ちゃおっ娘のみんな集まれー!「ちゃおコミ」リニューアル記念“ちゃおから生まれた”つづ井と止まらぬ思い出トーク

ネイルやバングル、指輪……当時のちゃおに付いてきた豪華付録

あとは、当時ほかの作品もそうだったと思うんですけど、「エンジェル・ハント」って作中に出てきたアイテムがちゃおの付録に付いてきたのがすごく印象に残ってます。

「エンジェル・ハント」より。作中でキーアイテムの1つとなったネイルカラーは、ちゃお本誌の付録としても登場した。

──3巻に出てくるネイルとかそうですよね。

そうそう! あとバングルとか。それが付録に付いてきて、「ああ、本物だ!」みたいな。よく「オタクがグッズで欲しいのはキャラの顔がどーんって書いたTシャツとかじゃなくて、キャラが作品の中で使ってたマグカップとか、そういうのが欲しいんだ」みたいなこと言いますけど、それの先駆けのような感じがして。私の場合はキャラクターと同じ物を持ってるっていう、マンガで見たものが現実の世界にあるっていうその感覚と喜びを知ったのがちゃおの付録だなあって思います。

──アイテムも作中にさらっと出てくるわけでなく、きちんと重要なシーンで使われてたりするから、特別感がありましたよね。

すごく夢のあるアイテムでしたよね。「魔的★◆♣がーるふれんど」の主人公の子が持ってる指輪、あれこそ重要なアイテムじゃないですか。あれも付録で手に入るというのがすごかった。

──当時……1990年代後半から2000年代前半にかけては、まだ紙の付録、例えばキャラクターの絵が書いてあって、組み立てて何かになるよっていう、そういう付録が多かったと思うんですけど、ちゃおは他誌よりもひと足先に付録でペンが何本もついてくるとか、それこそネイルが付いてくるみたいな豪華さがあって。もちろんマンガも読みたいんだけど「えっ、雑誌を買っただけでこんな付録がもらえるの!?」って、次号予告を見るたびに興奮してた記憶がすごくあります。

(元ちゃお編集者) まさにおっしゃる通りで、それらは「現物付録」って言うんですけども。それまではマンガ雑誌の付録っていうと、小冊子とかレターセットとか紙の組み立て付録とか、いわゆる紙ものだったんですけど、当時のちゃおはネイルとかブレスレットとかネックレスとか、そういった現物のものを導入して。その頃にちゃおが部数で他誌を逆転して、100万部を突破するという時代だったんです。それはやっぱり付録に現物を導入したというのが非常に大きい要素だったんですが、こうやってお話をお伺いして、ちゃんと刺さってくれていたんだなと感慨深くなりました。

──いやあ、めちゃくちゃ刺さってましたし、ときめいてましたよ。

本当に。確か練り香水とかもあったと思うんですけど、当時の小学生は自分で練り香水なんて手に入れられないじゃないですか。でもその付録の練り香水を休みの日に友達とジャスコ行くときにちょっと付けていくみたいな。

──イオンじゃなかった時代ですね。

当時はまだジャスコです。ジャスコに行って、100均のプリクラ撮るみたいな感じでした。

ちゃおの発売日は1日中、なんなら前日からそわそわ

──つづ井さんは少女マンガ誌の中でも「特にちゃお!」っていう感じだったんですか?

私はむしろなかよし、りぼんを一切読んでなくて。最初に見た少女マンガ雑誌がちゃおで、ずっと面白かったからほかに移る理由もなくてちゃおを買い続けてたんだと思います。それこそTwitterにも書いたんですけど、同級生の女の子が三姉妹で、1人ずつちゃお、なかよし、りぼんを毎月買っていて、もうそれがうらやましくてうらやましくて。でもなかよしとりぼんを自分で買って読みたいとか、ちゃおを買うのやめて別の雑誌を買おうとかは全然思ったことがなかったです。

──ちゃおは自分のお小遣いで買っていた?

