総額300万円分早い者勝ち!WebComicアパンダが贈る型破りな新人賞“熊猫杯”って?編集長に聞いてみた

KADOKAWAによるWebComicアパンダは、オリジナルマンガを集めた新ブランドとして2021年7月に生まれた。ホラーコメディ「見える子ちゃん」、異世界コメディ「異世界おじさん」などTVアニメ化された人気作を擁し、今もなおジャンルレスにオリジナル作品の発掘を続けている。そんなアパンダが、開設1周年を記念し、新たな新人賞“熊猫杯(くまねこはい)”の開催を発表。熊猫杯とは、応募はニコニコ漫画とTwitterへの投稿で完了、明確な募集終了日は設けず賞金と参加賞を合わせて総額300万円を早い者勝ちで山分けするという、型破りなマンガ賞だ。

コミックナタリーでは、アパンダの開設1周年と、熊猫杯の開催について、編集長の赤坂泰基氏にインタビューを実施。アパンダが誕生してからの1年間で得た知見と、マンガ賞の“当たり前”を変えてできた熊猫杯の狙いを聞いた。なおインタビュー終わりには、アパンダで連載中の作家陣からのコメントも掲載。新人賞への応募を考えている読者はチェックしてみよう。

取材・文 / 佐藤希

WebComicアパンダとは?

WebComicアパンダロゴ

KADOKAWAのマンガレーベル・MFCから、2021年7月に生まれたマンガブランド。オリジナル作品に注力しており、2021年秋にTVアニメが放送された泉朝樹によるホラーコメディ「見える子ちゃん」、現在TVアニメが放送中の殆ど死んでいるによる「異世界おじさん」などが代表作品として連載されている。コメディ、異世界系のほか、日常ものやグルメ、ファンタジーなどジャンルに縛られない連載陣が強み。ComicWalkerのほか、ニコニコ漫画でも読むことができる。

最大100万円が君の手に、
WebComicアパンダの新人賞「熊猫杯」とは?

熊猫杯2022ロゴ

WebComicアパンダのオープン1周年を記念して、ニコニコ漫画との共催で新設された新人賞。ニコニコ漫画へ作品を投稿し、Twitterで作品のURLとハッシュタグ「#熊猫杯2022参加」をつけてつぶやくことで、応募が完了する手軽さが特徴となっている。受賞作の賞金額は作品の出来によって変わり、編集部が「面白い!」と思った作品には最大100万円が贈られるチャンスがある。賞金総額200万円の配布が終了した時点で作品の応募受付は終了。さらに参加賞として、電子書籍配信サービスBOOK☆WALKERで使えるコイン1万円分を先着100人にプレゼント。参加の手軽さと、応募から最速1週間ほどで受賞作が発表されるというスピード感が持ち味の、新たな新人賞だ。

WebComicアパンダ編集長・赤坂泰基氏インタビュー

アパンダの意味は“全集”、イメージキャラクターの作者はあのマンガ家

──WebComicアパンダ(以下、アパンダ)は昨年7月16日にオープンし、先日1周年を迎えました。そもそもアパンダはどのような成り立ちで生まれたブランドなんでしょうか?

もともと私はコミックアライブという月刊誌の編集部に所属していまして、紙の本誌とは別にWebマンガを担当していたんです。KADOKAWAにはComicWalkerというWeb媒体があって、弊社のマンガ作品であれば、どんな作品でも掲載できるんですよ。そこでいくつかマンガを連載していたのですが、ここ最近は紙よりもWebのほうで読む人が増えて、規模も大きくなったので、アライブと分けたブランドを作ろうという動きになったんです。要は、のれん分けのような形ですね。

──立ち上げるにあたって、当初はどのようなブランドにしていくイメージだったんでしょう。

編集部ができてから実際にアパンダのサイトをオープンするまでは1年ほど期間があったんですが、当初はオリジナルマンガと異世界系のコミカライズの2つの軸でやっていこうということで立ち上がりました。でもComicWalkerには「異世界コミック」というブランドがあるので、もう1軸のオリジナルマンガを集めた新ブランドとして「アパンダ」を立ち上げ、アピールしていくことにしたんです。オリジナルマンガの中でもSNSで盛り上がってもらえそうなマンガを、というコンセプトで、ジャンル的な縛りは設けず、読んだ人たちが話題にしやすいフックがある作品を集めていこうと考えています。

──“アパンダ”という名前の成り立ちも気になっていました。

ギリシャ語で「全集」という意味でして。先ほどもお話した通り、ジャンルに縛りを作りたくないという思いもありましたし、いろんな作品が載っているよ、という意味でいろいろな単語を調べまして、これに落ち着きました。あとは固いイメージにならないように、ロゴにはかわいらしいパンダに登場してもらって。

──ちなみに、アパンダサイト内にはところどころでかわいらしい女の子のキャラクターもいますよね。この子は、連載作家のどなたかが描いてくださったんでしょうか?

私が「のんのんびより」の編集を担当させていただいた縁で、作者のあっとさんに描いてもらいました。あっとさんのサービスで、私も気が付かないうちにイラストの点数が増えていたりするのですが……。

※サイト内のイラストは時期により変わる。

「のんのんびより」作者・あっとによるアパンダのイメージキャラクター。名前はまだない。

「のんのんびより」作者・あっとによるアパンダのイメージキャラクター。名前はまだない。

──ちなみに、この子のお名前は?

