音楽ナタリー Power Push - 水曜日のカンパネラ

コムアイの次の一手

水曜日のカンパネラが、初めての東京・日本武道館公演「八角宇宙」のちょうど1カ月前にあたる2月8日に、メジャー1stフルアルバム「SUPERMAN」をリリースする。前作「UMA」はMust Die!やマシューデイヴィッドなど海外のクリエイターの参加により、“メジャーデビューなんてどこ吹く風”といった趣のとがった内容だったが、今回は全曲ケンモチヒデフミの作詞・作曲で、実験性や遊び心もありつつ少しポップに戻った仕上がりに。「世界を変える人たち=SUPERMANを応援する」というテーマで、歴史上の偉大な改革者たちの名前が楽曲タイトルに並んでいる。今回のインタビューではアルバムの内容はもちろん、ライブでやりたいこと、テレビについてなど、コムアイに語ってもらった。

取材・文 / 高岡洋詞 撮影 / 常盤響

コムアイ
コムアイ

「桃太郎」みたいな曲は出さないと思う

──「SUPERMAN」は攻めている部分とポップな部分のバランスがいいですね。

ありがとうございます。私は攻めたいからそうでもないんですけど(笑)、ケンモチさんがバランスを気にして作ってくれました。全然ポップなことがやりたくない気分だった「UMA」を終わらせて、「もう少しポップなことがやりたい」って気になってきました。私は多幸感のある空間や美しい景色を作りたくて、それがポップだと思ってるんだけど、そのポップさはやっぱりJ-POPとは距離があるからやる意味があると思っています。原始的な祝祭ミュージックが引き出す、みんなが踊り狂う景色は大好き。そういう音がいいなと思ってたんですけど、意外にケンモチさんが真剣に作ってきた(笑)。で、メロディはけっこうキャッチーに。

──前作「UMA」の前衛的な内容に賛否が分かれたとか?

「J-POPの場でこれをやるな」みたいな視線をズキズキ感じました(笑)。でも今作は、最初は「攻めと攻めで行こう!」という強気な気持ちだったので、バランスを最初から考えていたわけじゃなかった。アルバム制作の最後に全体を見渡して「もうちょっとわかりやすい展開とメロディが欲しい」みたいな話になって。それで「一休さん」を作ったんです。だから「一休さん」がなかったらけっこう印象が違うかもしれない、もしかすると。

──ポップなミニアルバム「私を鬼ヶ島に連れてって」を作ったあとに、3曲入りCD「トライアスロン」で実験的なアプローチをして、その後に両方の路線を組み込んだフルアルバム「ジパング」を作ったパターンを思い出しました。

コムアイ

実験して枠をガーッと広げて、固めて。また広がったので、「桃太郎」(2014年11月発売のミニアルバム「私を鬼ヶ島に連れてって」収録)みたいな曲は私もケンモチさんも今作ってもよくないと思っている。でもライブでやるのは好き。不思議なんだけど。「桃太郎」がいい曲だってことなのかな。毎度、「じーちゃん」って歌い始めると楽しくなる。

──今回の新曲を聴かせてもらったときに、どう感じましたか?

一休さんに関しては「めちゃくちゃハイテンションな曲がきたら困るな」ってちょっとビビってたんですけど、ムードも歌詞も年相応な曲で助かったっていうか(笑)。ケンモチさんはポップな曲を作るのと同時に、変わっていく自分が歌えるものを作ってくれる。

コムアイ
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年齢と共に変わっていくものを、
どうやって仕事に還元していくか

──枠を広げておくと、その後にやれることが増えるんですか?

そうそう、それはいつも意識してて。次はもっと新しい知識を増やして全然違うことをしたい。枠が小さくなっちゃうと、「いや、そんなもんじゃないんだよ」って脱皮したくなるんです(笑)。女の子は年齢でとても変化する。こないだきゃりー(ぱみゅぱみゅ)ちゃんと対談したときもそんな話をしました。年齢と共に好みが変わっていくから、それをどうやってイメージに還元していくかを考えるよね、って。彼女は「生成色の服とかも着るようになった」って言ってました(笑)。

──齢を重ねると20年前くらいまでは「こないだ」って感覚ですけど、若いときは内面も外見も短期間で大きく変わりますもんね。

変化にはもう1つ要因があって、見たいものややりたいものができてしまうと過ぎていく。例えば写真撮影のときに、自分の中での流行りのライティングがあったりするんです。横からカラーのライティングを当てるのにハマったり。実は「Rolling Stone日本版」の撮影のときは、グレーの背景でまんま肖像画みたいなクラシックな質感の写真を撮りたい気分だった。そのときそのときでやりたいビジュアルみたいなのがあるんだけど、それが活動の中で実現していく。「こういうのやりたいんですよね」なんて言ってると1カ月後とかに実現して、リリースすると自分の中で過去のものになって。上手になる前に飽きちゃうんですけど(笑)。