コミックナタリー PowerPush - 映画「アップルシード アルファ」

日本版「アップルシード アルファ」公開記念 荒牧伸志監督×中田ヤスタカ(CAPSULE)対談 SF映画に対する思いとは

士郎正宗「アップルシード」を原作とする映画「アップルシード アルファ」の日本版が、2015年1月17日に全国公開される。シリーズの主人公・デュナンとブリアレオスが理想都市オリュンポスに辿り着くまでの前日譚を、荒牧伸志監督が映像化した今作。メインテーマはPerfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースをはじめ、自身のユニットCAPSULEでも活躍中の中田ヤスタカが手がけている。

コミックナタリーでは公開を記念し、荒牧監督と中田ヤスタカの対談を実施。中田が「アップルシード アルファ」に携わった経緯から、メインテーマ制作の裏側、SF映画に対する思い入れまでを語り合ってもらった。

取材・文/宇野維正 撮影/小坂茂雄

 
mixiチェック

エンドロールは、エンディングから気持ちよく繋がるように

左から中田ヤスタカ、荒牧伸志。

──荒牧監督が手がけてきた「アップルシード」シリーズは、毎回音楽的に注目すべき作品で、これまでもBOOM BOOM SATELLITESや細野晴臣さんが参加されてきました。まずは今回、「アップルシード アルファ」で中田ヤスタカさんにメインテーマの制作を依頼した経緯を教えてください。

荒牧 以前からPerfumeやきゃりーぱみゅぱみゅの曲はよく聴いていて、中田さんの音楽のファンだったんです。それで、実際に今回の本編でも流れていますけど、最初、劇中でCAPSULEの曲を使わせていただけることになって喜んでいたら、新たにエンドロールに流れるメインテーマも書き下ろしていただけるという話になって。「え? 本当にやってもらえるんですか?」って驚いたというのが正直なところです(笑)。

──中田さんは、以前から「アップルシード」のことはご存知でしたか?

中田 もちろん。荒牧さんが最初に手がけた2004年の「APPLESEED アップルシード」の頃から、「あ、こういうのがあるんだ」って気になっていて。最初はジブリの鈴木(敏夫)さんから聞いたのかな?

──ああ、そうだ! ちょうど当時、capsuleはジブリと一緒に作品(※百瀬ヨシユキ監督による「ポータブル空港」「空飛ぶ都市計画」「space station No.9」の連作)を作っていましたよね。

中田 そう。それで気になって観てみたんですけど、もう映像を1秒観ただけで「新しい!」って印象を受ける作品で。音楽も、当時の自分が普段からどんなことをやっているか知っていたミュージシャンがたくさん参加していて、とても気になる作品でしたね。

──今回、「アップルシード アルファ」のメインテーマを手がける際、制作のどのくらいの段階から関わったのですか?

中田 エンドロールに繋がる前のエンディングの映像をいただいたときには、そこにはもう劇伴もちゃんと入っていたんです。オファーを受けた段階で、なかなかそこまで出来上がっていることは珍しくて。おかげでDJをやる時のように音の繋がりまで考えて作ることができて、そういう点では、とてもやりやすかったですね。

──エンディングからエンドロールに入った瞬間に、まったくテイストの違う曲のイントロが始まって、作品の余韻が台無しになることってありますよね(笑)。

中田 ありますね(笑)。そういうふうにはしたくなかったので、ちゃんとキーまで考えて、気持ちよく繋がるように心がけました。

人々がただ疲れている世界にシンクロした

──荒牧監督が「アップルシード」の映画作品を手がけるのはこれが3作目、約7年振りになります。今回、どうしてまた「アップルシード」の作品世界に戻って、新しい物語を語ろうと思ったのでしょうか?