まだ決まってません……(笑)。でも、本当に作るかどうかは検討しているんですが、実はこれからアパンダの“編集部便り”みたいなものを作りたいなと思っているんです。紙の雑誌には読者投稿コーナーや編集者自身が発信するコーナーがあると思うんですが、Webマンガにはあまりないですよね。例えば「見える子ちゃん」のことを思い出していただいたときに、「この作品って、どこで連載しているんだっけ? あ、アパンダか」とすぐたどり着いてもらえるよう、編集部発信の企画があったほうがいいかなと思うんです。そこで、アパンダのキャラクター性を強くして、このキャラで印象を強めてほしいと思った次第です。

読者の反応が予想できるノウハウが溜まった

──赤坂さんはコミックアライブ時代は先ほどお話に出た「のんのんびより」を担当され、現在アパンダでは「異世界おじさん」「ドキュンサーガ」「廃バスに住む」なども担当されています。これまでどのような作品に携わってこられたのか、教えていただけますでしょうか。

アライブ時代に初めて立ち上げて担当した作品が「ガールズ&パンツァー もっとらぶらぶ作戦です!」で、ほかには「Re:ゼロから始める異世界生活」や「ハイスクール・フリート」のコミカライズ、オリジナルでは「乙女怪獣キャラメリゼ」「おしえて!ギャル子ちゃん」なども担当させていただきました。ComicWalkerが立ち上がった当初はまだWebマンガがそこまで盛り上がっている時代じゃなくて、ComicWalkerも紙媒体で連載している作品の出張掲載みたいな形が多かったんですよ。その中で、わりと早い時期からオリジナルで注目される作品を目指して連載を始めたのが「ギャル子ちゃん」や「おとなのほうかご」でした。ですので、KADOKAWAの中でWebマンガに関わっている人間という意味では、私は古参のほうかもしれません。

──数々の人気作に携わってこられて、Webマンガの知見もある赤坂さんだからこそ編集長に抜擢されたんですね。アパンダがオープンしてからの1年間を振り返って、いかがでしたか?

スタート当初はかなり意識的にジャンルがバラバラなオリジナル作品を集めて連載をスタートさせたんですが、1年経って各々の感想が見えてきたなと感じています。その中で、こういうジャンルの作品を連載したらこういう感想がもらえるな、というノウハウが溜まってきたなと思いますね。もちろん良かった作品と惜しかった作品はいろいろあるわけなんですけども。

──読者の反応を予想して作品作りに活かせるようになった、と。

そうですね。また、この1年間の大きな出来事と言えば、「見える子ちゃん」のアニメ化。この機会にアパンダのほかの作品も読んでもらえるように、Twitterのプレゼント企画などにトライしたので、そこで「『見える子ちゃん』はアパンダに載ってるのね」という印象はだいぶ持っていただけたかなと思います。これからは「見える子ちゃん」や「異世界おじさん」ってどこの作品?と聞かれたときに、「なんか、KADOKAWAの作品」じゃなくて「アパンダの作品だ」って認識してもらえるようになったらいいなと。

「見える子ちゃん」イラスト

「見える子ちゃん」イラスト

──読者層の特徴も明確に見えている頃かと思いますが、アパンダ読者はどういう方が多いんでしょう?

ComicWalkerとニコニコ漫画では、読者層が少し違うなと感じているんですが、概ねSNSで盛り上がってくれる人が読んでくれてる印象ですね。黙々とたくさんマンガを読んで1人で楽しむのがよい、みたいな人よりは、読んで感想を誰かと話したい人。そういうこともあり、連載では1話ごとに面白いポイントや引きになる要素を入れた作品は喜んでいただいていると思います。これからもより楽しんでもらえるような精度を高めていきつつ、新しい作品をお届けしていきたいですね。

──現在連載されているタイトルの中で、赤坂さんが期待している作品もぜひ伺ってみたいです。

「魔法使いマナと叡智の扉」バナー

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連載している中ですと「魔法使いマナと叡痴の扉」と「シロとくじら」です。この2作は「魔法使いマナと叡痴の扉」がお色気要素のあるコメディ、「シロとくじら」がほのぼの癒し系と、実に対極にあるテイストの作品なので、これからも盛り上がってほしいですね。「魔法使いマナと叡痴の扉」は話数を重ねるごとに話が面白くなっていって、hoihoi先生も筆がノッている気がしますね。なので今からでもぜひ楽しんでほしいです。「魔法使いマナと叡痴の扉」は男性向け作品なんですけど、逆に「シロとくじら」は女性でも読みやすいと思うんですよ。ゲラゲラ笑うタイプのものだけではなくて、穏やかで癒される作品も増やしていきたいと考えていて、「シロとくじら」は間違いなく癒され方面の代表作の1つになっていると思います。また、最近連載開始した「ドミナント」、「サテライト・コインランドリー」、「契約しましょ」は現在全話公開中なので、この機会にぜひ読んでみてください。