ボーカロイドとエモ / スクリーモの融合

──バンド時代からラウドな曲が好きだったというゆよゆっぺさんですが、その嗜好をそのままボーカロイド楽曲に反映させたところも面白いと思うんですよね。2008年当時、そんな楽曲を作っているボカロPってほぼいなかったですよね。

ニコニコ動画に上がってた当時のボカロ曲はほとんどがキャッチーなものばかりでしたよね。それもポップですごくいいなあとは思ってたんですけど、でも待てよと。逆にエモやスクリーモみたいな曲ってないよな、じゃあここは隙間産業だと思って（笑）。まあ最初はそこまで当たりは良くなかったんですけど、それもだんだん浸透し始めて。

──ボーカロイド自体、そういったジャンルの楽曲を歌うことは想定されていなかったでしょうしね。

エモやスクリーモをやるとなると、スクリームさせることが絶対不可欠なんですけど、最初は叫ばせることができなかったですからね。「わーどうしよう」みたいな。でも、そういう同じ悩みを抱えてる仲間がその当時から実はいて、その中の1人がシャウトさせる方法を発見するんですよ。それをみんなが使うようになったっていう。そういう音楽的な新しい発見もあったし、ボーカロイドの世界をより広げられたかなとは思うんですけどね。

──今やボーカロイド楽曲の1つのジャンルとして確立された感じはありますよね。

そうですね。まだニコニコ動画の中だけですけど、「VOCALOUD（ボーカラウド）」という文化を確立できたのはうれしいですね。今までハードコアやエモスクリーモを聴いたことなかった人が、僕の作るボーカロイド曲をきっかけに、日本のハードコアバンドの曲を聴いてくれるようになったらいいなっていう思いもあります。その橋渡し的な役割を担えたらなって。決して入りやすい音ではないと思うんですけど、実際足を踏み入れてみると底がないというか、すごく深くまで追求して楽しめる音楽だよ、だからみんなおいでおいでーっていう。

「これが今の俺のマックスだよ、ベイビー」

──メジャー1発目となるアルバム「Story of Hope」には、そんなゆよゆっぺさんがたどってきた活動の軌跡がガッツリ詰め込まれています。その仕上がり、ご自身ではどう感じてますか？

これはもうガチです！ 何がガチって、とりあえず今の僕ができる最大限の音を詰め込んだんで、もちろんサウンドは激しいですけど、ただ激しいだけじゃなく、ちゃんと深みがあってノレる音楽になってると思います。「これが今の俺のマックスだよ、ベイビー」みたいな感じですね。なので聴いてもらえたらうれしいです。

──これまでの集大成であると同時に、新曲「Story of Hope」を収録することで、ここからの未来を示唆する感じもありますよね。

はい。これはもう僕がここまでに歩んできたものと、これからどうなっていくのかっていうことが歌詞とサウンドに集約されてますね。自分としては初めてに近いテンポ感で作った曲なんですけど、これって歩く速度にも、めっちゃ速く走る速度にも取れるテンポなんですよ。だからこの先、歩いていくか走っていくかはわからないけど、とにかく前に進んでいく僕についてきてくれないか、っていう意味を込めて。アルバムのタイトル曲にふさわしいガチな曲っすね。

──―収録曲は激しいナンバーが目白押しですけど、後半にはエレクトロっぽい曲があったりと、柔軟な音楽性も垣間見えていて。そこも面白かったです。

やっぱ低い位置でギターをガーガー弾いてるだけだと腰が疲れるじゃないですか。たまには4つ打ちのキックもノリノリで聴きたいですからね、僕自身。「俺はラウドだけだから」みたいな感じになっちゃうのってすごくもったいないことだなって自分で思うので、いろんなことを楽しんで突き詰めていけたら最強じゃん、って思うんですよね。幅が広いほうがお仕事的にも有利だと思いますし（笑）。

──そして、ボーナストラックには代表曲「Hope」をバンドスタイルでカバーしたものも収録されていますね。この意図は？

今、並行してやってるMy Eggplant Died Yesterdayというバンドでやらせてもらったんですけど、これはやっぱりこれからの僕を見てほしいっていう意味合いがありますね。このバンドを始めてからまだ1年も経ってないんですけど、今後はその活動も増えていくと思うし、僕自身が歌う機会も増やしていきたいと思うので、そのとっかかりとして。ボカロPとして飛躍できた「Hope」をバンドとしてやることで、ここからさらに飛躍できるんじゃないかなっていう意味も込めて。

──ソロとバンド、その2本柱でこれから突き進んでいくぞと。

たぶん2本じゃ済まないですけど（笑）、がんばりたいですね。

──本作には、ゆよゆっぺさんが帰省するドキュメンタリー映像などを収録したDVDが同梱されますし、初回盤にはオリジナルコミックもついてくるそうなので、そのあたりも音と一緒に楽しんでもらえるといいですね。

これはね、メジャーってやっぱすごいんだなってあらためて思いましたよ。「マンガがついちゃうんだぜ、すごくね？」みたいな。ビックリっすね。ドキュメンタリー映像はハンパじゃなく面白いんで、ぜひ観てほしいっすね。うちの両親が出ちゃってるっていう。

──「ハニー」って言ってます？

いやいや、それは言ってないですけど（笑）、「ぱぱゆっぺです」「ままゆっぺです」って言って出てくるんで。ぜひ！