コミックナタリー Power Push - 週刊ヤングジャンプ増刊 アオハル

どうしてこうなった?ヤンジャン新増刊の魅力を編集部員とアートディレクターが語り尽くす

グラビアはヤンジャンの象徴

──グラビアページがあるのはさすがヤンジャンだなと思いました。

西村 ヤンジャンと他のマンガ誌の違うところって、やっぱりグラビアで。グラビアはいらないという読者もいると思うんですけど、逆にほかの雑誌ができないことでもあるので。マンガだけじゃなくて、こういう企画ものも入れたほうがいいと里見さんがアドバイスしてくれて。

斎藤 マンガが貫いているテーマを、より効果的に打ち出せると思ったんです。

里見 このグラビアがあるとないとでは全然違いますよね。雑誌や編集者の色がいちばん出るところでもありますし。確かにマンガ誌にグラビアが必要かどうかは意見が分かれますけど、マンガ誌である以前に「雑誌」であることを意識したり、読者に意識させるのは重要なことだと思います。

──カメラマンに「スクールガール・コンプレックス」の青山裕企さんを起用した理由はなんでしょう?

写真家・青山裕企によるグラビア

斎藤 青山さんの写真はマンガ読者との親和性も高いという話になって。

里見 青山さんの写真にはマンガ好きな人を引き寄せる何かがあるんですよね。イメージの切り取り方が、マンガやイラストに近い。ただアイドルの写真を載せるよりも、グラビアとしてマンガ好きな人たちが見て面白いと感じてもらえるページが巻頭に欲しかったんです。

斎藤 このグラビアの撮影、僕と里見さんも立ち会っていたのですが、途中で雨が降ってきちゃって。どうしようと不安になっていたら、里見さんが「まあ『アオハル』で青空を見せたら、できすぎな場合もありますし、雨なら雨で大丈夫ですよ」って(笑)。もう里見さんは、何が起こってもまったく動じない。

西村 超然としてますよね(笑)。

里見 普通に考えても出てこないシチュエーションが撮れるので、それはそれで面白いなあ、と(笑)。

「非ジャンプ」を目指したら「ジャンプ」に戻ってきた

──里見さんは裁判官というか、カウンセラーの役割なんですね。

西村 里見さんがいないと延々と2人で禅問答してるので(笑)。冷静な目線で見ていただけるのでとても助かります。

斎藤 あと僕らが結局まとめられないことを、コピーやデザインでわかりやすくパッケージングしてまとめてくれました。何か答えを授けてくれる、というよりは、僕らがほんとは何を求めているのかってことを明確に示してくれるんです。

──「アオハル」は最初からキチンとまとまっているものではなくて、雑多でいろんな要素のあるものを里見さんがパッケージでひとつにまとめたものってことですね。

斎藤 僕は雑誌ってそういう何でもありの雑なものだと思っていて。編集部員が面白いと思ったものはなんでも吸収して誌面に反映させるのが、ヤンジャンらしさの中心だった時代があったんです。昔のヤンジャンって本当にいろんなものが載ってて。映画やスポーツもちろん、旅の記事があったり、UFOや心霊、ペット特集まで……読者を海外ライブに連れていったり。

──では、「アオハル」はそのヤンジャンイズムを受け継いでいる?

斎藤 そうですね。マンガ家さんと打ち合わせしてても、最初はジャンプじゃないものを目指そうとするんだけど、やっぱり僕はヤンジャンでずっとマンガ作ってきてるから、頭のどこかでいいと思ってるものがヤンジャン理論であったりする。例えばラストは後姿じゃなくて笑顔で終わったほうがいい、とか。それはいつもヤンジャンで言われてることなんですけど。作品によっては、そのヤンジャン理論がいい具合に効いて、相乗効果が生まれた気がします。その化学反応はすごく面白かったですね。

──ジャンプじゃないものを目指そうとして、結局ジャンプに戻ってきた、と。

西村 そうですね。自分の“ヤンジャン愛”を、確認する増刊になりました。なので、マンガは好きだけど、ヤンジャンは読んだことないという方が、アオハルをきっかけにヤンジャンを読んでくれると嬉しいです。

インタビュー風景

週刊ヤングジャンプ増刊「アオハル」第0号 / 2010年11月30日発売 / 定価:600円(税込) / 集英社

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アオハル第0号ラインナップ

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■表紙+α

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