コミックナタリー PowerPush - COMIC it

恋愛だけのマンガじゃ物足りない 大人オタク女子のための新マガジン

リアルな性の問題をどう描いていこうかと悩んでいた

──おふたりの作品についてもお聞きしたいのですが、雪広さんの「少年王女」は元々月刊シルフ(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)で連載されていた作品です。COMIC itに移籍することになった経緯を教えて下さい。

雪広 「少年王女」の主人公のアルベールは、王女様の身代わりになって女の子として生きていくんですけど、成長するに従って身体も変わっていくし、声変わりもあるし、ゆくゆくは精通もある。そういうリアルな性の問題をどう描いていこうかと悩んでいたんですよ。シルフの若い読者の方がショックを受けたら嫌ですし。でもこの作品は、性差から生じる齟齬や亀裂を描く物語でもあるので、避けては通れない。

たらちね でもCOMIC itなら描ける! となったんですね……!

雪広 そうですね(笑)。掲載誌を変えることで今後はそういう本質のところも、エグく描いていきたいです(笑)。

COMIC it Vol.1の表紙ラフ。実際に使用されたもの以外にも、双子のイラストは複数の案があった。

──雪広さんは、COMIC itのイメージキャラも描かれてますよね。この双子のキャラはどんなイメージで描かれたんですか?

雪広 担当さんから「男女の双子で」というオーダーがありまして、リアルな恋愛モノでなく、乙女ゲーでもBLでもないというCOMIC itのテーマに合うように、敢えてキラキラすぎないようにしましたね。創刊号のカバーもこの双子の成長した姿を描かせていただいて。発売日がバレンタインなので、チョコのお花をポイントに持ってきました。

たらちね ヨーロッパっぽい雰囲気ですよね。シルフの時より大人っぽい感じがします。

雪広 絵の塗り方、色の選び方は普段とは意識して変えましたね。ほかの新しい作家さんたちの新鮮なイメージを邪魔したくなかったので、COMIC it ならではのイラストや雰囲気を目指しました。

取材旅行は弾丸で、3日で3都市!

──「グッドナイト、アイラブユー」は、モラトリアム中の大学生・大空くんが主人公の旅行記というか、成長物語になるんですかね。

たらちね 両方ですね。

──旅行に加えて、家族のお話でもあるのかなと思いました。

たらちね 私の育った家庭は、父が小学生の時に他界しているのと、親戚でも若くして亡くなる方が多いという環境でした。だから思春期に、家族の問題を考える機会が多かったのではないかと思います。主人公の大空くんがお母さんを末期ガンで亡くすことからこの物語は始まるのですが、ガンの人がどんな雰囲気なのかも見てきたので、彼の気持ちによりリアルに寄り添えるのではないかと……自分の経験やそのときに感じた気持ちを元に描いていけたらなと、思います。

雪広 取材にはフランス以外も色々行かれたんですか?

たらちね はい、弾丸旅行だったんですけど、3日で3都市回りました……。

雪広 すごい! さっき、旅行が好きとおっしゃられてましたけど、よく行かれるんですか?

たらちね はい! 元々旅行好きなんですけど、姉が5年ぐらい前から海外に住んでいるので、姉の元へよく行くんです。日本の物資を届けたりするために……! 何度も行くうちに、大阪に旅行に行くより海外に行く方が身近な感覚になってしまったような気がします(笑)。それを担当さんに話したら「旅行にまつわる話を描きませんか」って言ってくださって、描くことになりました。

COMIC it Vol.2の表紙ラフ。キャラクターのアップではなく、シチュエーションを重視した引きの絵を使用している点が印象的だ。

──3月発売の2号目の表紙イラストはたらちねさんが描かれるんですよね。

雪広 めっちゃオシャレですよね。引きの絵ってなかなか表紙にさせてもらえないですよ。普通なら視線こっち向けて!って言われる(笑)。

たらちね これは「グッドナイト、アイラブユー」の取材で行ったフランスのパリの中心地にあるサンジェルマン・デ・プレのカフェに行って、写真をたくさん撮っていたので描いてみたものです。

雪広 作品のキービジュアルを見たときも思ったんですが、色使いが個性的ですごく素敵。縁取りにピンクを使うとか、地図の色のピックアップとか、なかなかできないですよ。

たらちね うわーありがとうございます……!

刺激を受ける作品がいっぱい読めるんじゃないかな

──では最後に、読者の方に一言お願いします。

たらちね 大空くんの成長や、彼の家族の問題もこれから色々と出てきますが、まずは旅行をしたくなるようなワクワク感とか、飛行機に乗って、目的地に向かう時の高揚感を感じてもらえたらな……と思います。

雪広 私の作品は移籍作品なので、目新しさはないと思うのですが、移籍によって作品の表現の幅が広がり、新しいことに挑戦できるようになったので、よりパンチを与えられる作品を提供できるのではないかと思います。自分で言いながらハードル上げてますけど(笑)。それに、たらちねさんを始め、センスのある若い作家さんたちが揃っているので、刺激を受ける作品がいっぱい読めるんじゃないかと思います。

COMIC it vol.1 / 2015年2月14日発売 / 540円 / KADOKAWA アスキー・メディアワークス
COMIC it vol.1
新連載作家陣
  • 茜田千「さらば、佳き日」
  • oimo「オゲハ」
  • 墨田モト「線上の犬」
  • たらちねジョン「グッドナイト、アイラブユー」
  • 中川イツキ「ダブルレッドライン」
  • 中条亮「ドージン活動、はじめました!?」
  • 藤谷陽子「ひそひそ-silent voice-」
  • 雪広うたこ/企画原案:武蔵野ぜん子「少年王女」
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雪広うたこ(ユキヒロウタコ)
雪広うたこ

11月26日生まれ。代表作に月刊シルフ(KADOKAWA アスキー・メディアワークス)で連載された「うたの☆プリンスさまっ♪」のコミカライズなど。ゼロサム(一迅社)で連載されている、高殿円原作による「魔界王子 devils and realist」は2013年にアニメ化されている。

たらちねジョン
たらちねジョン

1月20生まれ。別名義にたらつみジョンがあり、BABY(ふゅーじょんぷろだくと)などでも活躍している。COMIC it vol.1より、初の少女マンガ「グッドナイト、アイラブユー」を連載開始。