅は阻止させていただきます~」「元悪役令嬢、巻き戻ったので王子様から逃走しようと思います!」「真面目系天然令嬢は年下王子の想いに気づかない」「不機嫌な公爵様はウソ発見器付き令嬢の取説をご所望です」などを担当。

編集部員S

コミックライド、コミックライドivy、コミックRougeの編集部員。コミックライドでは「冒険者ギルドが十二歳からしか入れなかったので、サバよみました。 THE COMIC」、コミックライドivyでは「竜騎士さまとはじめるモフモフ子竜の世話係」、コミックRougeでは「白金は春に染む」などを担当。

編集部員N

コミックライド、コミックライドivy、コミックRougeの編集部員。コミックライドivyでは「心を閉ざした公爵閣下と婚約したはずなのに、なぜか大切にされてしまってます!」、「呪われ侯爵様の訳ありメイド」、コミックライドでは「『お前ごときが魔王に勝てると思うな』と勇者パーティを追放されたので、王都で気ままに暮らしたい THE COMIC」などを担当。