ナタリーPowerPush - Violent is Savanna
ViS×片寄明人がたっぷり語る ロック&ポップでひねくれたアルバムの魅力
川合は天才肌の“歩くメロディ工場”
──では、ソングライターとしての川合さんは片寄さんの目にどう映りますか?
片寄 よく「ストックが100曲あるんですよ」と言う人がいますよね。僕も初めてのバンドを一緒に結成したHICKSVILLEの木暮(晋也)くんに初めて会ったときに「俺、ストックが100曲あるよ」って嘘ついて、実は2曲しかなかったことがあって(笑)。
一同 (笑)。
星花 なんでそんな嘘つくんですか!(笑)
片寄 でも、栄次は本当に100曲ぐらいストックあったよね。俺が知ってるだけでも70数曲あったし、たぶんそれ以上あると思う。しかも、驚くべきことにどの曲もキャッチーなんだよ。4人の中でリスナーとして一番音楽に夢中なのは小野くんだと思うけど、栄次はそんなでもないし。いろいろ聴き込んで研究するってタイプじゃないってのがまた面白いし、天然というか天才肌なんだろうね。歩くメロディ工場みたいな奴で、レコーディング期間は家に帰ってもずっと彼のメロディが頭から離れなくなっちゃうから、終わってから次の仕事に頭を切り替えるのが大変でしたよ。
工藤 なんてことしてくれるんだよ!(笑)
片寄 刷り込み力が強いメロディを書くよね。
川合 そこを目指してきたつもりなので、片寄さんにそう言ってもらえると本当にうれしいです。
片寄 かといって職業作家さんとも違うし、狙って作ったようないやらしい感じがしないのが一番いいところ。僕にはこんな曲ちょっと書けないし、そこは何よりも好きなところかな。まだまだいい曲がいっぱいあるよね?
川合 はい、100曲あります!
一同 あははは(笑)。
──川合さんは片寄さんと出会ってから、曲作りにおいて何か変化はありましたか?
川合 僕の曲って、例えば笑顔だったら笑顔をイメージさせるサビのメロディとか、そういうストレートなものばかりだったんですけど、アルバム制作中に片寄さんから「笑ってるけど心で泣いてる、泣きながら踊るみたいなメロディが聴いてみたいな」と言われたことがあって。それからは、一辺倒じゃなくてもうひとつプラスして何か引っかかりのあるメロディっていうのを考えるようになりました。
片寄 僕は、スポーンと抜けた曲でもちょっと切なさがあるのが彼のメロディの素晴らしいところだと思うんです。アルバム全体に言えるけど、ただポップで明るく元気なだけじゃないという。だから、楽しいときも悲しいときも聴けるアルバムになってると思いますよ。
工藤はユースケ・サンタマリア以来のうるさい人
──では、工藤さんはどういう人でしょう?
片寄 とにかくね、最初はうるせー奴だなって。
一同 (爆笑)。
片寄 自分の人生の中でこんなにうるさい人っていうのは、ユースケ・サンタマリア以来だね(笑)。僕がいたロッテンハッツとユースケのBINGO BONGOって同じ時期にデビューして、当時はうるさい奴だなと思ったんですけど。もしかしたら工藤くんもユースケみたいにブレイクするかもしれませんね。
工藤 よしっ、やったぞ!
