「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」特集| “強い女の子”に惹かれるぼる塾・田辺智加が作品を読んで気づいたこと、気づいてほしいこと (2/2)

田辺さんからアトラへ「あんた、こっちでもうまくやれるよ」

──田辺さんは自身のXのアカウントで「私なんてーって言葉を撲滅したい。褒められたら世の女性全てがまぁねーって返せるようになったらいいなー」というポストをずっと固定にしていますよね。「シンデレラの義理姉」で、特に序盤のアトラは「シンデレラに比べて私なんか」と比較するような考え方を持っています。そんな姿を田辺さんはどう見ましたか?

やっぱり比べちゃいますよね。いくらシンデレラが仕組んでいたこととはいえ、あからさまに理不尽な扱いを受けていたら、そりゃあ比べて落ち込んじゃうと思います。近くにキラキラしている子がいると「うわっ」と眩しさを感じちゃうというか。

「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」1巻より。
「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」1巻より。

「シンデレラの義理姉に転生したけどふたりの王子に溺愛されています」1巻より。

──光があるから影もある。彼女が光だから、私は影なんだと思ってしまいそうです。

そうなんですよ。でも人と人を比べるのは本当によくないですね。アトラとシンデレラは、姉妹だから比べられちゃいやすいのかな。

──それでも田辺さんがアトラに惹かれたように、シンデレラもジークヴァルトもアトラの魅力に気づいています。アトラの「私なんて」という考え方を払拭してあげるために、田辺さんならアトラにどんなふうに声をかけてあげたいですか?

アトラは毎日家事もがんばって、それだけじゃなく、馬に乗って弓で狩りもしてますよね。前世で努力したことが身になっているから、前世ではつらいことがあったかもしれないけど「あんた、こっちでもうまくやれるよ」っていうのは伝えたいです。私も最近、よく思うんですよ。今までは「無駄だ」って思っていたことも、全部今の仕事に活きてきているなって。だから過去の経験は必ず身になるよって、アトラにも伝えたいです。

──きっとアトラの自信につながる言葉だと思います。

私自身もそのときは「私は一体何をやっているんだろう」って思うことも多々あったんですけど、親からお金を借りて遊び回っていたのも(笑)、今の仕事につながっていますし。人生で無駄なことは1つもないって伝えてあげたいですね。

あんりは自分のことでは泣かない、誰かを守れなかったときに泣く

──今回、田辺さんにお話を聞くということを踏まえて、改めて作品を読み返していたんですけど、弱さを抱えながらも芯の強さを武器に困難に立ち向かうアトラの姿を見ていたら、どこかあんりさんに似ている部分があるんじゃないかと思ってしまって。

あはは(笑)。

──弱さも持っているけれど、周りからは強い女性だと思われていて、自分もそうありたいからそんな人間として振る舞っている。でも本当は弱音を吐きたいところもあって……というのが、ぼる塾のYouTubeで田辺さんと2人で本音を話しているときのあんりさんに少し重なる部分を、勝手ながら感じてしまいました。

確かにアトラはあんりみがあるかもしれないですね(笑)。どうしてもね、ぼる塾だと私とはるちゃんがいるから、あんりは「自分がしっかりしなきゃ」って思ってるんですけど、意外とおっちょこちょいだったり、抜けてたりするところもあるんですよね。あんりはあまり自分のことでは泣かないんです。誰かのことを守れなかったときに泣くんですよ。「守れなかった!」って言って。

──カッコいい(笑)。

なので「誰かを守りたい」という思いを持っているという部分でも、似ているところがあるかもしれないですね。あんりは少女マンガが好きなので、この作品もたぶんすごく好きだと思います。これはあんりに勧めたいな。それで言うと、シンデレラははるちゃんにちょっと似ているかもしれない。こんなふうに病んではいないけど(笑)。

田辺智加

田辺智加

田辺さんが「シンデレラの義理姉」の世界に転生したら?

──ちなみに、田辺さんがこの世界のアトラのポジションに転生したら、どんな行動を取ってどんな生活をしていくと思いますか?

私は大嫌われ者じゃないですかね。

──大嫌われ者?

妹ばかり持て囃されていることに腹を立てて、もしかしたら私、妹のことをいじめているかもしれない(笑)。

──そうなると、シンデレラが田辺さんに心を開く展開が遠のきそうなので、このマンガのストーリー通りにはならない可能性がありますね。

ならないです。

──「いつかあなたの口から名前を教えてね」と、アトラが優しくシンデレラに声をかけてあげるシーンもないってことですよね。そうなると話が進まない(笑)。

そうなんですよ、転生しただけで終わり(笑)。だって、今の私はぼる塾の田辺として楽しい人生を歩んでいるんですよ。それが突然この世界に転生して、いきなり村の男の子たちに「シンデレラをいじめるな!」って言われて。「は? いじめてないんだけど!」って怒っちゃう。自分で食べるものを狩るのも無理ですね。

──田辺さんほど食への熱い思いはあっても、狩りはなかなか難しいと。

自分で狩りは無理だ……。

──アトラは自分がおとぎ話の「シンデレラ」の世界に転生したことに気づいて、その後の展開もわかったうえで嫌われ者の義姉として振る舞っていた部分もありましたよね。アトラのようにシンデレラが王子様と結ばれるまで我慢すれば、その後に自由が待っているかもしれないですが……。

いやあ、なんで私がシンデレラのことを幸せにしなきゃいけないのか!(笑) 私は自分の人生を楽しみたい。しかも今の田辺としての記憶があるんですよね? いや、無理!(笑) 私は今の人生が楽しすぎるから……。

田辺智加

田辺智加

──それはそれでとても素敵な回答だと思います(笑)。アトラは前世で培った能力を「シンデレラ」の世界でも駆使していますが、田辺さんは現世の力で活用できそうなものはありますか?

