コミックナタリー Power Push - 週刊ヤングジャンプ増刊 アオハル

どうしてこうなった?ヤンジャン新増刊の魅力を編集部員とアートディレクターが語り尽くす

ヤンジャン本誌では受け止められない才能を集めた

──「アオハル」誕生おめでとうございます。週刊ヤングジャンプからは思いもつかないラインナップで、執筆陣を伺ったときは本当に驚きました。そもそも、この増刊はどういうきっかけで作られたのでしょう?

斎藤 ちょうど2年前、当時の編集長から「お前らでエッジの効いた増刊を作れ」と投げかけられて。

西村 エッジってなんだろう? って。エッジって言ったらヤンジャン本誌だって、かなり効いてるんですよ。「サラリーマン金太郎」があって、「ローゼンメイデン」があって、「ハチワンダイバー」があって。

──いい意味で雑然とした感じがあるわけですね。

斎藤 ええ。ただそこで連載していくには、確実にあるルールにのっとらなければいけない部分があって。長い年月をかけて培われた、ヤンジャンならではのカラーというものがあるんです。

西村 週刊誌ってとても独特で。ネタも大事なんですけど、いかに読者に次の週の話を読みたくさせるか、いわゆる「ヒキ」を作ることが重要なので。やっぱりみんなそこを考えるし、そうじゃないものは目立ちにくい。

斎藤 あと一番大きいのは、週刊で描けるか描けないかっていう問題です。やっぱり週刊連載って、マンガ家さんにとって肉体的にも精神的にもとてつもなくハードなものだと思うんです。そうすると、それらの条件を満たして、かつ読者の支持を集める作品は、限定されてきてしまうんです。

西村 でも、世の中にはそういうやり方じゃなくても面白いマンガはいっぱいある。だからといって、そういう作品がいきなりヤンジャン本誌に掲載されても、毎週ハイテンションをキープしている連載陣の中では目立てないんです。だったらそういう作品だけを集めて新しく増刊を作ればいいんじゃないかなって。

斎藤 本誌ではできないけど、「アオハル」ならやれる。今、僕たち2人が面白いと思っているマンガ家さんに、面白いマンガを描いてもらう。そういう場所を作りたかったんですよね。

新しいマンガを探すことが好きな人に向けて

──最初の「エッジとは何か」に対する答えは、とにかくジャンプのやり方じゃない方法論を生み出すための増刊、ということですか?

斎藤 それを生み出すためには、まず土壌作りからはじめないといけないと思ったんです。前例としてはヤンジャンの増刊からまったく違う考え方で生まれたウルトラジャンプがありますね。

──「アオハル」が未来のウルジャンになる日が来るかもしれないですね。

斎藤 そうなればいいですね。でも、そのためにはスタッフをもう少し増やしたいですけど……。

インタビュー風景

──制作チームはお2人だけなんですか?

西村 お目付け役の副編集長と、無理矢理巻き込んだ若手の編集部員が数名いますが、メインはほぼ2人ですね。でも今回、少人数だからこその良さもありました。ヤンジャン編集部って30人もいるので、自分がすごく面白いと思う新人さんがいても、合議制の中で埋もれしまうこともある。「アオハル」のメリットは少人数のジャッジで載せられることだと思います。

──では、このラインナップは、お2人が心底面白いと太鼓判を押した作家さんたちというわけですね。読者層を想定したりはしなかったんですか?

斎藤 「アオハル」をつくることになって、ナタリーの読者やコミティア、Twitterの存在を強く意識するようになりました。僕たちと同じように、新しいマンガをいち早く発見することを楽しむ人たちが、この雑誌を共有してくれるのではないか、と。

西村 初めてコミティアに行ったとき、圧倒されました。雑誌で連載されていないのに、その場所だけで手に入る面白いマンガを探しに集まる人たちが、こんなにたくさんいるのかって。ヤンジャン本誌はこの人たちに向けては作れないけど、ここにいる人たちに向けていつか発信できたらと思っていました。

週刊ヤングジャンプ増刊「アオハル」第0号 / 2010年11月30日発売 / 定価:600円(税込) / 集英社

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アオハル第0号ラインナップ

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三輪士郎(supercell)/中村光

■特別企画

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■表紙+α

宇木敦哉