イケメンが胸キュンなセリフ言ってても、お母ちゃん目線になっちゃう（笑）

──COMIC itがターゲットとする読者層が本格派大人オタク女子ということで、まずは「本格派大人オタク女子とは？」というところからお話ができればと思います。

雪広うたこ　自分が子供の頃って、同世代の子が主人公の作品を、同じ目線で楽しんでいたと思うんですよ。だけどアラサーになると、中高生くらいのイケメンが胸キュンなセリフ言ってても「でも持久走とか運動会の玉入れがんばるんだよね　かわゆいのう」とかお母ちゃん目線になっちゃう（笑）。

たらちねジョン　10代のころはヒロインに自己投影したり、感情移入したりしてましたが、今は物語を俯瞰で見たり、時には斜めから見てしまうようになっちゃいました（笑）。作品とちょっと距離感を持てるというか、それは大人になったからとれるようになった距離感なのかな……と。それが10代のころとは違う「大人」になったからこその物語の楽しみ方ではないかと思います。

雪広　そう「大人」というのが大事。作品やキャラに対して客観的な目線を持てるようになると、大人オタク女子になるのかなと思いました。

──たらちねさんは、大人オタク女子はどんな人だと思いますか？

たらちね　洋服や音楽、映画や旅行など、色々な興味がある中のひとつにマンガという趣味があって、それぞれにお金を投資できる層が大人オタク女子かなって思います。旅行が好きでマンガも好きな人なら、旅行雑誌のTRANSIT（講談社）も買うし、COMIC itも買う……って感じで。幅広く色々なジャンルの趣味に興味を持っていて、そして色々な文化を取り入れられる人の事かな……。

雪広　大人になると好きなことに使えるお金も増えるしね。

たらちね　あとどの趣味の知識も、結局マンガやオタクに繋がるというか、行きつくっていうのはあります。私は旅行が好きなんですけど、旅先で「これ、マンガで読んだ場所だ！」ってわかって巡るのは楽しいですしね。服とかでも「あのキャラクターが着ているブランドだ！」って発見できるとうれしい。そうやっていろんな角度からオタクを楽しめるのは、大人になったからかな～と思うんです。

オタク女子たちは大人になってもキャッキャさが欲しい

──最初「女性オタク向け」というと、乙女ゲーム的な作品を指すのかと思ったんですが、COMIC itのラインナップを見ると、ちょっと違いますよね。

雪広　COMIC it作品の主人公は大人の男の人が多いですよね（笑）。乙女ゲーとかの逆ハーレムものって、少女マンガ的なフォーマットなんですよね。ヒロインに感情移入して、いろんな男の子にドキドキする。今は乙女系のマンガ誌が多く出版されてますが、キャラ年齢は10代が中心で、大人の男の人たちが活躍するマンガが読みたいな……となった時に、そういった作品が掲載されている少女マンガ誌というのはなかなかない。

たらちね　大人の男の人の話を読みたいってなったら、青年誌とか乙女系より世代が上の女性誌を読むかですよね。でもOLの恋愛みたいなのが読みたいかっていうと、それもちょっと違う。恋愛モノだとしてもリアルすぎる作品は引っかからないというか……。

雪広　COMIC itにも恋愛モノもあると聞いたのですが、リアルなものではなくて、ちょっと変化球の恋愛モノだそうで。あとオタク女子たちは大人になっても、キャッキャさが欲しいんです！ セリフもリアルな言葉より、現実ではなかなか言えないような微妙なニュアンスを残してほしい。青年誌でも女性誌でもなく、大人の男の人が活躍する話が読みたいって人も、COMIC itの読者層になるんじゃないですかね。

たらちね　すごい。大人オタク女子が具体的になってきましたね（笑）。