「天使禁猟区-東京クロノス-」子安武人、吉良朔夜への“激重感情”が止まらない! 由貴香織里からのメッセージも

1994年から2000年にかけて花とゆめ(白泉社)で連載され、熱狂的な人気を博した「天使禁猟区」。同作は「カフカ -Kafka-」「赤い羊の刻印」などの「伯爵カイン」シリーズでストーリーテラーとしての実力をつけ、切ないまでの愛を描いてきた由貴香織里が、満を持して挑んだ壮大なダークファンタジーだ。実の妹・紗羅を愛してしまった16歳の少年・無道刹那が、その愛のために物質界(アッシャー)、星幽界(ヘイディーズ)、地獄(ジャハンナ)、至高天と世界を巡り、さまざまな人々と関わり合っていく。花とゆめコミックスは全20巻で発売され、2022年には全10巻の愛蔵版が刊行スタート。1月20日にラストを飾る9・10巻が発売されたばかりだ。

その「天使禁猟区」の続編となる「天使禁猟区-東京クロノス-」が、2022年4月にスタートした。その第一報はネットを中心に話題となり、コミックナタリーの記事(参照:由貴香織里の新連載「天使禁猟区-東京クロノス-」が4月20日発売の花ゆめAiでスタート)も大きく拡散。そして「天使禁猟区-東京クロノス-」1巻がついに発売となった。これを記念し、コミックナタリーでは「天使禁猟区」のドラマCDとOVAで人気キャラクター・吉良朔夜を演じた子安武人のインタビューを実施。ドラマCDとOVAのリリースから20年以上経つにもかかわらず、子安の吉良への思いは消えておらず……。子安の“激重感情”を味わってほしい。

取材・文 / 三木美波撮影 / ヨシダヤスシ

吉良先輩に一目惚れしたんです

今日は久しぶりに吉良のことを話せるので、うれしくてしょうがなくって!

──ウキウキしてらっしゃいますね(笑)。実は、由貴香織里さんから子安さん宛にコメントを預かってまして。

お久しぶりです、その節は本当に大変お世話になりました。平素よりご活躍、見守らせて頂いております!
かつてのメディアミックスの折は子安さんなくして成功はなかったと思います。ありがとうございました!
昨日、息子に子安さんに声やって貰ってたと言ったら「めちゃくちゃすげぇ!」と言われたばかりでした!
時を超えて始まった新生「天使禁猟区」を読んで戴けるのなら、ご感想等きかせていただきたく……よろしくお願いします!

うわー、うれしい……! (噛み締めながら)いや、本当にありがたいですね。息子さんがいらっしゃるんだ。いくつくらいなんだろう? その息子さんにも認知されてるようでうれしいなあ、長年声優をやってきた甲斐がありますね。

──「天使禁猟区」はドラマCDが1998年から2001年にかけて全15巻、OVAが2000年に全3巻リリースされて、子安さんはそのどちらでも吉良朔夜を演じています。由貴さんもメディアミックスに関して「子安さんなくして成功はなかった」とまでおっしゃっていますね。

由貴さんにそう言っていただけるのは本当にうれしいですね。なんと言っても、僕は吉良先輩をやりたくてやりたくてしょうがなかったんですから。

子安武人が演じた吉良朔夜 / ルシファー。

子安武人が演じた吉良朔夜 / ルシファー。

──吉良先輩を演じる前から「天使禁猟区」をご存知だったんですか?

もちろんですよ! そこから話しますか?(笑) 僕は中学生の頃から少女マンガがすごく好きで、けっこう読んでいた時期があって。白泉社さんとも縁があってラジオ(「子安武人の花ゆめ気分でLaLa party!」「子安★私市の花ゆめチックにLaLaしましょ」)でパーソナリティをやったりしてね。その頃に「天使禁猟区」も読んで、すごく面白いマンガだと思ったんですよ。いや、正直に言うと、マンガの面白さももちろんなんですけど吉良先輩に一目惚れしたんです。あまりにもカッコいいから(笑)。

とにかくうれしくて、じわーって涙が出そうでした

──吉良先輩への思いは後ほどたっぷりと聞かせてください。2000年に最終回を迎えた「天使禁猟区」ですが、2022年4月に続編の「天使禁猟区-東京クロノス-」がスタートしました。

「天使禁猟区-東京クロノス-」イラスト

「天使禁猟区-東京クロノス-」

無道刹那が再生した数十年後の東京に暮らす中2の叶久遠。彼の目には空が黒い文字に覆われて見え、人々の背中に時々羽が見える。人とは違う自分を忘れさせてくれる憧れの先輩、風護カリスに告白を決意した久遠だが……。「天使禁猟区-東京クロノス-」は花ゆめAiで連載中。

ネットのニュースで知ったんですよ。その情報が飛び込んできて最初は「嘘だろう?」と。「まさかあの『天禁』?」「続きなの? それともアナザー的な?」って。本当にびっくりしたんですが、「すごく読みたい!」と思いましたね。驚きとうれしさが同時に生まれて、自分が関わってきた「天禁」への思い出が走馬灯のように……いや、走馬灯だと死んじゃう前みたいだけど(笑)。そんな感じで「天禁」の記憶がフラッシュバックしました。

