ディズニー&ピクサーによる映画「バズ・ライトイヤー」が、全国で上映されている。同作は「トイ・ストーリー」シリーズに登場する少年アンディが大好きなおもちゃ、バズ・ライトイヤーの原点が明かされるファンタジーアドベンチャー。アンディにとって、バズは人生が変わるほど大好きな映画の主人公だった。そしてこのたび封切られた「バズ・ライトイヤー」こそ、その“映画”を描いた物語だ。
ナタリーでは「バズ・ライトイヤー」の特集を、ジャンルを横断して展開中。音楽ナタリーではTHE RAMPAGE from EXILE TRIBEのRIKU、映画ナタリーではINIの池﨑理人に、本作や「トイ・ストーリー」への愛を語ってもらった。特集第3回として「トイ・ストーリー3」でアンディの日本版声優を担当した小野賢章がコミックナタリーに登場。「なぜアンディがバズに夢中になったのか腑に落ちた」と語る小野は、本作をどのように観たのか。
取材・文 / 村山章撮影 / 曽我美芽
「トイ・ストーリー」よりバズの人間味が出ている
──小野さんが「トイ・ストーリー3」で、おもちゃたちの持ち主であるアンディを演じられたのはもう12年前ですね。
はい、ちょうど20歳になったぐらいでした。「3」のアンディはちょうど大学に進学する18歳ぐらいの設定で、ほぼ同年代でしたね。
──「トイ・ストーリー3」に出演が決まったときのことは覚えていらっしゃいますか?
もちろん「トイ・ストーリー」シリーズは知っていましたから、参加できてうれしかったです。でも「トイ・ストーリー」だからといって、そんなに緊張はしなかったような記憶があります。
──今回の映画は、そのアンディが大好きだったバズ・ライトイヤーが主人公の映画という設定ですが、ご覧になっていかがでしたか?
めっちゃ面白かったです! 入り込んで観ていたので、始まってアッという間に終わった印象なんですけど、まず冒頭の説明がいいですよね。「これはあのアンディが夢中になった映画です」みたいな紹介があって、やっぱり「トイ・ストーリー」につながる話なんだと感じられるのがよかったです。ラスボス的にザーグも出てきましたね(笑)。
──鑑賞するにあたって、事前に情報を入れたりしたんでしょうか。
いえ、今回は何も頭に入れずに観たのでどういう映画になるのかまったく予想がつかなかったんです。宇宙探査船が見知らぬ星に不時着して、みんなを地球に帰すためにバズが一生懸命がんばる。そのがんばった代償が大きすぎることが衝撃でしたね。バズだけが周囲の人たちと時間の流れが変わってしまって、「これってどうなっていくんだ?」と惹き込まれながら観ていました。
──周囲の人間と歳を取るスピードが変わるわけですから、バズにとってはけっこうヘビーな設定ですよね。
そうなんですよ。そこがなかなか切ないところですよね。目線の動きをはじめ、表情もめちゃくちゃ豊かで、表情から細かい感情が伝わってきました。観ていて映像の進化ってスゴイなと思いましたね。
──「トイ・ストーリー」の世界ではバズ・ライトイヤーはおもちゃですけど、今回の映画の中では人間のバズとして登場します。おもちゃのバズと比べてみていかがでしたか?
人間のバズも、やっぱりバズだなと思ったのは、自分1人で解決できると思い込んで猪突猛進してしまうところですね。「トイ・ストーリー」シリーズでも、特に最初の頃のバズからはそういう性格をすごく感じてましたし。おもちゃのバズは、特殊スーツが思うように機能しなくて、飛べないことや、ビーム出ないこととかに戸惑ってましたよね。今回はガジェット類が全部ちゃんと機能しているのが見られたことも、すごく面白かったです。あとやっぱり今回の映画のほうが、バズの人間味がより出ているかもしれないですね。同じスペース・レンジャーなのに新人の面倒を見るのを嫌がるところとか(笑)。
おもちゃのバズとのつながりを強く感じる映画
──アンディはこの映画のどこを好きになったんだと思われますか?
この映画と出会ったときのアンディって、僕が演じた18歳の頃よりもずっと幼かったわけですよね。僕の子供の頃でいえば「スター・ウォーズ」みたいな存在だったと思うんですけど、やっぱり宇宙という設定や未知の生物と戦ったりとか、時空を超えちゃったりするところとか、ワクワクさせるところがいっぱいある。それがアンディを夢中にさせたポイントだったんじゃないかなと思います。
──小野さんが最初に出会って夢中になったおもちゃとか作品って覚えていますか?
なんだろう? とにかくゲームはすごくやっていた思い出があって、今でもずっと好きですね。あとはやっぱり「スター・ウォーズ」のエピソード1は大きかった。アナキン・スカイウォーカーがまだ子供で、ポッドレースに出場する話。子供心にも、あれを観たときの衝撃はすごかったです。やっぱり大人っぽい作品、大人がカッコよく活躍してる姿ってちっちゃい子は憧れますよね。「バズ・ライトイヤー」を観終わったときも、大人になった僕が観たからか、あまり子供向けという印象を持たなかったんですよ。ちゃんとしっかり大人まで楽しめる。バズ・ライトイヤーがとてもカッコよく見えて、ちっちゃい子は絶対あこがれるし、大人までちゃんとしっかり楽しめる映画だったと思います。
──今回の映画でバズのオリジンとも言えるストーリーが明かされるわけですが、今後「トイ・ストーリー」シリーズの見方が変わったりしそうですか?
変わるかな? いや、変わらない気がします。むしろこのバズ・ライトイヤーだからこそ、「トイ・ストーリー」のバズ・ライトイヤーがいるんだなって納得できるというか、本当に違和感を感じなかったんです。むしろおもちゃのバズとのつながりを強く感じました。最初の「トイ・ストーリー」を、この映画を作る前提で作ってたなんてことはないですよね?
──そうですね。今回の映画は完全に後から企画されたものだと思います(笑)。
そうですよね。でも、すごく自然だし、ものすごく上手というか、バズの物語に深みを感じさせる肉付けのされ方をしているなと思いました。
──今回の映画では、バズを1人の人間として扱っていて、持ち前の責任感とか、それゆえの葛藤といった感情が掘り下げられています。おもちゃのバズよりも身近に感じたり、共感する部分はありましたか?
この映画のバズは、自分の責任で宇宙船の仲間たちがこの惑星に滞在することになってしまった。だからこそ自分がしっかり責任を取るみたいな部分は、自分でもそうするかなとは思いました。でも、あそこまでの危険を冒すかって言われたら、ちょっと難しいかもしれないです(笑)。自分を犠牲にして仲間を故郷に帰そうとすることで、時間も心情もバズだけが周囲から取り残されていく展開は、すごく切ない話だよなと思いましたね。
──親友だったアリーシャとも共有する時間や年齢がずれていってしまいますし。
アリーシャとの友情もよかったですね。そういえば彼女は同性婚をしていましたよね。ディズニーって、世の中がジェンダーレスな時代になってきている中で、そういう要素をさらっと入れているところが素晴らしい。ディズニーみたいな大きいところがやってくれることで、やっぱり大勢の人の勇気になると思うんです。観ている人たちの中にも、そういうことで悩んでる人がたくさんいらっしゃって、この映画では、変に際立たせるわけでもなく、さらっと当たり前のこととして見せてくれるのはさすがだなと思いますね。
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現実ではまだまだ体験できないものを見せてもらってる感覚