自分の作品を作るのと気持ちの面では変わらない

──Violent is Savannaの曲は歌やメロディやバンドアンサンブルは王道なのに、小野さんの弾くギターフレーズに異物感みたいな不思議な雰囲気があって、「なんだこれ、何が起きてるの？」って驚かされることが多いです。

片寄　栄次のメロディと星花ちゃんの声がとてつもなくキャッチーだから、それこそJUDY AND MARYと比べられることもあるけどね。でも実は僕、JUDY AND MARYって当時全然聴いたことなくて（笑）、テレビで見かけたことがあるくらい。YUKIちゃんは面識もあるし、ソロになってからはGreat 3のメンバーがレコーディングに参加してるから聴いてますよ。僕はいわゆる日本のガールポップってものを全然聴いてこなかったから、一応勉強しようとレコーディングに入る前に聴いてみたんだけど、逆に「これ、あんまり勉強しちゃうとつまらないものになっちゃうかな」って思って。

──王道のガールポップだけど、ありきたりのものになってしまうと。

片寄　そう。化学反応じゃないけど、変わり種のギタリストがいるロックでポップなバンドに、僕みたいなプロデューサーが入っていったほうが、きっと今まで聴いたことないものになるんじゃないかなっていう予感があって。だから、僕は今回のアルバムに関して、別に一般大衆に合わせようとか迎合しようとか、実はこれっぽっちも考えてなかったんです。

一同　へー。

片寄　基本的には、自分のアルバムを作るのと気持ちの面では何も変わらない。だけど、やっぱり芯にあるメロディと声がこれだけキャッチーだと、逆になんでもできちゃう面白さを感じるよね。例えば、僕はアヴリル・ラヴィーンみたいな王道ポップロックも大好きで。曲やアレンジがよくできていて「おぉ！」って思わされることが多いし、聴いていてワクワクする。だから……実はこれ、人前で話すのは初めてなんだけど（笑）、意外と海外のアイドルものも好きなんですよ。

星花　あははは（笑）。

片寄　バイリファンキをやってるブラジルのアイドルとか（笑）、そういうのも好きなんだけど、やっぱりどれもメロディと声がキャッチーっていうのが世界共通なんだよね。アイドル的な資質って言ったらちょっとずれちゃうかもしれないけど、そんな一般大衆を惹きつける魅力がViolent is Savannaにはあるから、それを新しい形で提示できないかなって僕なりにすごく考えた。そういう意味では、このバンドがやってることは今のシーンの中ではわりと新鮮なことなんじゃないかなって思うし、自分もやっていてすごく新鮮だったな。自分の中の「女性ボーカルでこういうことをやってみたかった」っていう夢が叶った感じですね。

工藤　ありがとうございます！

こんなバンドがメインストリームにいたら音楽の未来も明るい

──さて、いよいよその1stアルバムが世の中に届けられるわけですが。

星花　レコーディングのときは「こんな良い歌詞、もう一生書けない」と思うんですけど、いざ曲が完成してみると「まだまだできるな」って気持ちで。今回のレコーディングを経験したからこそもっとできることがたくさん見つかったし、やりたいこともたくさん見つかったから、今はとても前向きな精神状態です。いろんな人に聴いてほしいな。

片寄　ホント、こういうバンドが何十万枚も売れたら、音楽好きの自分にとってはすごく幸せだなことだよね。中学生とかさ、もっとこういう音楽を聴いてくれたらいいな。そうしたら、鋭い子は小野くんのギターを聴いて、彼のバックボーンにある音楽も聴きたくなるだろうし。それで彼が影響を受けた洋楽を聴いたっていいわけじゃないですか。僕も子供の頃、大瀧詠一さんや佐野元春さんが好きで、彼らが聴いてきた音楽を後追いで勉強したことが今も役立っているんです。だから、こういうバンドを老若男女に聴いてもらいたいし、こんなバンドがメインストリームにいたら音楽の未来も明るいんじゃないかな。

──確かに今のヒットチャートには、Violent is Savannaみたいなバンドは以前と比べると少ないですし。

片寄　そう。CDを月に1枚しか買わないような層にも聴いてほしいし、コアな音楽ファンにはもっと深いところを聴いてほしい。Violent is Savannaがそういう存在になってくれたらうれしいな。まぁ、2ndアルバムのときにはメンバーが3人になってるかもしれないけど（笑）。

（全員、工藤を見る）

工藤　おいっ!! なんで全員こっち向いた!?（苦笑）

一同　（爆笑）。