子安武人

子安武人

──「天使禁猟区-東京クロノス-」1巻を読んでの率直な感想を教えてください。

本当に、懐かしの「天使禁猟区」が帰ってきた!と思いました。時代に合わせたのか、由貴さんの絵柄が少し変わったのも印象的でしたね。「天使禁猟区」のときはヴィジュアル系バンドを2次元にしたような絵柄の印象がありましたが、「東京クロノス」では若干まろやかな感じになっていて。20年前の声優・子安と今の声優・子安が違うように、作家さんも変わっていくんだなと思いましたね。時代のニーズに合わせていくのはプロとしての仕事ですから。そして、風護先輩……かわいいですね。

──風護先輩を大好きな、主人公の久遠みたいです(笑)。

風護先輩のキャラいいですね。本当にいい……かわいい。2回言っちゃった(笑)。ちょっとツンとしててクールビューティで、久遠と今後どう絡んでいくのか気になります。

──第1話で、風護カリスは「天使禁猟区」に登場した四大天使の1人・ラファエルの転生後の姿なのではと示唆されていました。

元男でも全然いいですね。最近、“魂で愛していこうぜ月間”なんですよ。なので性別とか人種とかどうでもよくて、僕にとっては魂が大事です。

風護カリス

風護カリス

──第1話では同じく四大天使の1人・ミカエルも出てきて、「天禁」ファンは驚いたのではないでしょうか。

見知った奴が出てくるのは、心躍るというかワクワクしますよね。僕としては1巻の最後の最後に出てきた“彼”が……。彼が出てきた瞬間、もう本当にびっくりして。とにかくうれしくて、じわーって涙が出そうでした。

──その背後には“あの人”らしき人もいて……。

ねえ! いましたよね! もうこの先どうなるのよ!?って。たぶん、1巻まるごとプロローグなんですよ。最後に「よっ! 待ってました!」の真打が登場して、ここから面白さが加速していくんだと思います。

今のほうが吉良をうまく演じられる

──ドラマCDがリリースされたのはもう20年以上前のことになりますが、印象深いエピソードはありますか?

ドラマCDのほうがOVAより先に制作されたんですけど、オーディオドラマだから音声のみじゃないですか。今だったらボイスコミックみたいにマンガの絵に声をあてる動画もありますけど、当時はなかったから本当に音声だけ。つまり、僕の声だけで吉良を表現しないといけない。この声としゃべりが吉良じゃなくてはいけないっていうのをすごく意識してドラマCDの収録に臨みましたね。

──その後、「天禁」はOVAにもなって。

絵がついて、すごく感動しましたね。これに自分の声をあてさせてもらえるんだといううれしさがありました。OVAの吉良に初めて声をあてたときの感動はまだ覚えています。

子安武人

子安武人

──OVAでは刹那が実妹・紗羅との恋に苦しみ、有機天使アレクシエルの力を覚醒させる「物質界(アッシャー)編」が描かれました。原作の「物質界(アッシャー)編」を3話分のOVAにしているので、当然すべてのエピソードが映像化されているわけではないんですが、その中でも吉良先輩とお父さんのシーンはしっかりと描かれていましたね。

そうそう、お父さんとの確執もちゃんと映像化してくれて、演じ甲斐がありました。(DVDのパッケージのキャスト欄を見ながら)刹那役ののじけん(野島健児)、このときまだ本当に新人声優だったんだよね。懐かしいなあ。

──原作からのファンというと、演じる前からもう子安さんの中に確固とした“吉良像”みたいなものがあったんでしょうか?

ありました。皆さんもそれぞれ脳内に吉良のイメージがあると思うんですが、僕の中にもしっかり。そして、“僕が演じている吉良”のイメージもあったんです。それを声に出して表現する作業が楽しかったですね。自分が思い描いている吉良と、実際に自分が演じる吉良に差異があんまりなかった。思っていたことができてるという実感がありました。20年前なので、今の俺と比べたらつたないと思うけど、当時の俺としてはけっこうがんばった。

──今の子安さんが演じる吉良先輩、聴きたいですね。

今でもやりたいですね。解釈が変わったり、より深くなったりしてると思うので、もう一度昔の自分にチャレンジしたい気持ちがあります。

吉良と刹那。

吉良と刹那。

──表現者の方は過去作を振り返るときに「当時の表現は今の自分にはできない」とおっしゃるイメージがあるんですが、子安さんはちょっと違うんですね。

いや、僕もやっぱり当時の表現は当時にしかできないと思います。歳をとるといろんなことを経験するし解釈も深くなると思いますけど、それは分別臭くなったり余計なことまで考えてしまうことでもあって。直感的なことは若いときのほうが得意だと思う。でも、僕は今でも常にうまくなりたい気持ちが強くて、うまくなってる自負もあるんです。最初に吉良を演じたときから20年以上声優として努力を続けてきて、実力もついてきた。だからやっぱり、今のほうが吉良をうまく演じられる自信はあります。