「青に、ふれる。」特集 鈴木望×有村藍里対談|容姿のコンプレックスと向き合ってきた2人が語る、「私なんか」を減らせる青春ラブストーリー

顔に大きな“アザ”がある少女マンガのヒロインを、あなたは見たことがあるだろうか。月刊アクション(双葉社)にて連載中の「青に、ふれる。」は、生まれつき太田母斑と呼ばれる青いアザを持つ女子高生・瑠璃子が主人公の青春ラブストーリー。アザをコンプレックスに感じている瑠璃子が、恋や友情を通じて成長し、自分と向き合う等身大の姿を鮮烈に描き、話題を呼んでいる。

著者の鈴木望も、瑠璃子と同じように、生まれつき顔にアザがある。見た目のコンプレックスに悩みながらも誰にも相談できず、気にしないふりをしたり、アザのことを他人から言われて傷ついたりした経験が、「青に、ふれる。」の物語にも活きているという。

コミックナタリーではそんな「青に、ふれる。」の魅力に迫るべく、著者の鈴木と、タレントとして活躍する有村藍里の対談を実施。自身の容姿の悩みから美容整形したことを公表している有村は、「青に、ふれる。」を読んで何を感じたのか。コンプレックスと向き合って生きてきた2人の真摯なやり取りは、「青に、ふれる。」と同様に、コンプレックスに悩む人の気持ちに寄り添い、また背中を押すものとなった。

取材・文 / ひらりさ 撮影 / 小川修司

メインキャラクター紹介

1巻より。
1巻より。
青山瑠璃子
生まれつき顔に青いアザがある少女。アザを気にしないよう、周りにも気を遣われないようにと生きてきたが、それは本当の気持ちに嘘をついているに過ぎなかった。高校2年生の春、新担任の神田先生との出会いをきっかけに「自分の顔をまっすぐに見る気持ち」を知り、彼に惹かれていく。クラスメイトの七実は親友。
1巻より。
1巻より。
神田先生
人の顔がどれも同じに見えてしまう、“相貌失認”という症状を抱える地学教諭。特別扱いをされたくないという理由から、相貌失認のことは公にしていないが、瑠璃子にだけ秘密を打ち明ける。瑠璃子のアザが青色のオーラのように見えており、彼女のことはすぐに判別できる。マジックが得意。
白河先生
2巻より。
3巻より。
芸能人並みのルックスを持つ音楽教諭。明るく気配り上手な性格で、生徒からの人気も高い。一方で、神田先生を食事に誘うため嘘をついたり、飲み会中にさりげなく上着を脱ぎ肌を露出させたりなど、小悪魔的な一面も。自他ともに認める美人な彼女は、それゆえ外見ばかりが評価され、中身を見てもらえないことに悩んでいる。
大橋智也
1巻より。
2巻より。
瑠璃子の中学時代の同級生。中学1年生の頃、瑠璃子のことが好きなんじゃないかと友達にからかわれ、本人が聞いているとも知らずひどいことを口にしてしまう。その一言が瑠璃子の中学時代の不登校のきっかけとなったことを知った彼は、瑠璃子のもとへ謝罪をしに訪れる。

鈴木望×有村藍里 対談

社会の流れが変わって、生まれた作品

──太田母斑という青アザを顔に持つ高校生・瑠璃子を主人公にした「青に、ふれる。」。容姿へのコンプレックスと向き合い、2018年に整形手術に踏み切った有村さんは、読んでどんな感想を抱きましたか。

有村藍里 鈴木望

有村藍里 瑠璃子の視点だけじゃなくって、友達とか先生とか、いろいろな立場の人の気持ちが描かれているのが、すごく心に響くマンガでした。人の顔がわからない“相貌失認”の疾患を抱えている神田先生にも心惹かれますが、やっぱり、瑠璃子の気持ちには共感するところが多かったです。

鈴木望 ありがとうございます。

──瑠璃子と同じ症状を持つ人だけでなく、自分は気にしていない体の特徴が他人に言われているうちにコンプレックスになってしまうとか、気遣われることで逆に卑屈になっていくとか、「こういう気持ちになったことある」という感情の機微が、たくさん描かれていますよね。鈴木さんは、「青に、ふれる。」の構想をいつから考えていたんでしょうか。

鈴木 私自身が太田母斑を持っているのもあり、マンガ家になった当初から、この題材で描きたいと思っていました。少女マンガで、アザがある女の子ってなかなか出てこなくて、出てきても、いじめられているとか、暗い過去があるといった設定と結びついていることが多いんですよ。でも私は、アザがあるからって、普通の女の子と変わらないよ、という話を描きたかった。ただ、テーマが重いと言われたり、顔に症状がある主人公を読者は見たくないんじゃないかと言われたりして、企画が通らずにいました。

──「青に、ふれる。」の連載が実現できたのは、何かきっかけがあったんでしょうか?

鈴木 大きい話で言うと、社会の流れがだんだん変わってきたのはあるかもしれません。有村さんのように整形を公表する方が増えたり、見た目に対してのいろいろな価値観が出てきたり……。なので、有村さんに「共感できた」と言っていただけてうれしかったです。

3巻より。白河先生の言葉に、瑠璃子は「それってつまりあたしの顔が…」とモヤモヤした気持ちを抱えてしまう。

──特に有村さんが共感したエピソードはなんですか?

有村 校内でも美人として知られている白河先生が、神田先生の相貌失認を知りますよね。彼女が、先に打ち明けられていた瑠璃子に対して、「神田先生も“顔がわからない”って、青山さんだから打ち明けやすかったと思うの」と言うんですが、瑠璃子が「それって顔にアザがあるからって意味かな……」と落ち込んでしまうシーンです。心のどこかで自分の見た目をネガティブに思っている気持ちがあるからこそ、他人の言葉をネガティブに受け取ってしまう感じ、私も思い当たるなって。

──何気ない一言でも、「自分の外見のせいで、内面を見てもらえてないんだ」という落ち込みにつながることってありますよね。

鈴木 私にも、似たような思考の癖があったので、瑠璃子のエピソードとして取り入れたんです。有村さんのお話を聞いて、描いてよかったなと思いました。