自分のお小遣いでした。田舎だったんですけど、町の本屋さんが、毎月発売日になるとちゃおを1つだけ袋に入れて配達してくれるんですよ。その日は私も1日そわそわして、学校から走って帰るみたいな。それくらい楽しみで。でもたまにちゃおの発売日がいつもより1日遅いときがあって、そのときは情緒不安定になるんですよ。「ないんだが!?」みたいな。「今日あると思って1日過ごしたんだが!?」みたいな感じで。その日はもう夜ご飯のときとかも心ここにあらずみたいな感じでしたね。「今日だと思ってたんだが!?」みたいになってて。

──わかります、発売日が1日ずれただけでもどかしいですよね。発売日に買えて読めたとて、「ああ、この続きを読むにはあと1カ月も待たなきゃいけないんだ……」と軽く絶望を覚えるくらいだったのに。子供にとってのひと月って果てしなく長いものに感じてましたよね。

長いですよね。だってその月のちゃおを何回も読み返して、友達の家に持って行って、友達とも「ここ面白いよね」って言いながら読んで。ほんで次の号が発売される前日にはもう1回読んで「整えとくか」みたいな感じで迎えていたのに。

(元ちゃお編集者) 聞いていてすごくうれしいんですけど、当時編集部にいたときにそういう話を聞いてたらプレッシャーで潰されてたかもしれないですね(笑)。やっぱり作家さんの原稿が落ちる落ちない問題っていうのはちゃおでもありましたので。でも今こうやってお話を聞くと報われた感じがします。個人的な所感で申し訳ないんですけど、本当にうれしいですね。

──いやあもう、当時の私たちはそれを読むためにひと月のサイクルが回っているぐらいの感覚でしたから。

ほんとにほんとに。でもそんな子いっぱい、いますよね。

つづ井の絵日記より「今日 推しが死んだ」。

──そんな子だらけだと思います。ちなみにつづ井さん的に「これってちゃおで得た癖だな」みたいなのってあったりしますか?

私、よく絵日記でも推しキャラが死んでしまうっていうことを描いてるんですけど。好きになったキャラクターが死にやすいんです。今まで初めて死んだ推しって「NARUTO」の月光ハヤテだと思ってたんですけど、今日話していて「エンジェル・ハント」の天音のお父さんだったのかもって気付きました。当時から死の匂いに惹かれてたのかもしれないです。

「ぷく天」のすぎよし町内新聞を眺めるのが好きだった

──「エンジェル・ハント」のほかにも、もう1つ“特に語りたい作品”として事前に挙げていただいてたのが「ぷくぷく天然かいらんばん」でした。シリアスな展開を含んだ「エンジェル・ハント」とはガラッと変わって、とてもほのぼのとした作品かと思うのですが、これを挙げられた理由は?

竜山さゆり「ぷくぷく天然かいらんばん」より。主人公のぷくぷくと、ハムスターの山田さん。

もうとにかく当時からめちゃくちゃ好きで。これもすごい模写して描いてた覚えがあるんです。動物たちが人格を持ってしゃべるのっていうのを真似して、当時飼っていたうちの猫をキャラクターみたいにしたり、「ぷくぷく」っぽい絵柄で描いたりしてました。キャラクターだとハムスターの山田さんが好きで。「ぷきー」とか言うのがめちゃくちゃかわいくて。山田さんも真似してめっちゃ描いてたなあと。ほかのキャラはしゃべるんだけど、山田さんは「ぷきー」しか言わないのも好きで。

──特に好きだったお話とかってあります?

「ぷくぷく天然かいらんばん」1巻より。単行本にはおまけとして「すぎよし町内新聞」が掲載されている。

ええと、ちょっと待ってくださいね。今手元のコミックスを読みますので。……私、やっぱり山田さんたちが活躍する回がすごい好きで。縁の下の力持ちというか、いざというときに出てくる印象が強いキャラクターがたまにメインの回があるとうれしかったですね。あとコミックスのおまけページというか、話と話の間にぎっしりと描かれていた「すぎよし町内新聞」。これを眺めるのが本当に好きで。こんなに手描きでぎっしりと文字があって細かいのに、今見返しても本当に読みやすいしかわいい。

──これかわいいですよねえ。

当時、小学校で新聞係っていうのがあって。私も月1で新聞を書いてたんですけど、なんかすぎよし町内新聞っぽく書きたいなと思って、同じちゃおを読んでる友達と、「ぷく天」……わっ「ぷく天」て!(自分の口から自然と出てきた略称に驚く) 懐かしいな。「ぷく天」読んでる友達と、一緒に研究して書いてたのをすごい今思い出しました。いやあ、大好きだったなあ。でも「ぷく天」とか無限にやってるイメージがあったんですけど、コミックスは10巻で終わりなんですね。「エンジェル・ハント」も4巻なんだって思って。

──そうそう、私も「Dr.リン」とかって20巻ぐらいやってるイメージが勝手にあったんですけど、この間改めて読み返そうと思ったら8巻で終わってることにびっくりして。だからそう感じさせるほど当時は濃密な時間を過ごしてたんだなってことですよね。

そうですね。毎月毎月1話をめちゃくちゃ大事に読み込んでいたから、それですごく濃密な時間を味わっていたのかなあと、今となっては思いますね。

みい子の悩み、今見ると
「え、小学生ってこんなことで悩んどんか?」と思う

──そんな中でも「こっちむいて!みい子」は現役でちゃおで長期連載してる作品です。つづ井さんも過去のツイートで挙げていたようにお好きな作品だと思うんですけど、みい子たち、ついに中学生になったんですよ(参照:ちゃお長期連載作「こっちむいて!みい子」中学生編スタート!記念グッズも発売)。

おのえりこ「こっちむいて!みい子」34巻では、みい子たちが小学校を卒業し、ついに中学校へと入学する。

らしいですね!