荒牧 2004年の「APPLESEED アップルシード」と2007年の「EX MACHINA -エクスマキナ-」で当時やれることはやりきったかなという思いはあったんですけど、時間が経つにつれて、そこに新しい切り口はないかなってことを考えるようになっていたんです。今回の作品はいわゆるプリクエル(前日譚)で、最近ハリウッドでもプリクエル作品は流行っていますけど、それに影響されたわけではなく。本作で描いているのは、大きな戦争が終わったばかりで、何もなくなってしまって、人々がただ疲れている世界ですが、それが当時の自分の状態ともシンクロするようなとことがあったんですね。

──あんまりシンクロしてうれしい状態じゃないような気もしますが(笑)。

荒牧伸志

荒牧 そうなんですけどね(笑)。でも、正直そういうところがあって。それと近年、自分の作品でフォトリアルという分野を探求していく中で、今回の作品のキーとなるようなビジュアルが浮かんできたんです。何もない世界なんだけど、人間的な手触りだけはあるという。その手触りというのは、人間のエモーションにも繋がるものなんですけど。そういう作品を、もう一度「アップルシード」という世界の中でやりたいと思った。だから、今回の作品は自分にとってこれまでの「アップルシード」とは全然違うもので、とても新鮮な体験になりました。

──当然、10年前や7年前と比べて、CGの技術はさらに飛躍的に進化していますし、「アバター」や「猿の惑星」といったハリウッド大作のおかげでモーションキャプチャーという言葉もすっかり定着しましたけど……。

荒牧 10年前は、まずその言葉の説明からしなくちゃいけなかったので大変でした(笑)。

──ただ、今回はそうした技術的な欲求というよりも、ストーリーテリングの欲求のほうが強かったということですか?

荒牧 そうですね。ストーリーと、自分がイメージした新しいビジュアルが合致した時に、これまでなかったものができるんじゃないかって思いました。

中田 描かれている世界がとてもリアルですよね。画面の中で起こっている出来事だけじゃなくて、他の場所で起こっていることもイメージできるような、そういう未来の世界そのものを体感できる作品だと思いました。

日本版「アップルシード アルファ」2015年1月17日(土)全国ロードショー
「アップルシード アルファ」

世界大戦後の荒廃したニューヨークで戦火を生き抜いた元SWATの敏腕女性隊員デュナンと、その相棒・サイボーグとなったかつての恋人ブリアレオスは未だ戦いの日々を送っていた。終わりの見えない戦いの中、人類が生み出した理想都市オリュンポスでの安息を夢見る2人の前に突如現れた1人の少女。オリュンポスから来たという彼女は謎の追手に追われていた。少女と行動を共にする中で、2人は彼女の身体に秘められた秘密を知ることになる。それは世界を、地球を破壊し尽くすほどの巨大な力の鍵だった。迫り来る更なる最強の追手、今、人類の未来は2人に託された。

キャスト

デュナン:小松由佳
ブリアレオス:諏訪部順一
アイリス:悠木碧
オルソン:高橋広樹
ニュクス:名塚佳織
タロス:東地宏樹
双角:玄田哲章
マシューズ:堀勝之祐

荒牧伸志(アラマキシンジ)

メカニックデザイナーとしてアニメーション界で頭角を現しその後、監督デビューを果たす。2004年には「APPLESEED」を発表。フル3DCG、トゥーンシェーディング、モーションキャプチャーという手法を用いた、画期的作品で日本のファンは元より海外でも称賛の声を集めた。2007年にはその続編「EX MACHINA」を監督し、高評価を獲得。2012年7月公開のハリウッド映画「スターシップ・トゥルーパーズ インベイジョン」の監督を務めている。2013年には映画「キャプテンハーロック」の監督も務め、日本のみならず世界でも支持されている。

中田ヤスタカ(ナカタヤスタカ)

2001年に自身のユニットであるCAPSULEにてCDデビュー。以降、Perfume、きゃりーぱみゅぱみゅのプロデュースをはじめ、アニメ映画「ONE PIECE FILM Z」オープニングテーマ曲や「LIAR GAME」シリーズのサウンドトラック、テレビ・ラジオ番組のテーマ曲制作など多方面にてに活躍中。昨今は日本人初のカイリー・ミノーグへのリミックス提供をはじめ、映画 「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の挿入楽曲に携わるなどグローバルな活動が目覚ましい。その自由奔放かつ刺激的な楽曲群は音楽界のみならず、服飾や美容、映像などクリエイティビティを共有するシーンからも熱い支持を得ている。また自身のレギュラーパーティの主宰・メインアクトを務め、大型フェスやファッションショーイベントなどにも出演している。