「ソフトウエアが歌うんだぜ？ すごくね？」

──曲作りはいつ頃から始めたんですか？

中学生くらいからですね。ピアノとかギターでメロディをなんとなく作って、そこに歌詞を当てはめていく作業が楽しかったんですよ。当時作ってた曲はくそダサいと思いますけどね。「俺たちはもっとがんばれるんだぜ、ベイビー」みたいな（笑）、多分そんな感じ。そのあと自分でバンドを組んでからも、基本的にはメロディや歌詞を作るブレーン的なポジションでやってました。

──そんなゆよゆっぺさんがボーカロイドに出会い、ハマっていったのはどうしてなんでしょう？

バンド活動をやっていると、うまくいかないことがやっぱりたくさんあるんですよ、人間関係みたいな部分で。僕自身、人付き合いが苦手だからっていうのもあるんですけど、だんだん1人で殻にこもる時間が増えていったんです。そんなときにニコニコ動画を友達に教えてもらい、supercellのryoさんとかkzさんとかの作品を聴いて「おお、こういう世界もあるんだ」「面白そうやな、俺もやったろう！」って思ったんです。

──シンプルでいいですよね、その感じ（笑）。

基本的にバンド畑の人って、そういうインターネットとか、ギークなものを敬遠する傾向にあると思うんですよ。実際、僕の周りの奴らからも「ちょっと違うんじゃない？」みたいなことを言われたし。でも僕は「だってソフトウエアが歌うんだぜ？ すごくね？」「絶対面白いじゃん！」みたいな感じだったので、1人で始めてみたんですよね。

──バンドで歌っていた人が、ボーカロイドに歌わせるということについて戸惑いはなかったですか？

そこはもう簡単なことですよ。だって正直、僕より全然歌うまいですから（笑）。楽曲的に純粋にクオリティが高くなるし。サウンド的にも、バンドでの活動とは違う、1人で構築していける面白さがありましたしね。

──自分だけのカラーを思い切り出せて、1人で完結できる面白さなんでしょうね。

そうですね。それがすごく面白かった。ただ、1人でのめり込む時間のほうが増えてくると、今度はバンドが楽しそうに見えてきちゃったりもして（笑）。隣の芝は青く見えますからね。なので今はソロと並行してバンドもガッツリやってるんですけど。

「Hope」で初めて自分の気持ちを乗っけた歌詞を書いた

──ニコニコ動画に初めて投稿したときの反応はどうでした？

実は初投稿と言われている曲の前にも、いくつか曲をアップしてたことがあったんですよ。そのデータはもう残ってないんですけど。で、そのときは全然コメントも付かなかったし、再生も伸びなかったんだけど、「お前本気出せよ」っていうコメントがポツンとあったんですよね。それを見て「よっしゃ、やったろうじゃねえか」ってすごく思えたんです。で、実際に本気を出して作るようになったら、再生数がだんだん伸び始めるようになって。そのときに僕が思ったのは「ニコニコ動画はちゃんとイーブンに評価してもらえる場所なんだな」っていうことだったんです。

──変な先入観なく、楽曲の良さだけで純粋に評価されるということですか。

そうです、そうです。この人の顔とか声とか成り立ちが好きだっていうんじゃなく……もちろんそれも大事なことだとは思うし、初音ミクとか巡音ルカとかボーカロイドのキャラっていうのはありますけど、もっと純粋に自分の音楽が客観的に聴かれて評価される場所だなって。音楽以外の部分で優劣が付きにくいというか。そう考えると、これはがんばった分だけ返ってくるものがあるんじゃないかなって思えたから、さらにのめり込むようになって。で、のめり込めばのめり込むほど実際みんなの評価が大きくなっていったんで、本当に楽しかったんですよね。

──今回のアルバムにも収録されている「Hope」という曲で大きな注目を集めましたよね。

あそこから一気にたくさんの人が聴いてくれるようになりましたね。あの曲って、当時付き合ってた女の子と別れたタイミングだったっていうこともあって、初めて自分の気持ちを乗っけた歌詞を書いてみたんです。そうしたら、それをみんながすごくいいって言ってくれて。それをきっかけに自分の中でも表現が広がったし、その後に同人でオリジナルのCDを作ろうかなって思うようになったりもしましたね。

──「Hope」以前は全くのフィクションで歌詞を書いていたんですか？

はい。基本的には自分主体ではなく、「画面越しにどうちゃら」とか、ボーカロイドってなんなのっていう観点で曲を書いてました。でもそこに自分の気持ちをいざ乗っけてみると、楽曲自体にバンドっぽさを感じるようにもなったし、勢いが増した感じがありましたね。その時期には今回のアルバムのジャケを描いてくれてるmeolaさんと出会うことができたりもしましたし、いわゆるボカロPとして躍進できたタイミングだったと思います。