片寄 というものの、実は一番真面目。ドラムに関してはすごく真摯で研究熱心だし。最初の頃は頭で解釈して叩いてたのが、どんどんひと皮ふた皮剥けていって、情熱的かつ引き出しの多いタイプのドラマーになったと思うし、いろんな可能性を感じます。それと、まだレコーディングはしてないけど彼も作曲を始めて。意外とメロディメーカーなんですよ。
工藤 レコーディングスタジオでは、僕が演奏するときは片寄さんの姿が見えるんですけど、ちゃんとノッてくれてるんです。ちゃんと届いてるんだな、すごくうれしいなって。
片寄 見てたんだね。
工藤 めっちゃ見てますよ! 超気になってたんですから。
片寄 できたら踊りたいぐらいなんですけど、僕も意外とシャイなので体を揺らすに留まってます。
工藤 そういうこともあって、レコーディングはすごく楽しかったですね。いろんな言葉をもらえたし、その言葉で僕のドラムも変わったし、1回1回のセッションがとても勉強になりました。
片寄 レコーディングはそれぞれが自分の限界と戦っていく厳しい場所でもあるんだけど、僕は最終的には楽しくありたいんだよね。だから、悩むことがあっても前向きに悩んでいたいっていうか。音楽って本当に先が長い世界なんです。僕もいまだに日々勉強だし、たぶん永遠に続くことだと思うから、少なくとも自分がプロデュースするバンドにかかわっている現場は楽しくいたい。空気が重たいのってすごく嫌だし。
星花 片寄さんがすごいなと思うのは、空気が重くなりそうになったら一瞬で雰囲気を変えられる力を持っていて。自分もそういう大人になりたいって、すごく思う。
──そういう現場での楽しい雰囲気って、このアルバムにも封じ込められてますよね。自然に沸き上がる感情の部分が強く出てると思いますし、このバンドの魅力はそういったところにあると改めて感じました。
片寄 ミュージシャンにとって、レコーディングができるっていうのは何より幸せなことですよ。しかも、レコード会社から予算を出してもらってやれるチャンスなんてなかなかないこと。ワクワクしながらレコーディングに挑めば、それが音に転写されると僕は信じてるし。そこはすごく大事にしたいですね。
小野はこの世代のギタリストの中ではトップレベル
──じゃあ最後に、小野さんについて。
片寄 このバンドの音楽的参謀で、欠かすことのできない存在。彼がいたからこのアルバムのサウンドはできたと言っても過言ではないと思います。正直、この世代のギタリストの中では確実にトップレベルなのに、ちょっと性格がおどおどしてるところも面白い(笑)。
小野 (苦笑)。
片寄 今回のアルバムでは、彼の多彩な持ち味をどうやってアルバムの中に散りばめて、かつ1本芯を通すかってことをずっと考えてたんです。僕が「こういうのどうかな」って提案すると、提案したこと以上の結果を常に返してくる人だから、やっててすごく楽しかったし、こちらも逆に刺激を受けましたね。
工藤 (小声で)僕のときと全然違う……。
片寄 え、だってそういうMキャラでしょ?(笑)
工藤 そうです! うれしいですから! めっちゃうれしいですもん!
片寄 褒めて伸びるタイプと落として伸びるタイプがいるからね(笑)。とにかく、小野くんは多彩な音色を出せるギタリストだし、僕が趣味でやってるような音楽にもちょっとギターで参加してと言いたくなっちゃうぐらい、古き良き時代の音楽の良質な部分を知ってる人。今後もっといろんな音楽を聴いていくことで、どんどんギタリストとしての幅が広がっていくタイプだと思います。
CD収録曲
- OH LOVE YOU
- Like me.
- アワイロサクラチル
- 1408
- Showtime
- PARALLEL
- ランデヴー
- A.D.G.
- リフレインチューマー
- TOKYO
- とんだLove Song
DVD収録内容
- 「OH LOVE YOU」ビデオクリップ
- 「アワイロサクラチル」ビデオクリップ
- 「OH LOVE YOU」メイキング映像
- 「アワイロサクラチル」メイキング映像
1st Full Album「SWING」レコ発ツアー 「come out "SWING" ing tour」
- 2011年4月19日(火)
北海道 札幌cubegarden - 2011年4月27日(水)
福岡県 福岡DRUM Be-1 - 2011年4月28日(木)
熊本県 熊本DRUM Be-9 V2 - 2011年5月4日(水・祝)
京都府 MOJO - 2011年5月5日(木・祝)
大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE - 2011年5月12日(木)
岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room - 2011年5月13日(金)
広島県 広島Cave-Be - 2011年5月15日(日)
愛知県 名古屋E.L.L - 2011年5月17日(火)
宮城県 会場未定 - 2011年5月18日(水)
福島県 郡山CLUB #9 - 2011年5月24日(火)
東京都 原宿アストロホール
Violent is Savanna(ばいおれんといずさばんな)
星花(Vo)、小野貴博(G)、川合栄次(B)、工藤竜之介(Dr)からなる札幌出身の4ピースバンド。2004年に星花と川合を中心に結成され、同年「TEENS' MUSIC FESTIVAL 2004」北海道大会にて優勝し、渋谷公会堂(現・渋谷C.C.Lemonホール)で行われた全国大会に出場を果たす。2005年に工藤が加入し現メンバーとなり、以後地元・札幌を中心に精力的なライブ活動を続ける。2010年5月に北海道TSUTAYA限定1曲入りシングル「OH LOVE YOU」をリリース。オリコンインディーズチャートで全国2位を獲得したほか、北海道地区別オリコンウィークリーチャートでは4位を記録。同年10月に、同曲を含むシングル「OH LOVE YOU」でメジャーデビューを果たした。星花のキュートな歌声と独特の詞世界、絶妙なバンドアンサンブルが魅力。2011年1月には、iTunesが今年もっともブレイクが期待できる新人アーティスト10組を選出する「Japan Sound of 2011」に選ばれるなど、2011年飛躍が期待されるロックバンドである。