──みい子やまりちゃんがおっちょこちょいだったり、竜平くんがみい子に素直になれなかったり、そういう基本的なところは変わらないなあって思いながら今も愛おしく読んでいるんですが、つづ井さん的に、こんなに長く愛されている「みい子」の魅力はどこにあると思いますか?

(前身となる)「みい子で~す!」も「こっちむいて!みい子」もコミックスを買って読んでたんですけど、リアルタイムで読んでるときはみい子自身の悩みとか、「わかるわかる、あるある!」っていう、小学生の自分にとってすごい身近なリアルなものだったんですよ。だけど今大人の目線で見返すと、「え、小学生ってこんなことで悩んどんか?」って思うんですよね。大人から見たらすごい些細なことだったり、「こうすればいいじゃん」っていうのがわかってるような悩みだったりするんですけど、それをみい子が1話かけて悩み抜いて、みい子以外の登場人物もみんな真剣にそのことを考えてたり、振り回されてたりしていて。

──今の自分だったら「こんなことくらい全然乗り越えられるよ」って思うようなことを、当時の小学生の自分はもう、とんでもないことのように悩んでいましたよね。

そうそう。それをおの(えりこ)先生はなんでこんなにずっと描き続けられるんだろうって、大人になって思います。みい子の悩みがずっとその世代の子の目線なんですよね。

──最近だと、LGBTに関するエピソードが掲載されていて。

あ、読みました!

「こっちむいて!みい子」35巻に収録されている「なつきという子」では、LGBTに関するエピソードが描かれた。

──あれもやっぱり今の時代に沿ったお話というか。大人たちの間でも視野を広げていこうとしているときに、子供たちにも身近なこととして触れさせてあげるというのは、いつの時代にも寄り添った作品なんだなと思いました。

「みい子」で扱ってるテーマって、例えば月経のこととか、たまに真面目なテーマもあったと思うんです。でも嫌な気持ちで読んだ記憶がないんですよ。マイナスなイメージが一切ない。だから、おの先生は「これを読む少女はどう感じるのか」っていうのを、すごく意識された描かれ方をしてるのかなって勝手に思っていて。そのLGBTのお話のときも思ったんですけど、繊細なテーマだからこそ「子供が読む」っていうことを大前提にして、わかりやすく身近なものとして捉えられるように、細かな配慮って言うとちょっと堅いかもしれないですけど、その気配りを感じられるのはおの先生の優しさだと思いました。

(元ちゃお編集者) ちょっと舞台裏をお話させていただきますね。当時の「みい子」は、新入社員だったり、若い社員が担当に就くという風習がありまして。自分もちゃおに配属されたとき20代だったので、おの先生の担当に就かせていただいて。そこで、おの先生に子供時代の記憶というのをものすごく根掘り葉掘り聞かれたんです。

へええ!

(元ちゃお編集者) なので、当時の編集者の幼少期のエピソードも作品に反映されていたんです。先ほどつづ井さんがおっしゃったような受け止め方を読者はしてくださるんだなあっていうのがわかって、作り手側としてはなるほど、ありがたいなと思いました。

それこそさっき私が言った、お姉ちゃんの本に鼻血をこぼしちゃってとか、当時の自分は本当にくだらないことで世界の終わりのように悩んだり、パニックになってドジにドジを重ねたり。それって小学生の頃はよくあると思うんですけど、そんな感じでみい子の悩み方ってすごいリアルで。よく考えたら全然とんでもないことは起きてないなって思う話もあるんですよね。ファンタジーの世界で大事件が起こるというわけではなくて、日常の中でみい子っていう1人の小学生の女の子が、大人から見たら些細なトラブルや悩みにぶち当たって、それに一生懸命悩む。一生懸命、それを乗り越えようとがんばっている。そういう小学生にとって「リアルだな」と思える話をずっと描き続けることのすごさっていうのは、大人になって気付くなと、こうやってお話ししてて改めて思います。