コミックナタリー Power Push - アニメ「ビッグオーダー」

原作者・えすのサカエ×監督・鎌仲史陽対談 主人公を殺そうとする女が、実は王道ヒロイン!?

「スーパーロボット大戦」みたいなマンガにしたかった

──アニメ化にあたって、おふたりの間ではどんなお話をされたんでしょう?

えすの いろいろ話しましたが「うまく察してくれているんじゃないかな」という思いは、初めからありました。「未来日記」から続投して高山カツヒコさんがシリーズ構成を担当してくださってるので、勘所はわかってくれているし。具体的なお願いをしなくとも、作品のキモである「少年マンガらしさ」とか「プロレス感」みたいな部分をちゃんと共有できているなと感じました。

鎌仲 たしかに。打ち合わせで「プロレス感」というフレーズは出ていなかったけど、僕もまったく同じことを考えていました。例えば1回ちゃんと相手に必殺技を出させてから反撃する感じとか、「ビッグオーダー」は全体にハッタリ感が気持ちいい作品ですよね。

「スーパーロボット大戦」のようにガチャガチャした作品を目指したというえすの。「ビッグオーダー」の能力者たちは、濃いメンツ揃いだ。

えすの 相手の能力を探っていく知的なバトルもいいけど、「ビッグオーダー」は、ゲームの「スーパーロボット大戦」みたいにしたかったんですよ。いろんな技を持ったキャラクターが出てきてぶつかり合う、ガチャガチャした面白さを出せればいいなと思っていて。

鎌仲 ……ただ、アニメではその能力をどう説明するかに悩みましたね。原作では発動時に「歩いた跡が彼の領土となり、領土内の全てを物理支配できる」みたいに、能力の説明が入るじゃないですか。

──バラエティ番組のテロップみたいに、バトルシーンにポコッと出てくるやつですね。

対象を必ず原子レベルに粉砕する弁慶の能力「荒御魂(バトル―オン)」の解説シーン。戦いの中で能力が明らかになっていくのではなく、登場シーンで詳細を明かしてしまうのが特徴的だ。

鎌仲 あれをアニメでやってしまうと、シラけるんじゃないかと思って。そこをなんとかうまく説明すべきか、あえて説明せず進めるかで悩みました。最終的にはアクション的な気持ち良さを優先し説明しないことにしましたが、よく見れば「ああ、そこまでは(能力が)届かないんだ」とか、わかるようにはしてあります。

えすの アクションの部分でいうと、アニメでは各キャラクターの能力が発動する前に前口上が加わっていますよね。最初にひと言喋ってから技名が出る形に。

鎌仲 ええ。アニメだと技を出す前にひと言入れるとリズムがよくなるんですよ。この前口上は全部、えすの先生に新たに考えていただきました。基本的に1人1個なんですが、複数の前口上があるキャラクターもいるので、かなりの数を書いてもらって。

えすの 最初に依頼されたときは「全部考えるのかあ……」って途方にくれましたね。でも、こういう部分がプロレス的な良さなのかなと思います。戦いの最中に技名を叫ぶのとか、本当はおかしいじゃないですか。読者も実際にはおかしなことをやってると思っているはずなんだけど「お約束ごと」として、自然に受け入れてくれる。

鎌仲 完全にスタン・ハンセンの「ウィー!!」のノリですね(笑)。

マンガは自分のテンポで読めるが、アニメは尺が決まっている

──そのほかアニメ化にあたって重視した部分はありますか?

アニメ「ビッグオーダー」場面写真

鎌仲 この作品に限らないことですが、キャラクターの中にある衝動を殺さないようにしています。「このキャラなら、こういうとき、こんな気持ちになるんじゃないか」っていう部分ですね。原作や脚本にないものを足すわけではないけど、感情がドンと出るところは表現を強くしたり。主人公・エイジと妹・瀬奈の関係というのも、アニメではより強調して見せていますね。

えすの 物語の終着点が見えているから、全体を俯瞰してポイントとなる部分を整理できるのがアニメはいいですね。「兄と妹」の要素は構想初期から重要視していたんですが、どういう風に見せていくか、連載では手探りになるので。

鎌仲 そういう強弱の付け方は本当に難しいし、いつも悩むところですね。マンガの場合は、読む人のほうで物語の間合いやテンポを調整できるじゃないですか。行間の部分を想像で補いながら読む人もいれば、ササッと読み進める人もいる。そこの自由が、アニメにはないんですよ。