お菓子作りしかないですね。ジークヴァルトに美味しいお茶菓子を用意して、そこでなんとかなるかもしれない。そうしたら私に野次を飛ばしてくる街の人たちにもお菓子を配ります。

──甘いお茶とお菓子が好きなジークヴァルトはそれで田辺さんに惹かれるかもしれませんし、街の人たちは食べ物で黙らせることができますね(笑)。

それがいいですね。未来が見えて来ました。ああ、苦しかった。

──ぼる塾の皆さんはこの世界に転生したらうまくやっていけそうですかね?

たぶんあんりはうまくやっていくだろうなと思います。アトラと同じルートを歩んでいけそう。はるちゃんはわからないですね。

──きりやさんのお調子者っぽいところが、うまく作用するかもしれないですよね。

はるちゃんのことはわかんないな(笑)。あはは(笑)。

──この世界でどうとかではなく、そもそもきりやさんのことがわからない(笑)。

はるちゃんがこの世界でうまくやる……? いや、でもやるか。はるちゃんは楽しみそうですね。はるちゃんは人を恨んだりとか、妬み、嫉みみたいなのが一切ない子なので。たぶんうまくやるでしょうね。酒寄さんはどうするだろう。誰とも仲良くならないけど、1人で使い魔を見つけてうまくやっているかもしれない。ネズミとか、動物とも仲良くなりそう。私が一番うまくやっていけないだろうな。

──田辺さんは、まずシンデレラとの関係を成立させられないから、話が進まない(笑)。

シンデレラに嫉妬してるから(笑)。

「支えてくれる人は必ずそばにいるよ」と気づかせてくれる

──「シンデレラの義理姉」は1巻発売後すぐに重版がかかり、多くの読者に支持されている作品です。田辺さんはこの作品のどんな部分が、多くの人の心を掴んでいるのだと思いますか?

先の読めない展開に毎回驚かされて、釘付けになる感じですかね。あとドキドキがありますよね。恋愛面ももちろんですけど、この3人がこの先どうなるのかっていうところで、目が離せないです。

──2巻の終わりも「あ、もうそこまで明かしてしまうんだ。これからどうなるんだろう」と気になる展開で終わりますよね。

そういうのって、昔は隠して隠して時間をかけてから「ドン!」って明かすイメージがあったんですけど、こうやって早い段階でいろいろ明かされるのも、スピード感があっていいですよね。

──飽きないテンポ感がありますよね。この記事を読んで、田辺さんが勧めているなら読んでみたいと思う読者もたくさんいると思います。改めて、この作品を手に取ってみようかなと迷っている読者にオススメするとしたら、どんなメッセージを送りたいですか?

どんなつらいことがあっても立ち向かっていく女の子の、その強さが学べます。あとは「支えてくれる人は必ずそばにいるよ」っていうことがよくわかるのが、この作品のいいところだと思います。最近、人と比べて「私は愛されてない」って思う人がけっこう多いなって感じるんです。みんな絶対、誰かしらに愛されているはずなのに、どうしても人と比べて「私は愛されてない」って。でもこの作品を読んでみてごらんって思います。「私なんて」って思っている人にこそ読んでもらいたい。

田辺智加

田辺智加

──アトラが自分でも気づいてないような魅力を、シンデレラとジークヴァルトは知っていて、それが愛に変わっているわけですもんね。

意外と人って見ていてくれますからね、自分のいいところを。最近出会った彼(ジークヴァルト)ですら気づいてくれてるんですから。自分ではなかなかわからないかもしれないけれど、絶対に近くにいますから、こういう人たちは。

──それを気づかせてくれる作品でもあると。

そうなんですよ。私、周りの人に「私は愛されてないから」って言われると、自分も苦しくなっちゃうんですよね。「私から見たらけっこう愛されているけどね」と思いながら、「あんたがそう言うなら、じゃあ私もそうなのかもしれない」って、それをもらっちゃうんですよ。私は愛されている自覚があったのに、あんたがそう言うなら私も愛されてないのかなって、怖くなってきて(笑)。負のループに陥っちゃうんですけど、このマンガを読めば、それが吹き飛びます。

──ちゃんと誰かは見ていてくれている。その自覚が芽生えるマンガだと。

そうですね。私も自分では自覚しているんです。愛されているっていうのは(笑)。

──田辺さんはすごく愛されていると思います。

自分で言うのもなんなんですけど、自覚があって。自覚がある私が読んでもより気づかされますし、もし自覚がない人がいるなら、これを読んで気づいてあげてほしいですね。「あなたは愛されているよ」って、「支えてくれる人は必ずそばにいるよ」って。

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プロフィール

田辺智加(タナベチカ)

1983年10月18日生まれ、千葉県出身。酒寄希望とのコンビ・猫塾と、あんりときりやはるかのコンビ・しんぼるの2組が合流し、2019年にお笑いカルテット・ぼる塾を結成。「女芸人No.1決定戦 THE W」では2020年、2023年に決勝進出を果たした。趣味はアニメ、美容、韓国ドラマ、女子力を上げること。スイーツに造詣が深いことでも知られ、お菓子作りが得意。大好きな「名探偵コナン」に登場する江戸川コナン(工藤新一)の誕生日の際には、レモンパイを作ることも。

2024年8月1日更新