小鳥が高校生のうちに犬塚先生とくっつけるつもりはなかった

──本編が完結し、番外編としてその後のエピソードを描かれましたが、そういう形でその後を描いた理由はあるんですか？

ただ描きたかったというか（笑）。結局、ここ（小鳥の高校卒業）で終わりたいっていうのは崩れなくて。でも「今後、この人たちどうしているんだろう？」って話を担当さんと話しているとき、描きたいエピソードがいくつかあって。番外編はその後のみんなのことを少し描きたかったから描かせてもらったっていう感じですね。

──読者にとっても見てみたいエピソードが多いなと思いました。ただ小鳥と犬塚先生のその後については……。

ぶっちゃけていうと、先生と生徒の恋愛は好きなんですけど、小鳥が高校生のうちに犬塚先生とくっつけるつもりはなくて。それはもう初回の打ち合わせからはっきりと決めていてたんです。教師が生徒に手を出すのはナシって。最初から先生の気持ちが小鳥に向くことは1回もないって。

──そうだったんですね。

ただ高校卒業して年齢的に大人になって、2人がそういう気持ちになったらそれはありだよねっていう話はしてたんですよ。なので、番外編で自然にそういう方向に行くならそれはそれで……思っていたんですけど、いかなくて……（笑）。

──確かに匂わせる程度ですよね。

でもわかる人はわかると思うんですけど、2人の気持ちってもう家族愛含む、みたいな感じになっちゃってるんです。連載開始前にあった案としての恋愛ものっていうのは「甘々と稲妻」では描けないけど、恋愛だけじゃない複雑な気持ちのほうを描きたかったので。「くっついて！」っていう目線で読んでいた人にはがっかりさせてしまうかもしれないけど、2人はそういう関係なんだと思えてもらえていたらいいなと。

──犬塚先生のキャラ的にも小鳥を恋愛対象と見るのは、なかなか難しいですよね。つむぎもいて、余計に倫理観が働きそうですし。

そうですね。もし犬塚先生の気持ちが小鳥に向いてたら、小鳥も嫌だったんじゃないかな。自分のことを好きにならない先生を安心して好きになっているってうところがあったと思うので……。でも小鳥も大人になっていろんな人に出会ったうえで、やっぱり犬塚先生がいいと思うなら、それはそれでいいのかなと。そこから先は大人の話なので。

編集部内で関係者用に出す年賀状のイラストも

──その番外編が収録される12巻の限定版には、96ページの画集とマスキングテープのセットが付くということで。

特典はいろんな候補を出してもらって。調理系にするのか、文具的なものにするかとかいろいろ案はあったんですが、宣伝部の方からマステは人気だと一押しされてマステになりました（笑）。画集は、カラーのイラストを描かせてもらう機会が多かったので、チャンスがあればまとめたいなと思っていて。単行本の表紙イラスト以外は雑誌の表紙イラストや販促用に描いたものが多いですが、見たことない絵もいろいろあると思います。編集部内で関係者用に出す年賀状のイラストとか。これは一般の読者さんには届かないものなので、完全に初出しですね。

──最終巻の表紙は、つむぎと先生と小鳥3人のイラストですね。表紙のデザインについても担当さんと打ち合わせで決めているのでしょうか。

そうですね。まず担当さんと私でざっくりとした打ち合わせをしてからラフに取り掛かります。私は、とにかく点数をいっぱい出して相談することが多くて。最終巻は、表紙に3人を入れることは1巻のときから決めていたので、まずはそのパターンを含めて4～5点出して、それをデザイナーの名和田耕平さんに見てもらってご相談しつつ。

──ラフの段階からデザイナーさんにも相談されるんですね。

はい。けっこう名和田さんから「ここでタイトルを入れたいので、もう少し人物の位置を下げてください」というようなディレクションや、修正の見本を送ってもらうことも多いです。例えば12巻の表紙だと最初のラフでは八木としのぶもいたんですが、3人がいいのではっていう話になったのも、名和田さんとも話し合って決めました。丁寧に細かいところまで見てくださるので、たまに私がその日のテンションでラフと違う表情で下絵を描いてしまうと「ラフのときのように描いてください」ってダメ出しされたり（笑）。ラフの段階で、デザインのイメージがほぼ固まってらっしゃるので、違うものがあがってくるとバレますね。でもありがたいです。

──「それはちょっと……」って思うことはないんですか？

ないですよ！ だって信頼している方に「ここ変ですよ」って言われて「いや、私は変だと思わない！」とは言えないです（笑）。それは直します。

──雨隠さんがマンガを描くうえで栄養分にしていることってなんだと思いますか？

やっぱりご飯かなあ。これ描き終わったらご飯食べに行こうって（笑）。あとは全然違う媒体、音楽とか映画とか見て、気持ちいい感じで打ちのめされたりすると、私もマンガがんばろうっていう気持ちになります。

──では最後、次回作についての構想などあれば教えてください。

次回作……まだ何もないです（笑）。単行本作業も終わったばっかりなので、今ネタ出しとネーム期間ですね。本当はもっと前から新作の準備ができればよかったんですけど、こっちでいっぱいになっちゃったので。今、水面下で打ち合わせしています。早めにお目にかかれるようにがんばります。