──たしかに1話分の尺が決められていて、マンガを読み飛ばすようにはいきませんね。

鎌仲 下手をすると、原作の単なる読み聞かせになってしまう。だから、アニメではどこを強調してどういうテンポで進めるかというのが重要な演出になるわけです。このテンポは、例えば脚本の高山さんとか制作スタッフが変わるとガラッと変わったりもするし、もちろん監督としても調整しないといけません。読者がこの作品のどんなところに魅力を感じていて、どう読んでいるかというのをいつも想像しながら作っています。

アニメには、原作ファンだけがわかる伏線も

「ビッグオーダー」のキャラクターたちは、能力の使用前に「オーダー!」と叫ぶ。イントネーションや発動時のSEなど、アニメならではの表現に注目したい。

えすの マンガとの違いという部分では、音の演出も大きいですよね。声優さんの演技はもちろんですが、生活音や効果音とかの表現を楽しみにしてます。能力を発動するたび「オーダー!」って叫びまくる作品ですが、アフレコでも声優さんが上手に演じてくれていました。

鎌仲 マンガ版との比較で言えば、艶っぽさが増すように演出しています。直接的に言ってしまえば「エロさ加減」ですね(笑)。もちろんテレビアニメなので裸を見せるようなことはありませんが、直接的な表現以外の部分で艶っぽさが出るようにしていますので、その辺も楽しみにしてもらいたいですね。

──すでに原作を読んでいる人に注目してほしい点などはありますか?

鎌仲 エイジくんの回想・記憶に関するシーンに、ちょっとした仕掛けをしてあります。原作でストーリーを知っている人は、よく見るとわかるかもしれません。それと、ラストも少しだけ原作とは変えてあります。

えすの 原作読者の方に向けてとはちょっと違うかもしれませんが、単行本8巻はオリジナルアニメBD付きの限定版も出ています。このBDの内容はテレビアニメの伏線にもなっているので、併せて見ると面白いかもしれません。

アニメ「ビッグオーダー」

2016年4月15日(金)25:40~TOKYO MXほかにて放送開始

2016年4月16日(土)24:00~ニコニコ動画にて配信開始

スタッフ
原作:えすのサカエ
シリーズ構成・脚本:高山カツヒコ
キャラクターデザイン:小島智加
監督:鎌仲史陽
制作:アスリード
製作:ビッグオーダー製作委員会
キャスト
星宮エイジ:森田成一
紅鈴:三上枝織
壱与:田所あずさ
星宮瀬奈:久野美咲
デイジー:三咲麻里
星宮源内:鶴岡聡
寸断殺人:林勇
鳴神弁慶:立木文彦
平景清:原田ひとみ
柊義経:立花慎之介
アブラアン・ルイ・フラン:新垣樽助
えすのサカエ「ビッグオーダー(9)」/ 2016年3月26日発売 / KADOKAWA
えすのサカエ「ビッグオーダー(9)」
通常版 / 626円
Kindle版 / 563円

世界を滅ぼすために瀬奈が呼び出した“神”!!

全力で止めようとするエイジだったが全く歯がたたず絶体絶命の状況に。

そこに現れたのは畿内の大破壊で生死不明となっていた柊と殺人。

彼らには世界を救う「切り札」があるというのだが……!

明かされるDAISYの謎、国連が画策する核攻撃、そして柊とエイジの衝突で事態は混迷し…!?

人類の危機が目前に迫る【東京編】を収録した第9巻!

えすのサカエ「ビッグオーダー」/ 発売中 / KADOKAWA
「ビッグオーダー」1巻 / 605円
「ビッグオーダー」2巻 / 605円
「ビッグオーダー」3巻 / 605円
「ビッグオーダー」4巻 / 605円
「ビッグオーダー」5巻 / 605円
「ビッグオーダー」6巻 / 605円
「ビッグオーダー」7巻 / 626円
「ビッグオーダー」8巻 / 626円
えすのサカエ
えすのサカエ

2001年に「鉄道天使」で第11回エース&ネクスト新人漫画賞奨励賞を受賞。2004年に月刊少年エース(角川書店)で開始した「花子と寓話のテラー」で連載デビューを果たす。代表作となる「未来日記」はシリーズ累計400万部を突破し、TVアニメ、TVドラマ、小説、ゲームなど幅広くメディア展開された。

鎌仲史陽(カマナカノブハル)
鎌仲史陽

2012年にOVA作品「名探偵コナン えくすかりばあの奇跡」で初監督を務める。「ビッグオーダー」にはOADから携わっており、テレビアニメ作品の監督をするのは本作が初。