コミックナタリー Power Push - アニメ「コメット・ルシファー」シリーズディレクター中山敦史×コミカライズ担当chisato対談
懐かしさ溢れる本格ジュブナイルSF アニメの見どころを4コマ作家が取材
「面白ければOK」の現場をまとめるシリーズディレクターの葛藤
──描きやすかったキャラクターはいますか?
chisato 最初にネタが浮かんだという点では、ロマンとカオンかなあ。気持ち的にはソウゴですが。
中山 主役や準主役はストーリーの中で心が大きく動いていくので、キャラの扱いが難しいですよね。それに比べるとカオンやロマンは安定感があるので、不安定なソウゴたちと合わせるとバランスが取れるんだと思います。本編でも絡む場面がすごく多いんですよ。
chisato そうですよね。ロマンと許嫁のカオンが、あとから登場するフェリアの母親代わりっぽくなっているのを見て、おてんばかと思いきや母性の強いキャラという一面もあるのだなと思いましたから。
中山 最初カオンはソウゴのことが好きなのに、ソウゴは突然現れたフェリアに惹かれて……という三角関係になる予定だったんです。でも今の状況だと、ソウゴは石、カオンはフェリアに熱中しちゃってて。
chisato そんなベタな三角関係になるはずだったのに、それぞれが趣味の世界に没頭するマニアックな展開に……。
中山 絵コンテ段階までは予定通りだったんですけどね……。実作業に入るとアニメーターさんたちが自分で解釈して描くんですが、そこで面白いと思った要素を拾い上げていったらこうなったというか。まあ面白いからいいか、って現場の勢いで作ってるところはありますね。
chisato その解釈をまとめるのが、シリーズディレクターさんなのですか?
中山 ええ。僕の場合は現場監督でもあるので、併せて判断をしています。設定やシナリオを制作現場で確認しつつ、監督の考える世界観へと導く役割というか。
chisato 判断する基準ってあるんですか。
中山 監督ご自身が「面白ければOK」と言っているので、実はあってないようなものなんです(笑)。物語の進行上守るべき関係性やキャラクターの性格があるんでしょうけど、「バランスが取れて面白くなるなら変えてね」とおっしゃる方なので……。やりがいもありますが、どこまでならいいのかという判断はやっぱり難しいです。
中高生も楽しめる、ジュブナイル小説みたいにワクワク楽しいアニメに
──最後に改めて、今作を通して見どころなどをうかがえますか。
中山 基本となるテーマはジュブナイルです。主人公のソウゴがフェリアと出会うことで冒険が始まるわけですが、どんな心境で旅に出るのか、困難にどう立ち向かうのか。鍵になる彼らの成長を丁寧に描けたらと思っています。
chisato 確かに、見ていてジュブナイルの名作小説みたいなワクワクを感じました。派手な成長譚ではないけど、ソウゴの心が耕されて豊かになっていく様子がわかるんですよ。大人が聞いたら狭い範囲の話に感じるけど、子どもには大冒険って物語がありますよね。そんな雰囲気があります。少年が育ての親や住み慣れた街から自らの意志で離れていく展開がとてもツボで、いいお仕事をいただけたなあと。
中山 ジュブナイル小説とかがお好きなんですか?
chisato そうですね。ただ読むのが遅いので数は少ないのですが、名作と呼ばれるものを少しずつ読んでいます。有名すぎますが、「ハリー・ポッター」シリーズも好きですね。これもハリーという主人公が成長していきますが、それとも少し近いですよね。
中山 最近はアニメも対象年齢が上がる傾向にありますが、中高生にも楽しんでもらえる作品にしたいと思っています。
chisato コミカライズ版が載っているブシロードも中高生向けですもんね。マンガを読んだ人にはキャラクターたちをかわいいと思ってほしいし、その気持ちのままでアニメに感情移入してもらえたらなと思います。マンガでは「本編以外にここを膨らませたい」という場面を描いていますが、例えば、ド・モンとソウゴはこんな関係って知識を入れておくとアニメがより楽しくなる情報を、見る前に伝えられる存在になればうれしいです。
中山 僕はコミカライズ版で、モウラが出てくる話が読みたいな。マスコットなのに見た目はかわいくないし、正直ここまでインパクトのある奴になるとは思ってなかったんですが、この作品を語る上では絶対に外せないキャラなんです。
chisato あっ、了解です! 相関図にもメモしておきますね!
放送情報
- TOKYO MX:毎週日曜22:30~
- KBS京都:毎週日曜23:00~
- サンテレビ:毎週火曜24:00~
- BS11:毎週火曜24:00~
chisato(チサト)
「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST 3シリーズ」(日本コロンビア)のジャケットを担当。そのほかカードゲーム、ソーシャルゲームなどのイラストで活躍中。
中山敦史(ナカヤマアツシ)
エイトビット初のオリジナルアニメ「コメット・ルシファー」でシリーズディレクターを担当。監督の菊地康仁を支える。