「セスタス -The Roman Fighter-」|連載20余年、ついにTVアニメ化!「なぜ今」の問いに熱く答えるスタッフインタビュー

敗者や持たざるものも描いているのが「セスタス」

──ザファルの名言に限らず「セスタス」には、読み手の琴線に触れるセリフやシーンが数多く出てきますよね。皆さんは、心に刺さっている名言やお気に入りの場面はありますか?

「セスタス -The Roman Fighter-」より、ザファルの登場シーン。
原作マンガ「拳闘暗黒伝セスタス」1巻より。ルスカに負けたセスタスを「何も失ってはいない。経験を得たのだ」とザファルが鼓舞する。©技来静也/白泉社

村松 いろいろありますが、強いて言えばエムデンが人目もはばからず地味な訓練をしている場面でしょうか。それを見たセスタスの仲間たちは彼のことを鼻で笑うんですけど、ザファルだけはすべてを理解して、「大抵の人間は、『常識の枠』を踏み越えた者を狂気とみなす。妥協からは並の成果しか生み出せぬと知りながらな。他者と違う頂(いただき)を志す者は、常に孤独なのさ」と言う。あそこは何度読み返してもグッときますね。

川瀬 私は、セスタスとルスカが初めて戦った回が印象に残っています。セスタスは初めて総合格闘術の使い手と戦って自分の非力さを知るのですが、ザファルに励まされて、そこからまた這い上がって明日を掴もうとする。まあ、ベタといえばベタな展開なんですが(笑)、非常に少年マンガ的で、印象に残っている場面です。あそこでザファルが言う、負けはしたものの「何も失ってはいない。経験を得たのだ」というセリフも感動的です。

樋口 ザファルは、かつてルスカの父・デミトリアスと死闘を繰り広げて、膝を壊されてしまうんですよね。要するに、力及ばず夢破れているわけですが、かといって命を賭して戦ったわけだから、悔いは一切ないという。その姿にはやはり胸を打たれるものがあります。ちょっとクサい言い方になっちゃいますけど、自分でもそういう気持ちで1つひとつの仕事をしたいと思います。

峯岸 皆さん、ザファルがお気に入りのようで(笑)。彼はその時々の状況をうまく説明してくれるし、作品のリズムを作り出しているキャラですよね。彼の目を通したセスタスの成長を描くだけでなく、それ以外の世界観すべてをも解説させるという、かなりの離れ業を技来先生はザファルにやらせているような気がします。そういった“解説役”としてザファルが働く場面が、私は面白いと思っていますね。

「セスタス -The Roman Fighter-」より、エムデンの登場シーン。

大友 私は村松さんと同じで、エムデンが絡んだ話が一番心に残っています。絶対に手の届かない高貴な女性を一途に思い続け、地味な訓練に明け暮れる彼の姿には男の美学を感じます。ネタバレになるから詳しくは言いませんが、エムデン戦は原作の中でも1、2を争う名試合だと思います!

──勝者の栄光だけでなく、敗者や持たざるものの気持ちが描かれていることが「セスタス」の魅力でもありますよね。

大友 物語の途中からセスタスに3人の仲間ができるのですが、彼らも言わば落ちこぼれなんですよ。おっしゃる通り「セスタス」という作品は、選ばれた天才たちの生き様だけでなく、そういう人たちのがんばりも描かれているところがいいと思いますね。誰もがセスタスやルスカのようになれるわけではないということを考えたら、もしかしたら、多くの方が一番共感できるのはあの3人組だと言っていいかもしれません。

今日放送の第3話からが本番と言っても過言ではない

──ちなみにこの記事が公開されるのは、アニメの第3話が放送される日になる予定です。スタッフを代表して川瀬総監督と峯岸プロデューサー、視聴者の方々へひと言お願いできますか。

川瀬 1話、2話ももちろん重要なのですが、物語が本格的に動き出すのは今日放送される3話目からと言っても過言ではありません。絵だけでなく音楽、SE、すべて高いレベルのものに仕上がっていますので、ぜひご覧ください。そして、先ほどから何度も言っていますが、主人公・セスタスとその対戦相手たちの熱い生き様に注目してください。

峯岸 今、監督がおっしゃったように、第3話ではいろいろなことが動き出しますので、今回からご覧いただいても充分楽しめるかと思います。アニメ「セスタス」は、昨今珍しい熱い少年の成長を描いた本格的なエンターテインメント作品。誰が観ても面白い作品を目指していますので、セスタスの奮闘を観て視聴者の皆さんがスカっとしてくだされば、作り手としてこれほどうれしいことはありません。

ファイティングポーズでアニメの必勝祈願をするスタッフ陣(左から白泉社の「セスタス」担当編集者・村松友貴氏、川瀬敏文総監督、バンダイナムコピクチャーズのプロデューサー・峯岸功氏、同事業部の大友佑樹氏、同事業部ゼネラルマネージャーの樋口弘光氏)。