ナタリー PowerPush - YO-KING
僕の旬はまさに今! 会心のアルバム「楽しい人は世界を救う」
今回は意識的にリスナーのことを念頭に置いて作った
──精神的なアルバムになったということですけど、直球のメッセージソングは意外と少ないですよね。
うん。僕が日々暮らしてていろんな人と話してる中で、その考え方はこういう風にしたほうがより楽しくないか?って思うことが多いんですね。そういうのを歌詞にしてみようっていうテーマがあったの、最初は。でも出揃ってみると、そういうテーマの曲は3~4曲くらいしかないなっていう(笑)。曲でいうと「バランス」とか「青空揺れる」とか「世界の元」とか。
──思ったほど物申したいことがなかったということですか?
いや、昔からある曲に魔法をふりかけて最新モードにしたものがいい曲になっちゃって、それを皆さんに聴いてもらいたいという気持ちのほうが強くなっちゃったんですよね。言いたいことはあるけど、それはこういうインタビューとか、いろんなとこで言えばいいし。全部歌詞にしてもどうなんだろうと思ったんです。
──その言いたいこととは?
悩みとか心配事をみんなしすぎるってことですね。で、大体の悩みって、自分じゃない誰かをこうしたいっていう悩みなんだよね。こうなってくれればいいのにっていう。でも、人は自分の思うようにはならないんです。そういうことをわかってるかどうかで全然気持ちが楽なの。人の機嫌はどうでもいいの。まず自分の機嫌をとる。機嫌悪いやつはその人のわがままで機嫌悪いだけだから放っといてあげないとダメなんですよ。「どうしたの?」とか気にかけちゃダメなの。放っとくのが愛なの。で、その人の機嫌とは関係なく、自分は機嫌いいの。常に。そうしてるほうが悪い人の機嫌も良くなってくるの。
──それが“世界を救う楽しい人”なんですね。
そうなんです。でも放っとけない人ってやっぱ多いんですよね。
──周りの機嫌が悪いってことは自分が悪いのかなって考えて不安になる人もいますからね。
そうそう。そういう人のことを「我が強い」っていうんだよね。俺のせい、私のせいって言う人って我が強いのよ。
──人のことを考えているようで、結局は自分のことを考えてる。
そうそう。我なんですよね。そういうことを歌詞にしようと思ったんですよ。普段僕ね、自分がどうしたら楽になれるかとか、自分がどうしたら楽しいかっていうことを第一に考えてるのね。それを申し訳ないと思って、みなさんにもおすそわけしなきゃと思ったの。こういう風に考えたほうが楽しいよとか、こういう風に考えたほうが気持ちも楽になるんじゃない?とか。そういうアルバムなんですよね。だからサービスアルバムなんです。これだけ聴いてくれる人のことを念頭に置いたアルバムは初めて。
──でも今までもメッセージソングはけっこうありますよね。
あったんだけど、リスナーを念頭には置いてないんですよね。無意識に作ってたというか。で、今回は意識的に作った。僕のいろんな考え方が役に立って、ちょっとでも気持ちが楽になるんだったら書いてみようかなと思って。まずは自分のことを考えようっていうことを言いたいんですよ。その次に一番大事な人を考えるっていう風に順番にエネルギーとか手間のかけるものを考えていかないと。地球の裏側の貧しい子どもたちにも幸せになってほしいとは思うけども、まずは目の前の人ですよっていう。同じマンションの人に「おはようございます」って挨拶するとかね。
嘘じゃないんだよね、俺の人気って(笑)
──YO-KINGさんは、そういうことをきちんとされてるんですか?
俺、すっごいするの(自慢気)。俺、飲食店とか入ってもすっごい人気あんの! その延長上で、ライブとかでも人気者なのよ。だから、嘘じゃないんだよね、俺の人気って(笑)。
──それは隙がないですね(笑)。
ライブとかでは人気あるんだけど、スタッフとかに嫌われてるとかいう人ってたくさんいるわけ、この業界。でもおおまかに見て、人気あんの、俺。
──(笑)それはいつ頃気づいたんですか?
幼稚園ぐらいから思ってたかな。幼稚園が2つの勢力に分かれてて、1つの勢力のガキ大将だったんです。ガキ大将ってケンカ強いだけじゃなれないから。やっぱりある程度信頼とか、弱いやつを気にかけるとかしてやっとガキ大将になれるわけですよ。俺は無理なくそういうことできるんだなっていうのは気づいてた。小学校で学級委員と野球チームのキャプテンやって、中学でバスケ部でキャプテンやって。中3でオール5とって。頭もいいんです(笑)。
──大学の頃には真心でデビューしてますしね。しかもそれだけ人気者人生で嫌みにならないというのがさすが。
そう。そこが才能なんですよ。嫌みになった時点でもう人気者じゃないからね。若い頃は、おっさん転がすのうまいねぇって言われたの、業界的に。すごく話してて楽だったのね、俺自身も。でも、ちょっと待てと。俺は上の人だけに愛想使ってないよと。同僚にも後輩にも同じ愛想使ってるから、嫌われないんだよね。同僚とか後輩に威張ってて、上の人にばっかり愛想使ってたら嫌われちゃうじゃない? そういうとこもわかってるんですよ。
──このアルバムを聴くと、少しはYO-KINGさんに近づけるんでしょうか?
楽しい人のなり方っていうのがあるんですよ。それは「俺は楽しい人になる」って毎日口にすること。そうすると、なれちゃう。
──シンプルだけど、なかなか難しいですね。
そう。簡単だけど、大変ですよ言うのって。満員電車の中じゃ言えないでしょ? 時間に余裕ないと、できない。「俺は楽しい人になる」っていう時間を持つ余裕とかも必要になってくるわけですよ。あと、人から言われたことを素直に受ける気持ちとかも大切ですよね。
YO-KING(よーきんぐ)
1967年東京出身の男性シンガーソングライター。1989年にTHE真心ブラザーズとしてメジャーデビューし、1991年に倉持陽一名義による1stソロアルバム「倉持の魂」をリリース。さらに1992年にはヒップホップユニット「エレファントラブ」を結成(現在は活動休止中)。また1999年には、 YO-KING名義による2ndソロアルバム「DEFROSTER ROCK」を発表。作詞・作曲のみならず、セルフプロデュースも手がけ大きな話題となる。2001年の真心ブラザーズ活動休止後に、本格的なソロ活動を開始。3ピースのバンド編成でライブを行うほか、2002年5月にソロシングル「LIFE」、6月にアルバム「愛とロックンロール」をリリースする。 2005年の真心活動再開後も、定期的にソロライブを行うほか、2007年2月にはアルバム「日々とポップス」も発表している。